結論から先に言うと
令和7年(2025年)5月18日に実施された測量士補試験について、国土地理院が公表した公式の問題・正解をもとにNo.1〜No.4を解説します。No.1・No.2は測量法・公共測量に関する法規問題、No.3は系統誤差と偶然誤差を扱う計算問題、No.4は地球の形状及び位置の基準に関する法規問題です。いずれも過去問で繰り返し狙われている論点で、パターンを押さえておけば得点源にしやすい問題です。間違えた問題があった方、令和8年の同分野の出題とあわせて弱点を洗い出したい方は、3社の講座を価格・カリキュラムで比較したページも参考にしてみてください。
この記事について
測量士補試験は例年5月に実施され、国土地理院が試験後に公式サイトで問題と正解を公表します。令和7年試験は2025年5月18日に実施され、受験者13,363名のうち合格者は6,837名、合格率は51.2%でした(出典は末尾に明記)。本記事は国土地理院公開の「測量士補試験問題」「測量士補試験解答」PDFをもとに、編集部が論点を要約し、解き方のポイントを整理したものです。問題文の全文転載は著作権の観点から避けているため、正確な問題文・図表・選択肢の完全な文言は公式PDFで確認してください。
監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者としての視点に加え、自身も測量士補試験に挑む受験者という立場からコメントを添えています。すでに公開している令和8年試験のNo.1〜3の解説と読み比べると、法規分野で毎年どんな言い回しが狙われやすいかが見えてくるはずです。
No.1 測量法の基本用語(測量・測量標・公共測量の定義)
論点の要約:測量法(昭和24年法律第188号)に規定された事項について述べたa〜eの5つの記述のうち、「明らかに間違っているものだけの組合せ」を選ぶ問題です。「測量」の定義、測量作業機関の定義、「測量標」の定義、基本測量の測量標の移転制限、公共測量の実施根拠となる測量成果の範囲が題材でした。
解答へのアプローチ:正解は選択肢2(a・e)です。5つの記述を一つずつ条文と突き合わせていくと、この2つだけが定義や範囲をすり替えていることに気づけます。
aは「『測量』とは、土地の測量をいい、地図の調製や測量用写真の撮影は含まない」という記述。実際の測量法第3条では、測量とは土地の測量をいい、地図の調製及び測量用写真の撮影を含むと定められています。「含まない」と言い切ってしまっている時点で誤りです。地図を作る作業や測量用の写真を撮る作業まで測量法上の「測量」に含まれる、という範囲の広さは意外と見落とされがちなポイントでしょう。
eは「公共測量は、『基本測量』、『公共測量』又は『基本測量及び公共測量以外の測量』の測量成果に基づいて実施しなければならない」という記述です。測量法第32条が定めているのは「公共測量は、基本測量又は公共測量の測量成果に基いて実施しなければならない」という2種類だけ。「基本測量及び公共測量以外の測量」という第3の区分を勝手に付け加えている時点で、条文にない話をしていることになります。公共測量の土台になれるのは、あくまで基本測量か公共測量の成果に限られる、という枠組みを覚えておく必要があります。
残るb・c・dは条文どおり正しい記述でした。bの「測量作業機関とは、測量計画機関の指示又は委託を受けて測量作業を実施する者をいう」は測量法第8条の定義そのもの。cの「測量標とは、永久標識、一時標識及び仮設標識をいう」も第10条の定義に一致します。dの「国土地理院の長の承諾を得ないで、基本測量の測量標を移転してはならない」は測量法第22条の規定どおりで、こちらも誤りではありません。
関連知識ポイント:No.1のような用語問題は、条文の一部だけを切り取って「含む」を「含まない」に、「2種類」を「3種類」に、といった具合に範囲をすり替えてくるのが定番の出題パターンです。用語の意味を丸暗記するより、それぞれの用語が指す範囲の広さ・狭さを意識して覚えておくと、初見の組合せでも判断しやすくなります。測量法の頻出用語をまとめて確認したい方は、測量士補試験の頻出用語集もあわせてどうぞ。
No.2 公共測量における測量作業機関の対応
論点の要約:公共測量における測量作業機関の対応について述べたa〜eの5つの記述のうち、「明らかに間違っているものだけの組合せ」を選ぶ問題です。基準点測量における建標承諾、水準測量に伴う道路使用許可、災害時のハザードマップ携行、個人情報の管理、水準測量の新設点の観測タイミングが題材でした。
解答へのアプローチ:正解は選択肢3(b・e)です。この2つに共通するのは、「効率を優先して、本来必要な手続きや手順を省いてしまっている」という点。
bは「C市が発注する水準測量において、使用する道路が全てC市の市道であったため、道路使用許可申請を省略して作業を実施した」という記述です。道路使用許可は道路交通法に基づいて所轄の警察署長から得るもので、その道路の管理者が誰かとは別の話。発注者と道路管理者が同じC市だからといって、交通の安全を確保するための許可申請まで省略していい理由にはなりません。
eは「水準測量における新設点の観測を速やかに行うため、永久標識設置から観測までの工程を同日中に行った」という記述です。永久標識を設置した直後は、コンクリートの強度や周辺地盤がまだ安定していない状態です。作業規程の準則(第64条第4項)では新設点の観測は永久標識の設置後24時間以上経過してから行うと定められており、設置と同じ日のうちに観測まで済ませる工程は、この規定を満たしません。速さを優先して安定を待たなかった、という点でbと同じ構造の誤りです。
残るa・c・dは適切な対応でした。aの「A県が発注した基準点測量において、B市が所有する土地に永久標識を設置するに当たり、B市から建標承諾書により承諾を得て作業を実施した」は、土地所有者の承諾を得るという正しい手順。cの「局地的な大雨などの災害や事故に備え、現地作業において気象情報に注意するとともにハザードマップを携行した」も、現場の安全管理として妥当な対応です。dの「測量計画機関から貸与された資料の中に個人を特定できる情報が含まれていたことから、当該資料にアクセスできる作業者を制限するなど、厳重な情報管理を行った」も、個人情報保護の観点から適切な措置といえます。
関連知識ポイント:この手の問題は条文暗記というより、公共測量の現場運用に関するリテラシーを問う出題です。「省略していい手続きなど基本的に存在しない」くらいの前提で選択肢を読むと、bやeのような「効率化のために手順を飛ばした」系の記述に気づきやすくなります。公開済みの令和8年No.1〜3の解説で扱ったNo.2でも、電子基準点の基本測量成果は公開されているから使用承認は要らない、とする記述が誤りの選択肢でした。同じ問題には「県道上の水準測量で、あらかじめ所轄の警察署長から道路使用許可を得た」という正しい記述もあり、令和7年のbと表裏の関係になっています。「公開されている情報だから」「同じ発注者だから」を理由に手続きを省いていいと錯覚させる出題は、年をまたいで繰り返し使われているひっかけ方です。
No.3 系統誤差・偶然誤差と10回測距の最確値
論点の要約:測量の誤差に関する文章の空欄ア〜ウに入る語句・数値の組合せを選ぶ問題です。測定値に含まれる誤差のうち、原因が特定でき対策できる誤差(ア)と、発生要因が明らかでなく防げない誤差(イ)の違いを踏まえたうえで、トータルステーションで同一条件下10回観測した距離データから、(ア)が取り除かれているとした場合の2地点間の最確値(ウ)を求めます。
解答へのアプローチ:まず用語の空欄から確定させましょう。測量機器の特性や大気状態など、原因を特定して対策できる誤差はア=系統誤差。発生要因が明らかでなく、対策のしようがない誤差はイ=偶然誤差です。系統誤差は観測方法の工夫や器械の点検・調整で減らせる一方、偶然誤差は原理的に防げないため、複数回の観測結果から統計的に「最も確からしい値」を求めるしかない、という関係になっています。
系統誤差が取り除かれている(=残っているのは偶然誤差だけ)と仮定できる場合、最確値は単純にその観測値の算術平均で求められます。今回の10回観測の結果は次のとおりです(単位はm)。
50.251, 50.252, 50.255, 50.252, 50.255, 50.252, 50.255, 50.251, 50.252, 50.255
10個の値をすべて足し合わせると502.530m。これを観測回数の10で割ると、
最確値 = 502.530 ÷ 10 = 50.253(m)
ウは50.253mで、ア=系統誤差、イ=偶然誤差、ウ=50.253mの選択肢2が正解です。内訳は50.251mが2回、50.252mが4回、50.255mが4回なので、(50.251×2+50.252×4+50.255×4)÷10と重み付きで計算しても同じ50.253mになります。
関連知識ポイント:測量士補試験の誤差論は、①誤差の種類を見分ける知識問題と、②最確値・確率誤差などを求める計算問題がセットで出るのが特徴です。「同じ条件で繰り返し測った値の最確値は算術平均」という基本さえ押さえておけば、今回のような素直な出題は取りこぼしにくいでしょう。ただし観測の重み(精度)が異なる場合は単純平均ではなく加重平均になるなど、応用パターンもあるので注意が必要です。計算問題全般のパターンを整理して確認したい方は、計算問題のパターンと公式を1本にまとめた記事も役立つはずです。
No.4 地球の形状及び位置の基準(GRS80・楕円体高・ジオイド高)
論点の要約:地球の形状及び位置の基準について述べた1〜5の記述のうち、「明らかに間違っているもの」を1つ選ぶ問題です。位置の表示方法、世界測地系とGRS80、楕円体高・ジオイド高の定義、GNSS観測で得られる高さの種類、ジオイドの性質が並びます。
解答へのアプローチ:明らかに間違っているのは選択肢3です。「楕円体高とは準拠楕円体から地表までの高さ、ジオイド高とは平均海面から地表までの高さである」という記述ですが、後半の「ジオイド高=平均海面から地表までの高さ」という説明は、本来「標高」の定義です。ジオイド高は、準拠楕円体の表面からジオイド面(平均海面を陸側に延長したと仮定した面)までの高さのことです。標高とジオイド高を入れ替えて誤りに仕立てた選択肢、というのがこの問題の正体です。
三者の関係を整理すると、楕円体高=標高+ジオイド高という式が成り立ちます。楕円体面から地表までの高さ(楕円体高)は、ジオイド面から地表までの高さ(標高)と、楕円体面からジオイド面までの高さ(ジオイド高)を足し合わせたものだからです。この3層構造を頭の中で描けるようにしておくと、どの用語がどこにすり替えられても気づきやすくなります。
残る選択肢1・2・4・5は、いずれも正しい記述でした。1の「測量法では地球上の位置は地理学的経緯度及び平均海面からの高さで表すこととされている」は測量法第11条の表示方法どおり。2の「測量法に規定する世界測地系では、回転楕円体としてGRS80を採用している」も正しく、GRS80(Geodetic Reference System 1980)は日本の測地基準系の土台になっている準拠楕円体です。4の「GNSS観測で直接得られる高さは、楕円体高である」も正しい記述です。GNSSは衛星と受信機の幾何学的な位置関係から座標を求める仕組みなので、直接得られるのは楕円体高で、標高を知るには別途ジオイド高を差し引く必要があります。5の「ジオイドは、重力の方向と直交しており、地球の形状と大きさに近似した回転楕円体の表面に対して凹凸がある」も、ジオイドの性質として正しい内容です。
関連知識ポイント:標高・楕円体高・ジオイド高を入れ替える出題は、令和7年に限った話ではありません。令和8年No.4〜7の解説で扱った令和8年No.4でも、「標高」の説明として楕円体面からジオイド面までの高さ(本当はジオイド高)を書いた記述と、地心直交座標の計算に楕円体高ではなくジオイド高を使うとした記述が誤りでした。令和7年は「ジオイド高」の欄に標高の定義を、令和8年は「標高」の欄にジオイド高の定義を書いており、入れ替えの向きが逆なだけで同じ構造です。この分野は毎年出るものと考えて、3層構造の図を1枚頭に入れておくのが効率のいい対策です。GNSSまわりの用語や仕組みをもう少し広く復習したい方は、測量士補試験の頻出用語集もチェックしてみてください。
他の年度・分野も通しで解くなら
このシリーズの前後の回:次の回は令和7年 測量士補【第2弾】No.5〜9 多角測量・GNSS測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。
今回のNo.1・No.2は法規、No.3は誤差論の計算、No.4は地球の形状及び位置の基準という構成でした。1年分だけを深く解くより、直近数年分を分野ごとに横断して解くほうが、毎年似たパターンで狙われる論点が見えやすくなるというのが編集部の実感です。今回のNo.4のように、令和7年と令和8年で同じ用語のすり替えが続けて出ることもあります。
年度別・分野別にまとまった問題を一覧から選びたい場合は、年度別の問題・解答と分野別の解き方をまとめた過去問ハブから探すのが早道です。何年分をどう周回すべきか迷っている方は、過去問の年数・周回の組み方を整理した記事もあわせて参考にしてください。
過去問を年度ごとに解き進めるなら、解説付きの過去問集が1冊あると、公式PDFだけでは分からない「なぜその選択肢が誤りなのか」を確認しやすくなります。
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法規と誤差の問題は、条文の言い回しや誤差の分類をあいまいに覚えていると、入れ替えのひっかけにそのまま掛かります。独学で不安が残るなら、講義で体系立てて覚え直すのも一つの方法です。編集部が比べた中では、過去7年分の過去問集と計算問題対策がそろっているアガルートが最初の候補になります。
まとめ:次に何をすべきか
今回扱ったNo.1・No.2は測量法・公共測量に関する用語と現場対応、No.3は誤差論の計算、No.4は地球の形状及び位置の基準に関する用語問題でした。法規・誤差論はどちらも「範囲や定義をわずかに入れ替える」ひっかけ方が共通しているので、条文や用語をばらばらに覚えるより、対になる概念をセットで整理したほうが得点につながりやすいはずです。独学で進めていて「用語の細かい違いで毎回間違える」「計算の型が定着しない」と感じている方は、価格とカリキュラムを比較してみるのも一つの選択肢です。
監修者・境さんより
No.4の標高・楕円体高・ジオイド高の入れ替えは、令和8年の問題を解いたときにも同じところで引っかかった記憶があります。何度整理しても、しばらく間が空くとまた逆に覚えていたりして、自分でも笑ってしまいます。仕入れの現場でジオイド高そのものを意識する場面はまずないんですが、地積測量図や高低差の資料を見たときに「この数値はどの基準から測ったものか」を一度立ち止まって確認する癖は、測量士補の勉強を始めてから明らかについてきたなと感じています。仕入れ営業の実務にどうつながるかは、仕入れ営業シリーズのハブ記事にまとめています。
過去問演習を進める中で「自分の弱点分野が分からない」「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」という方は、以下もあわせて参考にしてください。
- 測量士補とは?受験資格・試験概要 完全ガイドを見る
- 測量士補の難易度・合格率8年推移を確認する
- 令和8年No.4〜7(測量の基準・多角測量)の解説を読む
- 講座選びで迷ったら3社の比較ページへ
なお、令和7年試験のNo.5以降を扱う解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。
出典・参考情報(2026年9月26日確認)
- 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )※令和7年5月18日実施分の受験者数・合格者数・合格率を掲載
- 国土地理院「令和7年測量士補試験問題1」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000270177.pdf )
- 国土地理院「令和7年測量士補試験問題2」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000270178.pdf )
- 国土地理院「令和7年測量士補試験解答一覧」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000270180.pdf )
※本記事の問題要約・解説は編集部が上記の公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現・図表は国土地理院の公式PDFを必ずご確認ください。測量法の条文の引用は、公表されている条文情報と問題文・公式解答の整合が取れる範囲でまとめています。







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