結論から先に言うと
路線測量は、道路や水路のように、幅に比べて延長の長い構造物を建設するための測量のこと。準則では8つの工程に分かれていて、線形決定から用地幅杭の設置まで、地図の上の線を現地の杭と高さの数字に落としていく順に並んでいます。測量士補試験では応用測量のNo.25で作業名と定義・数字の組合せが、No.26で単曲線の計算が続けて出ています。この記事は、その全体の流れを一本の線でつなぐ案内役です。
路線測量の章は、測量士補のテキストの中でも「用語が多くて、どれがどれだか分からなくなる」と言われやすい。線形決定、IP、中心線測量、仮BM、縦断、横断、詳細測量、用地幅杭と、似た名前の作業が順番に並ぶからだ。ただ、道路をつくる手順を頭に浮かべながら読めば、順番そのものが覚え方になる。
この記事では、まず路線測量が何のための測量かを確かめ、準則に並んだ8つの工程を順番にたどる。そのあと、数字の入れ替えで間違えやすいところを表にまとめ、編集部で作った計算例と、令和7・8年の過去問の出方を見ていく。最後に、仕入れの現場で道路の計画に出会ったときの一般的な見方を添えた。
本記事の情報について
条番号・工程名・数字は、国土地理院が掲載している「作業規程の準則」の全文PDFを開いて確かめたものだけを書いています。過去問は、国土地理院が公表している令和7年・令和8年の問題と正解のPDFを開いて照合しました。計算例は編集部が作ったもので、実在の路線や案件ではありません。数値はPythonで検算しています。
1. 路線測量は何のための測量か
準則の第636条は、路線測量を「線状築造物建設のための調査、計画、実施設計等に用いられる測量」と定めている。線状築造物とは、道路、水路など、幅に比べて延長の長い構造物のことだ(同条第2項)。
試験の問題文には、決まって「公共測量における路線測量について」と書かれる。準則は公共測量の作業の基準なので、民間の工事でどう測るかまで決めているわけではない。公共測量と準則の関係は、公共測量とは何かを整理した記事にまとめてある。
路線測量の特徴は、地図の上で決めた線を、現地の杭と高さの数字に落としていくところにある。地形図の上で路線の骨格を決め、その線を現地に杭で出し、高さの基準をつくって縦と横の断面を測る。最後は工事のために必要な用地の範囲に杭を打つ。この一連の流れが、そのまま工程の順番になっている。
2. 作業の流れ:準則の8つの工程
準則の第637条は、路線測量を次の8つに細分している。
- 作業計画
- 線形決定
- 中心線測量
- 仮BM設置測量
- 縦断測量
- 横断測量
- 詳細測量
- 用地幅杭設置測量
作業計画は、路線測量に必要な状況を把握して、細分ごとに作成するもの(第638条)。実際に測る作業は2番目からだ。以下、順に見ていく。
線形決定とIPの設置(第639〜641条)
「線形決定」とは、路線選定の結果に基づき、地形図上で交点(IP)の位置を座標として定め、線形図データファイルを作成する作業のこと(第639条)。道路の線形を、折れ線の頂点の座標で表すイメージだ。
地形図は地図情報レベル1000以下のものを使い、設計条件や現地の状況を考える(第640条第1項)。設計条件となる点を「条件点」と呼び、その座標値は、近くの4級基準点以上の基準点から放射法などで求める(同条第2項)。基準点の級については、基準点測量の記事で1〜4級の違いを整理している。
線形決定の時点では、IPは地図の上の座標にすぎない。現地に直接IPを設置する必要があるときだけ、第641条の規定でIPを現地に出す。座標を持つIPは4級基準点以上の基準点から放射法などで設置し、標杭を打つ。
中心線測量(第642〜644条)
「中心線測量」とは、主要点及び中心点を現地に設置し、線形地形図データファイルを作成する作業だ(第642条)。線形決定で決めた線を、現地に杭として出す。
主要点には役杭、中心点には中心杭を設置する(第644条)。中心点を設置する間隔は、種別ごとに標準が決まっている(第643条第3項)。
| 種別 | 段階 | 間隔の標準 |
|---|---|---|
| 道路 | 計画調査 | 100mまたは50m |
| 道路 | 実施設計 | 20m |
| 河川 | 計画調査 | 100mまたは50m |
| 河川 | 実施設計 | 20mまたは50m |
| 海岸 | 実施設計 | 20mまたは50m |
道路の実施設計で20mという数字は、このあとの縦断・横断の測点の間隔にも関わってくる。
仮BM設置測量(第645〜647条)
「仮BM設置測量」とは、縦断測量及び横断測量に必要な水準点(仮BM)を現地に設置し、標高を定める作業(第645条)。高さを測る前に、基準になる杭を先に作っておく工程だ。
方法は、平地では3級水準測量、山地では4級水準測量(第646条第1項)。仮BMを設置する間隔は、0.5kmを標準とする(同条第2項)。ここは次の縦断測量の等級と並べて覚えたい。
縦断測量(第648・649条)
「縦断測量」とは、中心杭等の標高を定め、縦断面図データファイルを作成する作業(第648条)。仮BMを基準に、レベル等による水準測量で、中心杭の高さ、中心線上の地形変化点の地盤高、主要な構造物の標高を測る。等級は平地では4級水準測量、山地では簡易水準測量(第649条第1項)。
観測は、仮BMから出発して、別の仮BMに結合させる(同条第4項)。往路で中心杭高・変化点の地盤高・構造物の標高を測り、復路では中心杭高を測る(同条第5項)。縦断面図を図紙に出力するときは、横の縮尺は線形地形図と同じにして、縦の縮尺は線形地形図の縮尺の5倍から10倍までを標準とする(同条第10項)。
縦断図の読み方や測点の表し方は、縦断測量・横断測量の記事に詳しく書いた。ここでは全体の位置づけだけ押さえておく。
横断測量(第650・651条)
「横断測量」とは、中心杭等を基準にして地形の変化点等の距離及び地盤高を定め、横断面図データファイルを作成する作業(第650条)。中心点における中心線の接線に対して直角方向の線上で、地形の変化点と地物について、中心点からの距離と地盤高を測る(第651条第1項)。横断方向には原則として見通杭を設置する。
縦断が「進行方向の起伏」なら、横断は「幅方向の断面」。横断面図の縮尺は、縦断面図の縦の縮尺と同じものを標準とする(同条第10項)。
詳細測量(第652・653条)
「詳細測量」とは、主要な構造物の設計に必要な詳細平面図データファイル、縦断面図データファイル及び横断面図データファイルを作成する作業(第652条)。橋やボックスカルバートのような、細かい設計が必要な場所を、詳しく測り直すイメージだ。
詳細平面図データの地図情報レベルは250を標準とする(第653条第4項)。図紙に出すときは、縦断面図の横の縮尺を詳細平面図の縮尺と同じにして、縦の縮尺は100分の1を標準とする(同条第5項)。線形地形図(地図情報レベル1000以下)から、ぐっと細かい図になる。
用地幅杭設置測量(第654〜656条)
「用地幅杭設置測量」とは、取得等に係る用地の範囲を示すため所定の位置に用地幅杭を設置する作業(第654条)。中心点等から中心線に対して直角方向の用地幅杭点の座標値を計算して、4級基準点以上の基準点や中心点などから放射法等で設置する(第655条第1項)。設置した標杭には、測点番号や中心杭等からの距離などを表示する。
路線測量の最後の工程で、工事の範囲を現地で示すことになる。ここで出てくる「用地」の取得そのものの測量(境界の確認、面積の計算など)は別の章の用地測量で、用地測量の記事に分けて書いた。章が違うので、名前が似ていても混ぜないこと。
3. 工程と数字を一枚で:入れ替えやすいところ
試験で狙われやすい点を、工程ごとに表にまとめておく。
| 工程 | 何をする | 主な成果 | 覚える数字・ことば |
|---|---|---|---|
| 線形決定 | 地形図上でIPの座標を定める | 線形図データファイル | 地図情報レベル1000以下、4級基準点以上 |
| 中心線測量 | 主要点・中心点を現地に設置 | 線形地形図データファイル | 道路の実施設計は20m、主要点は役杭・中心点は中心杭 |
| 仮BM設置測量 | 縦横断に必要な水準点を作る | 仮BMの標高 | 平地3級・山地4級、0.5km標準 |
| 縦断測量 | 中心杭等の標高を測る | 縦断面図データファイル | 平地4級・山地は簡易水準、縦の縮尺は5〜10倍 |
| 横断測量 | 直角方向の変化点の距離・地盤高 | 横断面図データファイル | 縮尺は縦断面図の縦と同じ |
| 詳細測量 | 構造物設計用に詳しく測る | 詳細平面図ほか | 地図情報レベル250、縦の縮尺1/100 |
| 用地幅杭設置測量 | 取得等に係る用地の範囲に杭 | 用地幅杭(杭打図) | 4級基準点以上から放射法等 |
特に仮BM設置測量(平地3級・山地4級)と縦断測量(平地4級・山地は簡易水準測量)は、等級が1つずつずれている。数字がよく似ているので、入れ替えの出題に向いている。一つずつ暗記するより、「基準を作る仮BMのほうが、一段精度の高い水準測量」と理由づけて覚えるほうが取り違えにくい。
4. 計算例:追加距離・勾配・縮尺・単曲線(編集部オリジナル)
実在の路線ではなく、編集部で作った数字だ。
例題1:中心杭の追加距離
道路の実施設計で、中心杭を20mおきに打つ。起点をNo.0とすると、No.12は起点から12×20=240mの位置。この区間にBC(円曲線の始点)があって、No.12の先7.50mにあるなら、測点は「No.12+7.50」と書き、起点からの距離(追加距離)は247.50mになる。
例題2:縦断勾配
中心杭No.3の標高が25.40m、No.4の標高が25.72mとする。20m進む間に0.32m上がっているので、勾配は0.32÷20=0.016、つまり1.6%(約1/62.5)。道路の縦断勾配は、このように隣り合う中心杭の標高差を杭の間隔で割れば出る。
例題3:縦断面図の縮尺
線形地形図が1/1,000なら、縦断面図の横の縮尺も1/1,000。縦の縮尺は5〜10倍にするので、1/200〜1/100になる。20mの杭間隔は図上で2cm。1.5mの高低差は、縦が1/200なら7.5mm、1/100なら15mmで描かれる。縦だけ拡大した図なので、実際の傾きより急に見える。縦と横の縮尺が違う理由は、これで説明できる。
例題4:単曲線の曲線長(過去問の型)
路線測量の計算問題は、単曲線の曲線長を求める型が出ている。曲線半径R、交角Iから、曲線長はCL=R×I(ラジアン)で求める。令和7年No.26は、半径350m、補助点C・Dでの角度が95°・145°の図で、交角Iは(180°−95°)+(180°−145°)=85°+35°=120°。CL=350×120×3.14÷180≒733mで、正解は3だ。
令和8年No.26は、現道路(R=350m、交角90°)の起点BCと交点IPの位置を変えずに、交角60°の新道路をつくる問題。接線長は同じ350mなので、新道路の半径は350÷tan30°≒606.2m。曲線長は606.2×60×3.14÷180≒634m、正解は4になる。公式の導き方やBC・ECの追加距離、偏角法までは、単曲線の計算を例題で解説した記事にまとめてある。
5. 測量士補試験での出方
国土地理院の過去の試験問題のうち、編集部が問題と正解のPDFを開いて照合したのは、令和8年と令和7年の2年分だ。2年とも、応用測量の最初の2問(No.25とNo.26)が路線測量だった。
令和8年No.25(正解は3):公共測量における路線測量について、下線部が明らかに間違っているものを選ぶ形式。線形決定、中心線測量、仮BM設置測量、横断測量、用地幅杭設置測量の5つの定義と補足が並び、間違いは仮BM設置測量を「平地においては4級水準測量、山地においては簡易水準測量」とした選択肢3。準則(第646条)は平地3級・山地4級だ。縦断測量の等級を仮BMの文に入れ替えた形になる。
令和7年No.25(正解は5):こちらも5つの作業名と定義の組合せで、間違いは「詳細測量」を、用地幅杭の設置(取得等に係る用地の範囲を示すため所定の位置に杭を設置する作業)と説明した選択肢5。詳細測量の定義は第652条にあるとおりで、用地幅杭の設置は用地幅杭設置測量(第654条)だ。
No.26:令和7年(正解3)・令和8年(正解4)ともに、単曲線の曲線長を求める計算問題だった。前節の例題4のとおり、交角と半径が分かれば式は一つで足りる。
2年とも、No.25は作業名と定義・数字の組合せを入れ替える知識問題、No.26は曲線の計算問題という構成だった。解説は令和8年 第7弾(No.25〜28)と令和7年 第7弾(No.25〜28)にある。令和6年以前の路線測量の出題内容は、この記事では確かめていないので、傾向を断定しない。
押さえておく点を絞ると、次の5つになる。
- 8つの工程の順番と、それぞれの定義(何を測り、どんなデータファイルができるか)
- 仮BM設置測量は平地3級・山地4級。縦断測量は平地4級・山地は簡易水準測量
- 縦断面図の縦の縮尺は線形地形図の5〜10倍、横断面図は縦断面図の縦と同じ
- 中心杭の間隔(道路の実施設計は20m)と、主要点は役杭・中心点は中心杭
- 単曲線の接線長・曲線長の公式
6. まとめ
- 路線測量は、道路・水路など線状築造物の建設のための測量(第636条)。8つの工程に細分される(第637条)
- 順番は、線形決定→中心線測量→仮BM設置測量→縦断測量→横断測量→詳細測量→用地幅杭設置測量。作業計画が先頭に付く
- 仮BM設置測量は平地3級・山地4級で、縦断測量は平地4級・山地は簡易水準測量。等級のずれが入れ替えの定番
- 縦断面図の縦の縮尺は線形地形図の5〜10倍、横断面図の縮尺は縦断面図の縦と同じ
- 令和7・8年のNo.25は作業名と定義の入れ替え、No.26は単曲線の曲線長の計算だった
路線測量の章は、順番さえ頭に入れば、細部は工程ごとにつながっていく。縦断・横断、単曲線、用地測量、河川測量は、この記事から各記事に枝分かれしている。
河川の測量は、同じ「縦断」「横断」という名前でも基準になる点が違う。道路との違いは河川測量の記事で比べられる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 路線測量では、何が最初の作業ですか?
準則の細分では、作業計画が最初に挙がっています(第637条)。測量の中身としては、地形図上でIPの座標を定める線形決定が最初です。
Q2. 仮BM設置測量と縦断測量は、どちらも水準測量ですか?
どちらも水準測量で高さを測りますが、等級が違います。仮BM設置測量は平地3級・山地4級、縦断測量は平地4級・山地は簡易水準測量です(第646条、第649条)。
Q3. 中心杭は何メートルおきに打ちますか?
準則の標準は、道路の実施設計で20m、計画調査で100mまたは50mです(第643条第3項)。河川や海岸は、実施設計で20mまたは50mです。
Q4. 詳細測量と用地幅杭設置測量は、何が違いますか?
詳細測量は、主要な構造物の設計に必要な詳細平面図などを作る作業です(第652条)。用地幅杭設置測量は、取得等に係る用地の範囲を示すために杭を設置する作業です(第654条)。令和7年のNo.25は、この2つの定義が入れ替えられていました。
Q5. 路線測量の知識は、不動産の仕入れで役に立ちますか?
数式を使う場面は少ないですが、道路の計画や用地の取得に関する図面や説明を聞くときに、言葉の意味が分かります。計画の有無や範囲そのものは、道路を管理する役所が決めることなので、測量の知識から言い切ることはできません。
出典・参考
いずれも2026年10月31日に開いて確認した。
- 国土交通省告示第413号「作業規程の準則」(平成20年3月31日、令和7年3月31日国土交通省告示第240号の改正までを含む全文PDF、国土地理院掲載): https://www.gsi.go.jp/common/000258734.pdf
- 確認した条文は、第5編 応用測量 第2章 路線測量の第636〜659条(要旨、細分、作業計画、線形決定、IPの設置、中心線測量、仮BM設置測量、縦断測量、横断測量、詳細測量、用地幅杭設置測量、成果等)。本文の数値と定義は、この全文PDFから拾った。
- 国土地理院「過去の測量士補試験問題等」(掲載ページ): https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html
- 国土地理院「令和8年測量士補試験問題」(No.25・No.26): https://www.gsi.go.jp/common/000278974.pdf
- 国土地理院「令和8年測量士補試験解答」(No.25の正解は3、No.26の正解は4): https://www.gsi.go.jp/common/000278975.pdf
- 国土地理院「令和7年測量士補試験問題」その2(No.25・No.26): https://www.gsi.go.jp/common/000270178.pdf
- 国土地理院「令和7年測量士補試験の正解」(No.25の正解は5、No.26の正解は3): https://www.gsi.go.jp/common/000270180.pdf
- 確かめられなかったもの: 令和6年以前の路線測量の出題内容、道路事業の計画や用地幅杭の運用(各道路管理者の判断)、準則の精度管理や点検測量の許容範囲の細部。これらは本文で断定していない。
※本記事は一般的な解説記事です。個別の土地の道路計画や取得の予定は、道路を管理する市町村・都道府県の窓口にご確認ください。計算例は編集部が作成したもので、実在の路線・案件ではありません。




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