結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日に実施された測量士補試験のNo.21〜24を解説します。この4問はまとめて「地図編集」分野からの出題で、電子地形図の読図、地図投影法、地図編集の原則、GISのベクタデータ活用が題材です。計算は一切出てこない代わりに、地図記号や座標系の定義を正確に覚えているかがそのまま得点に直結する分野です。読図で時間を使いすぎる、投影法の用語を混同する、といったつまずきが多い方は、体系的に演習量を確保できる講座選びを比較ページで検討してみるのも一つの手です。
この記事について
測量士補試験は例年5月に実施されていて、国土地理院が試験翌日を目安に公式サイトで問題と正解を公表します。令和8年試験は2026年5月17日に実施され、正解は5月18日に公表されました。本記事は国土地理院公開の「測量士補試験問題」「測量士補試験解答」PDF(出典は末尾に明記)をもとに、編集部が論点を要約し、解き方のポイントを整理したものです。
No.21で使われている電子地形図25000(藤沢市付近)については、著作権への配慮から図そのものは記事内に転載していません。代わりに、どこに注目してどう読み解けば正解にたどり着けるかという手順を、文章と表で説明しています。正確な図・問題文は公式PDFで必ずご確認ください。なお監修者・境さんは、不動産仕入れ営業の実務者としての視点に加え、自身も測量士補試験に挑む受験者という立場からコメントを添えています。
No.21 電子地形図25000(藤沢市付近)の読図
論点の要約:国土地理院の電子地形図25000の一部(縮尺を変更したもの、神奈川県藤沢市周辺)を見て、そこに表現されている内容について述べた1〜5の記述のうち「明らかに間違っているもの」を1つ選ぶ問題です。交番の位置、三角点と水準点の標高の大小、施設間の水平距離、税務署と裁判所の位置関係、河川の流れる向きが問われました。
解答へのアプローチ:この手の読図問題は、選択肢ごとに「地図上のどこを見ればよいか」を切り分けて、1つずつ地道に確認していくしかありません。試験問題には凡例(記号の一覧)は付いていないので、主要な地図記号は事前に覚えておく必要があります。今回の5つの記述と、それぞれの確認ポイントを整理すると次のようになります。
| 選択肢 | 論点 | 確認するポイント | 判定 |
|---|---|---|---|
| 1 | 藤沢駅の北側に交番がある | 交番の記号(警棒を交差させた×字形)を駅の北側で探す | 正しい |
| 2 | 三角点の標高は、水準点の標高より高い | 三角点(三角形の中に点)と水準点(四角の中に点)に添えられた標高数値を比較する | 正しい |
| 3 | 保健所から老人ホームまでの水平距離は450mより短い | 図の下にある0〜500〜1,000mの縮尺バーを定規代わりに使って直線距離を測る | 正しい |
| 4 | 税務署は裁判所の北側に位置している | 税務署(そろばんの珠をかたどった記号)と裁判所(高札をかたどった記号)の南北関係を確認する | 誤り |
| 5 | 新林公園の西側を流れる川は、おおむね北から南の方向に流れている | 地図の上が北という前提で、流水方向の矢印や合流関係から流れの向きを読む | 正しい |
図をよく見ると、藤沢駅の北側(駅舎・線路より上)に交番の記号がはっきり確認できます。三角点は図の南側の丘陵(新林公園の西側付近)に66.9m、水準点は図の上端(北側)の市街地に8.8mと表示されていて、三角点のほうが標高は高いという記述は正しい内容です。保健所と老人ホームの位置を縮尺バーで測ると、直線距離はおよそ340m前後で、450mという基準よりは短くなります。
問題は税務署と裁判所の位置関係です。地図上で税務署の記号と裁判所の記号を見つけると、裁判所の記号のほうが北側にあり、税務署はそこから見て南側に位置しています。つまり「税務署は裁判所の北側」という記述は南北が逆で、これが明らかな誤りです。新林公園西側の川については、図の右側を流れる柏尾川に東から西向きの流水方向の矢印が描かれており、柏尾川が合流した先の川は片瀬方面(図の下=南)へ向かっています。記述どおり、おおむね北から南へ流れていると読み取れます。
関連知識ポイント:読図問題は「地図記号を知っているか」だけでなく「方角と距離をどう測るか」もセットで問われます。地図は特別な注記がない限り上が北という大前提を忘れずに、距離を聞かれたら縮尺バーを定規のように当てて測る、という2つの型を身につけておくと、初めて見る場所の地図でも慌てずに対応できます。
No.22 地図投影法(平面直角座標系・UTM・正距図法)
論点の要約:平面直角座標系、ユニバーサル横メルカトル図法(UTM図法)、正距図法について述べたa〜eの5つの記述のうち、「明らかに間違っているものだけの組合せ」を選ぶ問題です。
解答へのアプローチ:誤りは、平面直角座標系のX軸・Y軸の向きを取り違えたaの記述と、正距図法の性質を過大に言い切ってしまったeの記述の組合せでした。
aの記述は「X軸は座標系原点において子午線に直交する軸とし、真東に向かう方向を正としている」というものですが、これは実際の定義と逆です。平面直角座標系のX軸は子午線に沿う方向(南北方向)で真北を正、Y軸が子午線に直交する方向(東西方向)で真東を正としています。X軸とY軸の役割をそっくり入れ替えてしまっている点が誤りです。
eの記述「正距図法は、全ての地点間の距離を同一の縮尺で表示することができる」も誤りです。正距図法が同一の縮尺で正しく表現できるのは、特定の点からの距離(正距方位図法なら図の中心からの距離)や特定の方向の線(正距円筒図法なら経線方向)に沿った距離に限られ、任意の2地点間の距離まで正しく表せるわけではありません。球面である地球を平面の地図に落とし込む以上、どんな図法を使っても「地図上のあらゆる2点間の距離」を同時に正しく保つことは原理的にできない、という前提を思い出せれば消去できる選択肢です。
残る3つの記述、つまり平面直角座標系の座標系原点が赤道上にはないこと、UTM図法が北緯84度以南・南緯80度以北に適用され経度差6度ごとの範囲を一つの平面に投影していること、UTM図法で使われる投影法が横円筒図法の一種であるガウス・クリューゲル図法であることは、いずれも正しい記述でした。
関連知識ポイント:地図投影法の問題は、それぞれの図法が「何を正しく表現するために作られたか」(角度なのか、距離なのか、面積なのか)を軸に整理すると混乱しにくくなります。平面直角座標系はあくまで日本国内の測量・地図作成用のローカルな座標系、UTM図法は世界共通のグローバルな座標系、というスケール感の違いも押さえておくと選択肢の見分けが早くなります。座標北と真北・磁北の関係は真北・磁北・座標北の違いの解説にまとめています。
No.23 地図編集の原則(注記・基図縮尺・取捨選択・転位)
論点の要約:地図編集の原則について述べた1〜5の記述のうち、「明らかに間違っているもの」を1つ選ぶ問題です。注記の定義、編集の基となる地図(基図)の縮尺、対象物の取捨選択、形状の修飾、有形物と無形物が近接した場合の転位の考え方が並びます。
解答へのアプローチ:誤りは5番目の記述、「有形物(河川、道路など)と無形物(注記、行政界など)とが近接し、どちらかを転位する場合は有形物を転位する」でした。これは転位の原則を逆に説明してしまっています。
地図編集における転位の原則は、実際に目に見える形を持つ有形物(河川・道路・建物など)はできるだけ実際の位置を保ち、位置がずれると混乱を招く無形物(注記の文字・行政界の線など)のほうを動かして表現する、という考え方です。近接して表現しづらいときに動かすのは無形物のほうであって、有形物ではありません。この記述はそこが逆になっているため誤りと判断できます。
他の4つの記述は、いずれも地図編集の一般的な原則として正しい内容です。注記が文字・数値による表示で、地域や人工物・自然物の固有名称、記号のないものの名称、標高、等高線数値などに用いられること。基図の縮尺は新たに作成する地図の縮尺と同じかそれより大きいものを使うこと(詳しい大縮尺の地図から小縮尺の地図を編集するのが原則で、小縮尺の地図を拡大して使うと必要な精度や情報量が確保できないため)。対象物の取捨選択は地図の目的を踏まえて行い、重要度の高い対象物を安易に省略しないこと。現地の形状との相似性を保ちながら、必要に応じて形状を多少修飾できること。これらはいずれも地図編集の一般的な原則どおりの記述です。
関連知識ポイント:地図編集の原則は、条文の文言を丸暗記するより「なぜそのルールがあるのか」で理解したほうが応用が利きます。転位の原則も、実際の位置が動かせない有形物を優先し、表現上の都合で調整できる無形物を動かす、という現場感覚で考えると迷いにくくなります。
No.24 ベクタデータのGIS活用(穴埋め)
論点の要約:ベクタデータのGISによる活用について述べた文章の空欄ア〜ウに入る語句の組合せを選ぶ問題です。文章では、ベクタデータの基本的な性質、防災分野でのネットワーク解析(避難場所までの最短ルート表示)、浸水想定エリアの面積集計という3つの場面が扱われています。
解答へのアプローチ:正解は「ア=座標値、イ=道路中心線、ウ=範囲の面データ」の組合せでした。
アについて、ベクタデータは「座標値を持った点又は点列によって地形や地物を表現できる図形データ」と定義されます。座標値ではなく画素値で表現するのはラスタデータのほうで、ここを取り違えると土台から崩れます。イについては、自宅から最寄りの指定緊急避難場所までの最短ルートを求めるネットワーク解析の話です。最短経路の計算には、道路をつながった線(ネットワーク)として扱う必要があるため、道路の縁(道路縁)ではなく道路中心線をネットワークデータとして使うのが実務上の標準的なやり方です。ウについては、浸水が想定される範囲と各市区町村の区域という、2つの面(ポリゴン)データを重ね合わせて面積を集計する場面なので、浸水想定範囲も同じく「面データ」として持っている必要があります。ここが建物単位の点データだと、そもそも面積の重ね合わせ計算が成立しません。
関連知識ポイント:GIS関連の穴埋め問題は、ラスタとベクタの違い、点・線・面というデータ形式の違いを、それぞれ「何の計算に向いているか」とセットで覚えておくと得点が安定します。最短経路探索ならネットワーク型の線データ、面積の重ね合わせ集計なら面データ、という結びつきは、防災・都市計画分野の出題で繰り返し使われるパターンです。GISそのものの仕組み(レイヤの重ね合わせ、基盤地図情報、地図情報レベルなど)を一通り整理したい方は、GIS(地理情報システム)と地理空間情報とは?も参考になります。
他の年度も通しで解くなら
このシリーズの前後の回:前の回は令和8年 測量士補【第5弾】No.16〜20 写真測量・三次元点群測量、次の回は令和8年 測量士補【第7弾】No.25〜28 応用測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。
この記事で扱っているのは令和8年の一部の問題です。複数年度を通しで解くなら、年度別の問題がまとまった市販の過去問集が効率的です。
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地図編集は、地図記号や投影法、編集の原則など覚える量が多い分野です。図を見ながら整理してくれる講義があると、読図問題の判断が速くなります。編集部が比べた中では、過去7年分の過去問集と計算問題対策がそろっているアガルートが最初の候補になります。
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まとめ:次に何をすべきか
今回のNo.21〜24はすべて「地図編集」分野からの出題で、計算は出てきませんが、地図記号・座標系の定義・編集の原則・GISのデータ形式という、覚えていないと手も足も出ないタイプの知識が並びます。読図問題は特に、地図記号の暗記量が得点にそのまま跳ね返る分野です。「地図記号を見た瞬間に名前が出てこない」「投影法の用語がごちゃごちゃになる」という状態のまま本番を迎えるのは避けたいところで、独学でここを埋めきれない場合は、体系的にカリキュラムが組まれた講座で知識を整理し直すのも現実的な選択肢です。
監修者・境さんより
仕入れの実務では、現地に行く前に地理院地図で高低差や水路・道路の位置をひととおり見ておくと、当日の動き方がかなり変わります。今回のNo.21のような読図問題を解いていて感じたのは、自分が普段やっている「地図を見て土地の形を頭に入れる」作業と、試験で問われている地図記号の知識は、実はかなり地続きだということです。三角点や水準点の標高を比較する視点も、傾斜地の土地を見るときの感覚に近いものがあります。逆に税務署や裁判所の記号なんかは、正直この問題で初めてちゃんと覚えました。地図記号は数が多くて、一度覚えたつもりでも似た記号と混同しがちです。
過去問演習を進める中で「地図編集の分野だけ苦手」「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」という方は、以下もあわせて参考にしてください。
なお、令和8年の過去問はNo.1〜No.3を第1弾の記事で解説しています。問題を単元別(計算問題/法規/作業規程)に横断して復習できるインデックスページは、当メディアで公開準備を進めています。公開後、本記事末尾からも回遊できるようリンクを追加する予定です。
出典・参考情報(2026年9月26日確認)
- 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
- 国土地理院「令和8年測量士補試験問題」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278974.pdf )
- 国土地理院「令和8年測量士補試験解答」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278975.pdf )
- 国土地理院「地図記号パンフレット」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000189126.pdf )※地図記号の由来の確認に使用
※本記事の問題要約・解説は編集部が上記の公式PDFをもとに作成したものです。問題文・図の正確な内容は国土地理院の公式PDFを必ずご確認ください。No.21の距離の記述は、図中の縮尺バー(0〜500〜1,000m)をもとにした概算です。







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