令和8年 測量士 午前 過去問解説【第4弾】No.11〜13 水準測量

測量士

結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日実施の測量士試験・午前(択一式)から、水準測量分野のNo.11〜13を国土地理院の公式問題・正解をもとに解説します。1級水準測量の平均計算と読定順序、GNSS標高測量の区分、標尺補正を伴う最確値の計算という3本立てです。水準測量は測量士補・測量士どちらでも頻出の分野なので、3社の講座を横並びで比較するから自分の弱点分野に強い講座を探してみてください。

この記事について

測量士試験は午前(択一式・28問)と午後(記述式)の2部構成で、令和8年試験は測量士補試験と同じ2026年5月17日に実施されました。本記事は国土地理院公開の「測量士試験問題」「測量士試験解答」PDF(出典は末尾に明記)をもとに、午前の択一問題のうちNo.11〜No.13を編集部が要約・解説したものです。この3問はいずれも水準測量という同じ分野からの出題で、公共測量における水準測量の規定、GNSS標高測量の区分、標尺補正を含む最確値の計算という順に、知識問題2問・計算問題1問という構成になっています。著作権に配慮し問題文の全文転載は避けているので、正確な文言は公式PDFでご確認ください。

監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者で、測量士補試験の受験者です(測量士試験は未受験)。狭小地の仕入れでは高低差のある土地の造成コストが判断を左右する場面もあり、水準測量の考え方を実務の目線からコメントしています。


No.11 公共測量における水準測量の規定

論点の要約:公共測量における水準測量について述べた1〜5の記述のうち、「明らかに間違っているもの」を選ぶ問題です。水準網の平均計算における仮定標高の扱い、直接水準測量の平均計算における重量の与え方、1級水準測量の読定順序とその目的、標尺補正計算・正規正標高補正計算、新点観測の時期という5つの論点が並んでいます。

解答へのアプローチ:正解は3の「1級水準測量において、標尺目盛を後視、前視、前視、後視の順に読定するのは、鉛直軸誤差を小さくすることが目的である」という記述です。後前前後の順で読定する本来の目的は、観測の間に三脚や標尺が沈下することによる誤差を、時間的に対称な観測で打ち消すことにあります。鉛直軸誤差はレベルの鉛直軸が傾いていることによる誤差で、読定順序を工夫しても消去できるものではありません(整準の際の器械の向け方など、別の方法で小さくします)。手順の「目的」を入れ替えるのが、この問題の仕掛けだと思います。

残る4つの記述はいずれも正しい内容です。観測方程式を用いた水準網の平均計算では、求点の仮定標高は任意の値でよく(水準測量の観測方程式は高低差という線形の量なので、仮定値のずれが最終的な平均値に影響しません)、直接水準測量の重量は観測距離の逆数として観測方程式または条件方程式で計算します。1級水準測量で新点の標高を求める際は標尺補正計算と正規正標高補正計算を行いますが、実測の重力値が得られる場合は正規正標高補正計算に代えて正標高補正計算を用いることも認められています。そして新点の観測は、永久標識を設置してから24時間以上経過してから行うのが決まりです。

後視→前視→前視→後視の読定順序と時間とともに進む沈下の図:後視2回の平均と前視2回の平均が同じ時刻にそろい、沈下の影響が打ち消される

関連知識ポイント:「その手順の目的は何か」まで踏み込んで問われるのが測量士試験らしいところです。測量士補試験では手順そのものを覚えていれば解ける場面が多いですが、測量士試験では「なぜその手順を取るのか」という理屈を混同させる選択肢が用意されています。手順と理由をセットで理解しておくと、こうした入れ替えに気づきやすくなります。


No.12 GNSS標高測量の区分と基準

論点の要約:公共測量におけるGNSS標高測量について述べた1〜5の記述のうち、「明らかに間違っているもの」を選ぶ問題です。GNSS標高測量の等級区分、固定点の楕円体高の扱い、最新のジオイド・モデル、離島での基準面補正、既知点との標準距離が題材になっています。

解答へのアプローチ:正解は1の「GNSS標高測量とは、既知点に基づき、GNSS測量機を用いて、新設する水準点の標高を定める作業をいい、2級水準測量に区分される」という記述です。GNSS標高測量は、直接水準測量とは別の観測方式ですが、作業規程の準則では3級水準測量に区分されています。「2級」としている時点でこの記述は誤りです。等級を1つずらして紛れ込ませるパターンなので、数字の丸暗記だけでは見抜きにくい仕掛けだと感じます。

残る4つの記述は正しい内容です。基線解析の固定点の楕円体高は、ジオイド高と成果表の標高から求めた値(または成果表の楕円体高そのもの)を使い、元期座標か今期座標のどちらかを用います。令和7年4月1日時点の最新のジオイド・モデルは「ジオイド2024日本とその周辺」です(No.6で扱った基準点の標高成果の改定と同じ日付で、あわせて覚えておくと整理しやすいでしょう)。ジオイド高は国土地理院が提供する最新のジオイド・モデルから求めますが、国土地理院の長が承認した測量の原点(標高)を使っている離島では、そこに基準面補正パラメータから求めた値を加える必要があります。そして選択肢5の「既知点とする電子基準点と新点間の距離は6,000m以上を標準とする」も、正解表に照らして正しい記述の扱いです。

関連知識ポイント:GNSS標高測量は比較的新しい測量方法で、ジオイド・モデルの改定など制度側の更新も追いかける必要がある分野です。「ジオイド2024日本とその周辺」のように、最新のモデル名まで問われる出題は今後も増えていきそうです。水準測量の基礎的な計算そのものをまだ固めきれていない方は、水準測量の計算方法を例題で解説した記事で昇降式・器高式の考え方から復習しておくと、この手の応用知識も頭に入りやすくなります。

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No.13 標尺補正後の新点Pの標高の最確値

論点の要約:既知点AとBから水準測量で新点Pの標高を求める計算問題です。A→P間(観測距離1km、標尺補正前の観測高低差−69.4635m、観測時の平均気温27℃)とP→B間(観測距離2km、+49.1848m、27℃)の観測結果が与えられ、標尺改正数(20℃で+5.0μm/m)と膨張係数(+1.0×10⁻⁶/℃)を使って標尺補正を行った後、新点Pの標高の最確値を選択肢から選びます。

水準路線A(199.838m)→P→B(179.553m)の図:A→P間1km・−69.4635m、P→B間2km・+49.1848m、27℃の標尺補正係数12.0×10⁻⁶と最確値130.3717m

解答へのアプローチ:まず標尺補正の係数を求めます。標尺改正数は20℃を基準にした値なので、観測時の平均気温27℃とのずれ分を膨張係数で補正します。

補正係数 K = 5.0×10⁻⁶ + 1.0×10⁻⁶ × (27 − 20) = 5.0×10⁻⁶ + 7.0×10⁻⁶ = 12.0×10⁻⁶

この係数を観測高低差にそのまま掛けて、標尺補正後の高低差を求めます。

  • A→P:−69.4635 × 12.0×10⁻⁶ ≒ −0.00083(m)なので、補正後の高低差は −69.4635 − 0.00083 ≒ −69.4643m
  • P→B:+49.1848 × 12.0×10⁻⁶ ≒ +0.00059(m)なので、補正後の高低差は +49.1848 + 0.00059 ≒ +49.1854m

補正後の高低差を使って、それぞれの経路からPの標高を求めます。

  • Aから:H(A) = 199.838 + (−69.4643) = 130.3737m
  • Bから:H(B) = 179.553 − 49.1854 = 130.3676m

2つの経路で求めたPの標高には差が出るので、観測距離の逆数を重量として重量平均(最確値の計算)を行います。ここはNo.11の選択肢2で問われていた「直接水準測量の重量は観測距離の逆数」という規定そのものです。A→P間は1kmなので重量は1、P→B間は2kmなので重量は1/2(=0.5)とします。

H(P) = (1 × 130.3737 + 0.5 × 130.3676) ÷ (1 + 0.5) ≒ 130.3717m

計算過程で生じる端数の丸め方によって最終桁がわずかに動きますが、いずれにしても選択肢の中で最も近いのは4の130.3717mです。この問題は「関数の値が必要な場合は巻末の関数表を使用すること」という注記が問題文にありますが、三角関数や平方根を使う場面は無く、四則演算だけで解けます。関数表を探しに行って時間を使ってしまわないよう、まず計算の見通しを立ててから解くと安心です。

関連知識ポイント:標尺補正・重量平均という2つの操作を1問の中で連続して行わせるのが、この問題の難しさです。測量士補試験の計算問題は単一の公式を当てはめれば解けるものが中心ですが、測量士試験では複数の補正・複数の観測を組み合わせて最確値を求めるという、実務の平均計算に近い形式が増えます。水準測量の計算そのものにまだ不安がある方は、昇降式・器高式の野帳の付け方から解説した記事を先に固めておくと、この手の応用問題にも対応しやすくなります。


他の年度も通しで解くなら

このシリーズの前後の回:前の回は令和8年 測量士 午前【第3弾】No.7〜10 多角測量・GNSS測量、次の回は令和8年 測量士 午前【第5弾】No.14〜16 地形測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。

測量士試験は記述式(午後)まで含めた模範解答が手元にあると、独学でも自己採点がしやすくなります。

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まとめ:次に何をすべきか

No.11〜13のまとめ:No.11は読定順序の目的が沈下の相殺、No.12はGNSS標高測量が3級水準測量、No.13は最確値130.3717m

今回のNo.11〜13は、水準測量という同じ分野の中でも、規定の暗記(No.11)、制度の等級区分(No.12)、補正を含む計算(No.13)と、問われ方が違う3問でした。知識問題は「手順そのもの」より「その手順・区分の理由や根拠」まで踏み込んで問われるのが測量士試験の特徴だと、解いていて感じます。No.13のような複合的な計算問題で詰まった方は、水準測量の基礎から段階的に学び直せる講座を検討したほうが、独学で個別につぶすより効率的な場合もあります。講座選びで迷ったら比較ページを見てみるのも一つの手です。

監修者・境さんより
「No.13の標尺補正は、仕入れの現場感覚で言うと『測る道具そのものの誤差を先に消してから、初めて土地の高低差を信じられる』という話に近いと感じました。造成地の仕入れでは、隣接地との高低差が数センチ違うだけで擁壁の要不要や工事費が変わってくることがあります。GNSS標高測量が3級水準測量相当という区分の話も、精度の等級によって『どこまで信用していい数値か』が変わるという意味では、現場で図面の測量方式を確認する感覚と重なるところがありました。」



令和8年 測量士試験 午前 過去問解説【第1弾】No.1〜No.3
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過去問演習を進める中で「測量士補から測量士へのステップアップを具体的に知りたい」「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」という方は、以下もあわせて参考にしてください。



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なお、問題を単元別(計算問題/法規/作業規程)に横断して復習できるインデックスページ、および問題ごとの解説記事(No.14以降)、午後(記述式)の解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。


出典・参考情報(2026年9月26日確認)

  • 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
  • 国土地理院「令和8年測量士試験問題(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278970.pdf )
  • 国土地理院「令和8年測量士試験解答(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278971.pdf )

※本記事の問題要約・解説は編集部が公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現は国土地理院の公式PDFでご確認ください。

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