令和8年 測量士 午前 過去問解説【第5弾】No.14〜16 地形測量

測量士

結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日実施の測量士試験・午前(択一式)のうち、地形測量分野のNo.14〜No.16を解説します。ネットワーク型RTK法によるTS点設置の落とし穴、TS放射法の誤差伝播計算、地上レーザ測量の穴埋めと、出題のクセが3問それぞれ違うのが今回の特徴です。国土地理院が公表した公式の問題・正解をもとに、編集部が論点を整理しました。地形測量の分野でつまずいた方は、講座選びに迷ったら比較ページも参考にしてみてください。

この記事について

測量士試験の午前は択一式28問で構成されていて、分野ごとにある程度まとまって出題される傾向があります。本シリーズはこれまで問題番号順に解説を重ねてきましたが、今回のNo.14〜No.16は「地形測量」という同じ分野でくくれる3問なので、まとめて1本の記事にしました。現地測量の作業規定、TSによる観測誤差の伝わり方、地上レーザ測量の手順という、地形測量の中でも切り口が異なる出題が並びます。

国土地理院公開の「測量士試験問題」「測量士試験解答」PDF(出典は末尾に明記)をもとにした要約・解説であり、著作権に配慮して問題文の全文転載は避けています。正確な文言は公式PDFでご確認ください。監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者で、測量士補試験の受験者という立場から(測量士試験は未受験)、実務目線のコメントを添えています。


No.14 現地測量におけるGNSS測量機・ネットワーク型RTK法・TS点の設置

論点の要約:公共測量における現地測量について述べた1〜5の記述のうち、「明らかに間違っているもの」を1つ選ぶ問題です。GNSS測量機の等級、ネットワーク型RTK法によるTS点設置の手順、観測値のセット間較差の許容範囲、TSによる標高測定の代替手段、キネマティック法・RTK法で組み合わせられる衛星の種類が選択肢に並びます。

解答へのアプローチ:誤りは選択肢2の「ネットワーク型RTK法によるTS点の設置において、単点観測法を用いた場合、1点の既知点を使用し、整合確認を行う」です。単点観測法は、電子基準点網の観測データから作られる補正情報を使い、既知点と直接結合させずにTS点の座標を求める方法なので、求めた座標が作業地域の既存の基準点網とちゃんと整合しているかを、別途チェックする工程が必要になります。ここで使う既知点が1点だけだと、その1点自体にズレがあった場合や、系統的な誤差が生じていた場合に気づく手立てがありません。整合確認は複数の既知点を使って行うのが原則で、「1点の既知点を使用し」と言い切ってしまっている時点でこの記述は成立しないと判断できます。

残る4つの記述は妥当な内容です。GNSS測量機を用いる現地測量では2級GNSS測量機以上を標準とすること、ネットワーク型RTK法の観測値を点検する際のセット間較差の許容範囲が水平面(南北・東西成分)で20mm、高さ成分で30mmであること、TSによる標高測定は必要に応じて水準測量で行えること、キネマティック法・RTK法の観測ではGPS・準天頂衛星・GLONASSを組み合わせて使用できることは、いずれも作業規程の準則に沿った内容です。

単点観測法の整合確認の比較:既知点1点だけではズレに気づけず、複数の既知点と比べれば基準点網との整合を確かめられる

関連知識ポイント:単点観測法は手軽な反面、作業地域の既知点と直接結合しない観測であるため「本当に基準点網と合っているか」を確認する工程が別途必要になる、という考え方は測量士補の学習範囲より一段細かい実務寄りの知識です。現地でGNSS測量機やTSを使う場面は、不動産の仕入れ営業が立ち会う現況測量の現場ともイメージが重なる部分があります。標高測定を水準測量で補う話は、水準測量の計算方法を例題で解説した記事もあわせて読むと理解が深まるはずです。


No.15 TS放射法による高低差の標準偏差(誤差伝播の法則)

論点の要約:TSを用いて放射法により既知点Aから求点Bまでの高低差Zを求める場面で、斜距離D・高低角θそれぞれの観測誤差が、最終的な高低差Zの標準偏差にどう伝わるかを求める計算問題です。式はZ=D sinθで、DとθはTSの精度(標準偏差)が与えられていて、誤差伝播の法則を使ってσ_Zを求めます。

解答へのアプローチ:まず問題文で与えられた条件を整理します。斜距離の測定値はD=100.000m=100,000mm、高低角はθ=24°00′00″。距離測定の精度(標準偏差)はσ_D=(5+5×10⁻⁶D) mm、角度測定の精度はσ_θ=5″です。誤差伝播の法則の式(式15-2)は次のとおりで、Dとθの分散(σ²)に、それぞれの偏微分係数の2乗を掛けて足し合わせる形をしています。

σ_Z² = (∂Z/∂D)² σ_D² + (∂Z/∂θ)² σ_θ²
Z = D sinθ なので
∂Z/∂D = sinθ、∂Z/∂θ = D cosθ

まず単位を揃えるのがこの問題の最初の関門です。距離はmm単位で計算するので、D=100,000mm。角度はラジアンに揃える必要があり、問題文の指示どおり1ラジアン=(2×10⁵)″として、σ_θ=5″÷(2×10⁵)=2.5×10⁻⁵ラジアンとします。

σ_Dはmm単位のDをそのまま式に入れて、

σ_D = 5 + 5×10⁻⁶ × 100,000 = 5 + 0.5 = 5.5 mm

次に巻末の関数表からθ=24°のsin・cosを読み取ります。sin24°=0.40674、cos24°=0.91355です。これを使ってZの分散を求めます。

第1項 = (sinθ × σ_D)² = (0.40674 × 5.5)² ≒ 2.2371² ≒ 5.00
第2項 = (D cosθ × σ_θ)² = (100,000 × 0.91355 × 2.5×10⁻⁵)²
      = (91,355 × 2.5×10⁻⁵)² ≒ 2.2839² ≒ 5.22
σ_Z² = 5.00 + 5.22 ≒ 10.22
σ_Z = √10.22 ≒ 3.20 mm

したがって高低差Zの標準偏差は約3.2mmで、選択肢2が正解です。

誤差伝播の計算フロー:σD=5.5mm、σθ=2.5×10⁻⁵radに換算し、第1項約5.00と第2項約5.22を足した10.22の平方根で約3.2mm

関連知識ポイント:誤差伝播の法則そのものは測量士補試験でも出題されますが、測量士試験では偏微分の形を自分で立てるところから求めさせるのがこの問題の特徴です。角度の単位変換を忘れる、σ_Dの計算でDの単位(mやmm)を混同する、というのがこの手の問題で一番よくあるミス。距離と角度からある量を求めるという発想自体は、トラバース測量の計算を例題で解説した記事で扱っている考え方とも重なるので、計算問題に苦手意識がある方は合わせて確認しておくと理解が定着しやすいと思います。

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No.16 地上レーザ測量の距離計測方式・計測方法・器械高(穴埋め)

論点の要約:公共測量における地上レーザ測量について述べたa〜cの文の空欄ア〜ウに入る語句の組合せを選ぶ問題です。ア:地上レーザスキャナの距離計測方法(タイム・オブ・フライト方式又は[ ア ]方式)、イ:平面直角座標系で計測する場合の計測方法([ イ ]を用いることを原則とする)、ウ:同一箇所から複数回計測する場合の器械高の扱い(それぞれの器械高を[ ウ ]ことを原則とする)が問われます。

解答へのアプローチ:正解は選択肢1(ア=位相差、イ=器械点・後視点法、ウ=変える)です。まずアですが、地上レーザスキャナの距離計測方式は実務上「タイム・オブ・フライト方式」と「位相差方式」の2つに整理されるのが定番で、選択肢に混ざっている「結合多角」はそもそもトラバース(多角測量)の用語であり、距離の計測方式を表す言葉ではありません。この時点で「結合多角」を含む選択肢は除外できます。

次にイ。平面直角座標系のような公共測量の座標系に合わせて計測する場合は、既知点上に器械を据えてもう1点の既知点を後視する「器械点・後視点法」を用いることが原則とされています。「後方交会法」や「相似変換法」も地上レーザ測量で使われる方法ですが、平面直角座標系で計測する場合の「原則」として示されているのは器械点・後視点法です。

最後にウ。同一箇所から複数回計測する場合、それぞれの地上レーザスキャナの器械高は「変える」ことが原則です。同じ器械高のまま繰り返し計測すると、ほぼ同じ条件の点群が重なるだけになり、器械高の取り違えなどの誤りに気づきにくく、複数回計測する意味が薄れてしまうためと考えられます。

地上レーザ測量No.16の要点:距離計測は位相差方式、平面直角座標系では器械点・後視点法が原則、複数回計測では器械高を変える

関連知識ポイント:地上レーザ測量は近年の公共測量マニュアルで整備が進んでいる分野で、測量士補の学習範囲ではまだ深く扱われないことが多い単元です。距離計測の原理(タイム・オブ・フライト/位相差)と、器械の据え方(器械点・後視点法/後方交会法/相似変換法)という2つの軸を分けて覚えておくと、似たパターンの穴埋め問題に対応しやすくなります。


他の年度も通しで解くなら

このシリーズの前後の回:前の回は令和8年 測量士 午前【第4弾】No.11〜13 水準測量、次の回は令和8年 測量士 午前【第6弾】No.17〜20 写真測量・レーザ測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。

地形測量の分野は出題範囲が広く、GNSS・TS・地上レーザ・写真測量にまたがって知識が問われます。複数年度分の問題と模範解答をまとめて確認したい方には、年度をまたいで解ける問題集が便利です。

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令和8年 測量士試験 午前 過去問解説【第1弾】No.1〜No.3
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まとめ:次に何をすべきか

今回のNo.14〜No.16は、同じ「地形測量」というくくりでも、規定の正誤を問う知識問題、誤差伝播を自分で式変形して解く計算問題、実務手順の穴埋め問題と、問われ方が3通り違いました。知識問題は「あり得ない言葉が混ざっていないか」に注目すると選択肢を絞り込みやすく、計算問題は単位の変換を最初に済ませてしまうのがミスを防ぐコツです。分野ごとに苦手・得意がはっきり分かれてきた方は、通信講座3社の比較表を見るのも一つの手だと思います。

監修者・境さんより
地上レーザ測量や点群データという言葉は、ここ数年で仕入れ営業の現場でも耳にする機会が増えてきました。造成地の高低差や擁壁の形状を、現地に何度も足を運ばなくても図面上で確認できるという触れ込みで提案されることがあるんですが、正直これまでは「精度がどこまで担保されているのか」を自分の言葉で聞き返せずにいました。No.16のように「器械高を変えて複数回計測する」といった手順を知っていると、提案された測量の中身をもう少し具体的に質問できそうだなと感じています。



トラバース測量の計算を例題で解説|方向角・緯距経距・閉合比の求め方
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過去問演習を進める中で「分野ごとの弱点をつぶしたい」「独学と講座、どちらが向いているか判断できない」という方は、以下もあわせて参考にしてください。

なお、問題を単元別(計算問題/法規/作業規程)に横断して復習できるインデックスページ、および本シリーズの他の号(No.4〜No.13、No.17以降)、午後(記述式)の解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。


出典・参考情報(2026年9月26日確認)

  • 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
  • 国土地理院「令和8年測量士試験問題(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278970.pdf )
  • 国土地理院「令和8年測量士試験解答(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278971.pdf )

※本記事の問題要約・解説は編集部が公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現は国土地理院の公式PDFでご確認ください。計算過程の数値は関数表の精度により若干の誤差が生じる場合があります。

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