結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日実施の測量士試験・午前(択一式)のNo.21〜No.24を、国土地理院公表の公式問題・正解をもとに解説します。電子地形図の読図、地図投影法、DTM(数値地形モデル)の活用、地図編集の作業工程と、地図編集・GISという1つの分野でまとまった4問です。午前の範囲は広く、独学だと知識が単発で終わりがちなので、体系的に押さえたい方は通信講座3社を価格とカリキュラムで比べたページも参考にしてください。
この記事について
本記事は測量士試験・年度別過去問解説シリーズの第7弾です。第1弾(No.1〜No.3)の解説からNo.20までを順に扱ってきており、今回はNo.21〜No.24の4問、地図編集とGISの分野をまとめて解説します。国土地理院が公開している「測量士試験問題」「測量士試験解答」PDF(出典は末尾に明記)をもとに、午前の択一問題を編集部が要約・解説したものです。著作権に配慮して問題文と図表の全文転載は避けているので、正確な文言・図は公式PDFでご確認ください。監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者で、日常的に測量図面や境界立会いの現場に接しています(測量士補試験の受験者で、測量士試験は未受験です)。今回もその立場からコメントをもらいました。
No.21 電子地形図25000の読図(水平距離・傾斜角・経緯度・谷尾根)
論点の要約:国土地理院の電子地形図25000の一部(縮尺・内容を一部改変したもの)を示す図21について、a〜eの5つの記述のうち明らかに間違っているものだけの組合せを選ぶ問題です。表21には図の四隅(左上・左下・右上・右下)の緯度経度が与えられており、水平距離、傾斜角、経緯度の読み取り、等高線の形状からの谷・尾根の判定、そして斜距離の計算と、読図に必要な作業がひととおり詰め込まれています。関数の値が必要なときは巻末の関数表を使う指定です。
解答へのアプローチ:正解は選択肢4(b, e)です。1つずつ見ていきます。
まずaの「国道の東側にある病院の記号と高等学校の記号を結ぶ水平距離は、600mより長い」について。図中の0〜500〜1,000mの目盛り(スケールバー)に定規を当てて2点間の長さを測ると、600mを超えていることが確認できます。目分量ではなく、必ずスケールバーに定規を当てて測るのが読図問題の基本で、aは正しい内容です。
次にbの「老人ホームの西にある三角点から標高179mを示す標高点までの傾斜角は、3°より大きい」。この三角点の標高は図中に80.8mと表示されており、標高179mの地点との高低差は179 − 80.8 = 98.2mです。傾斜角θはtanθ = 高低差 ÷ 水平距離で求められるので、巻末の関数表のtan3° = 0.05241を使うと、傾斜角が3°になる水平距離は98.2 ÷ 0.05241 ≒ 1,874mです。つまり水平距離が約1.9kmより長ければ、傾斜角は3°より小さくなります。スケールバー(または表21の経緯度)で2点間の水平距離を測ると2kmを超えており(tanθは0.05を下回ります)、傾斜角は3°未満です。したがってbは誤りです。
cの「図書館の経緯度は、およそ北緯34°6’7″、東経131°23’32″である」は、表21を使った比例配分で検算できます。左端の経度131°23’10″から目的の経度までの差は22秒で、表21の経度の幅110秒(131°25’00” − 131°23’10″)のちょうど20%にあたります。同様に緯度も、上端の34°6’40″から33秒下がった位置は、緯度の幅60秒のちょうど55%です。図書館の記号が図の枠内で左から20%・上から55%の位置にあることを確認すれば、この数値と一致します。四隅の経緯度と図中の位置の比例配分で任意の点の経緯度を求められる、というのがこの設問の狙いで、cは正しい内容です。
dの「図中Aの示す破線部は、等高線の形状から谷である」は、A地点への引き出し線が通る部分の等高線を見ると判定できます。等高線が高い方(山頂側)に向かって「V字」に食い込むように張り出していれば谷、低い方に向かって張り出していれば尾根というのが基本ルールです。この部分は山頂側にV字に入り込む形状なので谷と判定でき、dは正しい内容です。
最後にeの「昭和橋の北東にある三角点と周防下郷駅の北東にある川沿いの三角点とを結ぶ斜距離は、1,000mより短い」。昭和橋の北東の三角点は標高136.2m、川沿いの三角点は標高がひとけたmと低い点です。斜距離は水平距離と高低差から三平方の定理で求めるため、必ず水平距離以上の長さになります。スケールバーで2点間の水平距離を測ると、それだけで1,000mを超えています。高低差(約130m)を加味すれば斜距離はさらに長くなるので、「1,000mより短い」とするeは誤りです。水平距離が1,000mに近い場合でも、高低差の分だけ斜距離が伸びる点を見落とさないようにしましょう。
関連知識ポイント:測量士補試験の読図は、等高線から尾根・谷を判定する、地図記号を読み取るといった単発の技能を問う出題が中心です。測量士試験ではそこに、スケールバーでの距離測定・関数表を使った角度計算・経緯度の比例配分・三平方の定理による斜距離計算が組み合わさり、1問の中で複数の技能を切り替える力が問われます。この読図の技術は、後述するNo.23のDTM(数値地形モデル)やNo.24の地図編集の工程とも地続きで、紙の地図を読む力がそのままGISのデータを扱う基礎体力になっています。
No.22 地図投影法(正積図法・正角図法・メルカトル図法)
論点の要約:地図投影法について述べた1〜5の記述から、明らかに間違っているものを1つ選ぶ知識問題です。正積性と正角性の関係、正積図法・正角図法の定義と用途、メルカトル図法の性質が題材です。
解答へのアプローチ:誤りは選択肢5の「メルカトル図法は正角円筒図法の一種であり、任意の2地点間の最短経路は直線で表される」です。メルカトル図法上で直線として表されるのは、進行方向(方位角)が常に一定な等角航路(ロクソドローム)であって、地球上の実際の最短経路である大圏航路(オーソドローム)ではありません。2地点間の最短経路は、同一子午線上や赤道上といった特殊なケースを除けば、メルカトル図法上では一般に曲線として表れます。「正角図法だから直線=最短距離」と早合点させる、地図投影の基本を突いた出題です。
他の4つの記述はいずれも正しい内容です。平面上の地図で正積性(面積比が正しい)と正角性(角度・形状が正しい)を同時に満たすことは理論上不可能であること、球面上の図形の面積比が地図上でも正しく表示される図法を正積図法と呼ぶこと、正積図法が世界全体のような広範囲の植生分布・人口密度図に適していること、正角図法がごく狭い範囲で地球上と地図上の形状が相似になる図法であることは、いずれも地図投影法の基本的な性質として正しい記述です。
関連知識ポイント:正積図法と正角図法のどちらを選ぶかは、地図の目的次第です。分布図・統計地図には正積図法、航海図や角度を正確に扱いたい地図には正角図法というように使い分けられます。GISで背景地図の投影法を選ぶ場面でも同じ考え方が使われるため、この単元は次のNo.23のDTM活用ともつながる、地図編集・GIS分野の基礎理論といえます。
No.23 数値地形モデル(DTM)の活用
論点の要約:数値地形モデル(DTM)の活用について述べたa〜eの記述から、明らかに間違っているものだけの組合せを選ぶ問題です。段彩図の作成、建築物の高さ抽出、土砂災害危険箇所の推定、格子間隔と表現精度の関係、正射投影画像の作成が題材です。
解答へのアプローチ:正解は選択肢3(b, d)です。
bの「DTMと基盤地図情報の建築物の外周線データを用いて、地表面からの高さが10m以上の建築物を抽出することができる」は誤りです。DTMはあくまで建築物や樹木を取り除いた地表面(地面そのもの)の高さのモデルであり、建築物の高さの情報は含んでいません。建築物の高さを求めるには、地表面に建築物や構造物を含めた数値表層モデル(DSM)とDTMの差分を取る必要があり、DTMと建築物の外周線(平面位置の情報)だけでは高さは分かりません。
dの「同じグラウンドデータからDTMを作成する場合、格子間隔を大きくする方が、地形をより詳細に表現できる」も誤りです。話が逆で、格子間隔を大きくするほど1マスに含まれる情報が粗くなり、地形の表現は詳細ではなく大まかになります。微細な起伏を表現したいときほど格子間隔を小さく(密に)設定するのが基本です。
残るa・c・eは正しい内容です。段彩図で同じ色に割り当てる標高値の範囲を狭くすると、色の変化がこまかくなり地形の微細な起伏を表現しやすくなること(a)、DTMから傾斜の急な地域を抽出して土砂災害などの危険箇所の推定に活用できること(c)、中心投影の数値写真から正射投影画像(オルソ画像)を作る際にDTMを使って土地の起伏によるひずみを取り除けること(e)は、いずれもDTMの標準的な活用方法です。
関連知識ポイント:DTMとDSMの違い(地表面だけを表すか、建築物や樹木も含めた表層を表すか)は、GISを扱ううえで基本かつ頻出の論点です。ハザードマップの土砂災害警戒区域や急傾斜地の判定にもDTMが使われていることを知っておくと、行政が公開する地図情報がどう作られているかのイメージがつかみやすくなります。基盤地図情報の項目や法律上の位置づけは、GIS(地理情報システム)と地理空間情報とは?でまとめています。
No.24 地図編集の工程別作業区分(作業の順序)
論点の要約:公共測量における地図編集の標準的な工程別作業区分a〜g(編集原稿データの作成・資料収集及び整理・成果等の整理・数値地形図データファイルの作成・数値編集・品質評価・作業計画)について、作業の順序として最も適当なものを選ぶ問題です。
解答へのアプローチ:正解は選択肢3、g(作業計画)→b(資料収集及び整理)→a(編集原稿データの作成)→e(数値編集)→d(数値地形図データファイルの作成)→f(品質評価)→c(成果等の整理)の順です。
まず作業計画(g)を立てなければ、何をどう集めるかが決まりません。次に資料収集及び整理(b)で既存の地図や測量成果などの元データを揃え、それをもとに編集原稿データの作成(a)で地図に載せる内容を編集用の原稿として整えます。原稿ができて初めて数値編集(e)でデジタルデータとして編集作業ができ、その結果を数値地形図データファイルの作成(d)で最終的な成果物のファイル形式にまとめます。ファイルができた段階で品質評価(f)を行い、内容に問題がないことを確認したうえで、最後に成果等の整理(c)で納品物を取りまとめる、という流れです。点検・評価は成果物が形になったあとでなければ実施できず、成果の整理は品質評価が済んだ最後の工程という前後関係を押さえれば、他の選択肢の入れ替わりにも惑わされにくくなります。
関連知識ポイント:計画→実施→点検→とりまとめという工程の考え方は、地図編集に限らず公共測量全般に共通する作業規程の準則の基本構造です。「まず計画、最後に成果の整理」という骨格さえ覚えておけば、その間に入る作業の順番を個別に暗記しなくても、前後関係から論理的に順序を組み立てられます。
他の年度も通しで解くなら
このシリーズの前後の回:前の回は令和8年 測量士 午前【第6弾】No.17〜20 写真測量・レーザ測量、次の回は令和8年 測量士 午前【第8弾】No.25〜28 応用測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。
測量士試験は記述式(午後)まで含めた模範解答が手元にあると、独学でも自己採点がしやすくなります。
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過去問を何年分解くかで迷っている方は、過去問演習の年数の目安をまとめた記事も参考にしてください(測量士補向けの記事ですが、周回の考え方は測量士にも応用できます)。
まとめ:次に何をすべきか
今回のNo.21〜No.24は、電子地形図の読図、地図投影法、DTMの活用、地図編集の工程という、地図編集・GIS分野をひとまとまりで押さえられる4問でした。No.21のように複数の技能を組み合わせる問題は、公式を1つ覚えるだけでは対応できず、水平距離・角度・経緯度・斜距離のどれを問われているかを都度見極める練習が必要です。午前で苦手な分野が見えてきた方は、独学で個別につぶすより、体系立てて学び直せる講座を検討したほうが効率的な場合もあります。
地図編集・GIS以外の分野もまとめて振り返りたいときは、講座ごとのカリキュラムを比較したページで自分の弱点分野をどこまでカバーできるか確認しておくのも一つの手です。
監修者・境さんより
「No.23のDTMの話は、正直かなり自分の仕事に近いところにあると感じました。傾斜地や造成地を仕入れるときはハザードマップや地形の傾斜を必ず確認しますが、その元データがDTMだと知ると、自分が見ている数字がどう作られているか分かって腑に落ちるところがあります。No.21の読図は、老人ホームだ高等学校だと具体的な建物を追いかけて距離や角度を出す地味な作業でしたが、数字だけで判断せず実際に測って確かめる姿勢は、境界や高低差を確認する仕入れの現場とも重なる部分でした。No.24の工程の順番は、資料を集めてから原稿を作り、最後に成果を整理するという当たり前の流れですが、当たり前のことを当たり前の順番で押さえられているかを問われている気がして、意外と気を抜けない問題だと感じました。」
なお、問題を単元別(計算問題/法規/作業規程)に横断して復習できるインデックスページ、午前の残りのNo.25〜No.28(応用測量)の解説、午後(記述式)の解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。
DTMを使った傾斜・災害リスクの話が気になった方は、測量士補の知識が不動産の仕入れ実務にどう活きるかをまとめた記事もあわせてどうぞ。
過去問演習を進める中で「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」という方は、3社の価格・カリキュラムをまとめた比較ページも判断材料にしてみてください。
出典・参考情報(2026年9月26日確認)
- 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
- 国土地理院「令和8年測量士試験問題(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278970.pdf )
- 国土地理院「令和8年測量士試験解答(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278971.pdf )
※本記事の問題要約・解説は編集部が公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現・図表は国土地理院の公式PDFでご確認ください。







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