令和7年 測量士補 過去問解説【第3弾】No.10〜12 水準測量

測量士補

結論から先に言うと
令和7年(2025年)5月18日に実施された測量士補試験から、No.10〜No.12を解説します。今回はすべて水準測量の分野で、No.10は標高の定義とジオイド・遠心力に関する穴埋め、No.11は水準測量の誤差に関する穴埋め、No.12は気温による標尺の伸縮を補正する計算問題です。似た用語が並ぶぶん引っかかりやすいところなので、水準測量で得点が伸び悩んでいる方は通信講座3社の比較表を確認するのも判断材料の一つにしてみてください。

この記事について

測量士補試験は例年5月に実施され、国土地理院が試験後に公式サイトで問題と正解を公表しています。令和7年試験は2025年5月18日に実施され、受験者13,363名のうち6,837名が合格、合格率は51.2%でした(出典は末尾に明記)。本記事は国土地理院公開の「測量士補試験問題」「測量士補試験解答」PDFをもとに、編集部が論点を要約し、解き方のポイントを整理したものです。著作権に配慮して問題文の全文転載は避けているので、正確な文言・図表は公式PDFでご確認ください。監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者としての視点に加え、自身も測量士補試験に挑む受験者という立場からコメントを添えています。

本シリーズ第3弾となる今回のNo.10〜No.12は、3問とも水準測量の分野からの出題です。地球の形と重力に関わる理屈を問う穴埋め、誤差の性質と消去方法を問う穴埋め、観測値を補正する計算と、同じ単元でも問われ方が3問それぞれ異なります。


No.10 標高の基準とジオイド・遠心力(穴埋め)

論点の要約:公共測量における1級・2級水準測量の補正計算の考え方を述べた文章の空欄ア〜ウに入る語句の組合せを選ぶ問題です。標高の定義(何からの高さか)、自転による重力の変化の原因、緯度の異なる2点間で観測高低差が0でも標高が一致しない理由と、それを補正する手法の名称が題材になっています。

解答へのアプローチ:正解は「ア=ジオイド、イ=遠心力、ウ=正規正標高補正(楕円補正)」の選択肢4です。

まずアから絞り込みます。問題文には「標高とは(ア)からの高さのことをいう。湖面のように、力がつり合っていて水の流れがない面のことを静水面といい、(ア)も静水面の一つである」とあります。静水面(等重力ポテンシャル面)の一つと言えるのはジオイドであって、地球楕円体ではありません。地球楕円体は地球の形を近似するために幾何学的に定義した回転楕円体で、静水面ではありません。この時点で選択肢1〜3(アが地球楕円体)は除外できます。

イは「自転による(イ)の影響で、高緯度ほど重力が大きくなる」の部分です。地球の自転で生じる遠心力は赤道付近(低緯度)で最大、極付近(高緯度)でほぼゼロになります。遠心力は重力を打ち消す向きに働くため、遠心力が大きい低緯度ほど正味の重力は小さくなり、遠心力が小さい高緯度ほど重力は大きくなる――という関係です。「復元力」という語はここでは意味が通らないので誤りとわかります。

ウは、緯度の異なる2点間では観測高低差が0でも標高が異なる、という現象に対応する補正の名称です。問題文にあるとおり、静水面どうしの間隔は低緯度から高緯度へ進むにつれて狭くなるため、観測高低差を足し合わせただけでは正しい標高差になりません。この静水面の非平行性を、緯度から計算した正規重力を使って補正するのが正規正標高補正(楕円補正)です。作業規程の準則第67条でも、1級・2級水準測量では標尺補正計算と正規正標高補正計算(楕円補正)を行うと定められています。選択肢の「標尺補正」は、No.12で扱う標尺の目盛の誤差(標尺改正数)と温度による伸縮を補う別の補正なので、ここでは当てはまりません。

静水面の非平行性の模式図。低緯度は遠心力が大きく重力が小さいため静水面の間隔が広く、高緯度は狭い。同じ静水面上の点P(低緯度)と点Q(高緯度)は観測高低差が0でも、ジオイドからの標高はPのほうが大きい。これを補うのが正規正標高補正(楕円補正)

関連知識ポイント:「標尺補正」という語が選択肢に混ざっているのは、この分野の問題によくある目くらましです。同じ水準測量の補正でも、原因が標尺そのもの(目盛の誤差や気温による伸縮)か、緯度による重力の違いかで名称が別だと整理しておくと、この手のすり替えに気づきやすくなります。


No.11 水準測量の誤差(屈折・零点誤差・視準軸誤差)の穴埋め

論点の要約:水準測量における誤差について述べたa〜dの文章の空欄ア〜エに入る語句の組合せを選ぶ問題です。視準距離と大気屈折の関係、標尺を2本1組にして測点数を偶数にする理由、観測距離と誤差の関係、前視・後視の距離をそろえる観測方法が消去できる誤差の名称が並びます。

解答へのアプローチ:正解は「ア=大きく、イ=零点誤差、ウ=比例、エ=視準軸誤差」の選択肢1です。a〜dを順に見ていきます。

aは「視準距離が長いと、大気の屈折による誤差は(ア)なる」という文です。光は大気中を通る距離が長いほど屈折の影響を大きく受けるので、視準距離が長いほど誤差は大きくなります。「小さくなる」を選ぶ組合せは、この時点で除外できます。

bは「標尺を2本1組とし、測点数を偶数とすることで、標尺の(イ)を消去することができる」という文です。零点誤差(零目盛誤差)は、標尺の底面の摩耗などで目盛のゼロが底面と一致しないことによる誤差です。2本の標尺を交互に前視・後視に使い、測点数を偶数にすると、出発点と到着点に同じ標尺が立つことになり、零点誤差はプラス・マイナスで打ち消し合って消去できます(準則第64条でも標尺は2本1組とし、測点数は偶数とすると定めています)。似た語感の「目盛誤差」は、標尺の目盛間隔そのものの精度に関わる別の誤差で、2本1組・偶数回という手法では消せません(目盛誤差は標尺そのものの検定・補正で対応します)。

cは「観測によって得られた高低差に含まれる誤差は、観測距離の平方根に(ウ)する」という文です。水準測量の偶然誤差は観測距離の平方根に比例して大きくなる、というのが基本の考え方で、往復差の許容範囲が「2.5mm√S」のように√S(Sは観測距離km)で決められているのもこのためです。「反比例」ではない点に注意してください。

dは「(エ)を消去するには、各標尺との間隔が等距離となるようにレベルを整置して観測する」という文です。レベルを整置しても視準線が水平にならない(視準線と気泡管軸が平行でない)ことによる誤差を視準軸誤差と呼びますが、前視・後視の距離を等しくしてレベルを整置すれば、視準線が傾いていても前後で誤差が同じだけ生じるため、高低差を計算する段階で打ち消し合います。似た用語の「鉛直軸誤差」(レベルの鉛直軸自体が傾く誤差)はこの方法では消せません。

水準測量の誤差の対比表。零点誤差は標尺を2本1組にし測点数を偶数にして消去、視準軸誤差は前視・後視の距離を等しくして消去。鉛直軸誤差は等距離にしても消えず、目盛誤差は2本1組・偶数回では消えない(検定・補正で対応)

関連知識ポイント:この問題は水準測量の代表的な誤差(大気屈折・零点誤差・目盛誤差・視準軸誤差・鉛直軸誤差)が、どの観測方法で消去できるかを一つずつ丁寧に組み替えたつくりです。「消去できる誤差」と「その消去方法」を1対1で覚えておかないと、似た言葉のペアを逆に入れ替えられて簡単に間違えます。丸暗記よりも、なぜその方法で消えるのかという理屈(対称性で打ち消す・平均で薄める、など)を一度自分の言葉で説明できるようにしておくと安定します。


No.12 標尺補正を行った後の高低差の計算

論点の要約:公共測量で水準点Aから水準点Bまで1級水準測量を実施し、観測距離1.80km・観測高低差+20.0000m・気温22℃という結果(表12)を得ました。使用した標尺の標尺改正数は20℃において−6.2μm/m、膨張係数は+0.6×10⁻⁶/℃という条件のもと、標尺補正を行った後の高低差を求める計算問題です。

解答へのアプローチ:標尺は気温が変わると伸び縮みします。標尺改正数は「基準の気温20℃のときに、標尺の目盛1mあたりどれだけの誤差があるか」を示した数値で、観測時の気温が20℃と違えば、その差の分だけ膨張係数を使って改正数を直す必要があります。標尺補正量は次の式で求めます。

標尺補正量 = {C₀ + (T − T₀) × α} × ΔH
  C₀:20℃における標尺改正数 T:観測時の気温 T₀:基準温度(20℃)
  α:膨張係数 ΔH:観測高低差

観測距離(1.80km)はこの計算には使いません。手順は2段階です。

まず、観測時の気温(22℃)における標尺改正数を求めます。

C(22℃) = C(20℃) + 膨張係数 × (観測時の気温 − 20℃)
       = −6.2×10⁻⁶/m + 0.6×10⁻⁶/℃ × (22℃ − 20℃)
       = −6.2×10⁻⁶ + 1.2×10⁻⁶
       = −5.0×10⁻⁶(1mあたり)

気温が20℃から2℃上がって標尺が伸びたことで、標尺改正数は−6.2μm/mから−5.0μm/mへと、ゼロに近づく向きに変化しました。膨張係数がプラスの標尺は、気温が上がるほど改正数がプラス側に動くので、今回のように20℃での改正数がマイナスの標尺では、その絶対値が小さくなります。

次に、この改正数を観測高低差そのものに掛けて、補正量を求めます。

標尺補正量 = 観測高低差 × C(22℃)
         = 20.0000m × (−5.0×10⁻⁶)
         = −0.0001m

補正量が求まったので、観測高低差に加えます。

補正後の高低差 = 観測高低差 + 標尺補正量
            = 20.0000m + (−0.0001m)
            = 19.9999m

標尺補正を行った後の水準点A・B間の高低差は+19.9999mで、選択肢2が正解です。標尺改正数がマイナスということは、目盛上の1mの実際の長さが1mよりわずかに短い(目盛の間隔が詰まっている)状態を意味します。そのため読み取った値は実際より大きめに出て、観測高低差も真の値よりわずかに大きくなります。だから補正でわずかに減らす、という向きもあわせて押さえておくと計算ミスに気づきやすくなります。

標尺補正の計算の流れ。20℃の標尺改正数−6.2μm/mを膨張係数(1℃あたり+0.6μm/m)で22℃の−5.0μm/mに直し、観測高低差20.0000mに掛けた補正量−0.0001mを加えて、補正後の高低差19.9999mを得る

関連知識ポイント:この手の標尺補正の計算は、①基準の気温での改正数を、実際の気温での改正数に直す、②改正数を観測高低差に掛けて補正量を出す、③観測高低差に補正量を加える、という3段階が型です。今回は関数表を使わずに済む素直な計算でしたが、桁の小さい数値(μm/m=10⁻⁶)を扱うぶん、電卓を持ち込めない測量士補試験では指数の処理でつまずきやすいところでもあります。似たパターンの計算を繰り返し解いて指数計算に慣れておきたい方は、水準測量の計算方法を例題で解説した記事で昇降式・器高式の計算とあわせて練習しておくと安心です。



測量士補試験の計算問題パターン・公式一覧【保存版】
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令和8年の同分野と比べてどう出題が変わったか

今回のNo.10〜No.12と、GNSS測量・水準測量を扱った令和8年の過去問解説(No.8〜No.12)の水準測量パートを見比べると、問われ方の違いがはっきり出ています。令和8年は2級水準測量で視準距離が規定を超えたときの処置や、1級水準測量の往復差の許容範囲(2.5mm√S)から再測する区間を判定する問題など、作業規程に照らして「この数値・この処置は適切か」を判断させる出題が中心で、GNSS標高測量の穴埋めも加わっていました。一方で令和7年のNo.10・No.11は、なぜその規定になっているのかという理屈――ジオイドと遠心力の関係、誤差の性質と消去方法――を穴埋めで問う出題で、No.12の標尺補正は令和8年には出ていなかった計算パターンです。同じ水準測量でも年度によって重心が変わるので、両方の年度を解いておくと単元全体の出題範囲がつかみやすくなります。



測量士補の過去問は何年分解くべき?効率的な学習法
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過去問を年度ごとに解き進めるなら、解説付きの過去問集が1冊あると、公式PDFだけでは分からない「なぜその選択肢が誤りなのか」を確認しやすくなります。

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水準測量は、誤差の消し方と補正計算の式を正しく覚えているかで差がつく分野です。式の意味から理解したいときは、解説講義を使うと覚え直しの手間が減ります。編集部が比べた中では、過去7年分の過去問集と計算問題対策がそろっているアガルートが最初の候補になります。

このシリーズの前後の回:前の回は令和7年 測量士補【第2弾】No.5〜9 多角測量・GNSS測量、次の回は令和7年 測量士補【第4弾】No.13〜15 地形測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。

まとめ:次に何をすべきか

今回のNo.10は標高の基準とジオイド・遠心力の関係、No.11は水準測量の誤差の性質と消去方法、No.12は気温による標尺の伸縮を補正する計算でした。似た言葉が並ぶ分野ほど、丸暗記ではなく「なぜそうなるのか」を一度自分の言葉で説明できるかどうかが得点を分けます。過去問を解いていて似たような用語問題で繰り返し間違えるようなら、独学だけで一つずつ潰していくより、受講費用とカリキュラムを比較してみるのも一つの選択肢だと思います。



測量士補は独学で合格できる?勉強法とスケジュール
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監修者・境さんより
No.10・No.11のような穴埋め問題は、単語だけ見ると「なんとなく知ってる気がする」状態で読み進めてしまい、実際に選ぶ段になると似た言葉で迷うパターンが多い気がします。土地の仕入れの現場でも、測量図に書かれている数値や注記を「なんとなく分かった気になって流し読み」してしまうと、あとで面積や境界の食い違いに気づけないことがあります。No.12のように気温で数値が変わるという発想は実務ではあまり意識しませんが、観測条件によって同じ現場でも数字が微妙に変わりうるという感覚は、境界確定の現場にも通じるものがあると感じています。仕入れ営業の実務にどうつながるかは、仕入れ営業シリーズのハブ記事でまとめて書いています。

過去問演習を進める中で「そもそも自分の弱点分野が分からない」「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」という方は、以下もあわせて参考にしてください。

なお、問題を単元別(計算問題/法規/作業規程)に横断して復習できるインデックスページ、および本シリーズの他の問題番号を扱う解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。


出典・参考情報(2026年9月26日確認)

  • 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
  • 国土地理院「令和7年測量士補試験問題1」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000270177.pdf )
  • 国土地理院「令和7年測量士補試験問題2」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000270178.pdf )
  • 国土地理院「令和7年測量士補試験解答」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000270180.pdf )

※本記事の問題要約・解説は編集部が上記の公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現・図表は国土地理院の公式PDFを必ずご確認ください。計算過程の数値は関数表・電卓の精度により若干の誤差が生じる場合があります。

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