トラバース測量の計算を例題で解説|方向角・緯距経距・閉合比の求め方

測量士補

結論から先に言うと
トラバース測量(多角測量)の計算は、①方向角を前の測線から順に求める、②方向角と距離から緯距・経距を出す、③それを積み上げて座標を求める、④出発点に戻ってきたときのズレ(閉合誤差)を閉合比で評価し、コンパス法則で配分する、という4つの手順の繰り返しです。手順自体はシンプルですが、360°の調整や符号の扱いでつまずく人が多い分野でもあります。本記事では編集部オリジナルの例題を使い、すべての数値をPythonで検算したうえで途中式を省略せずに解説します。計算問題全体の位置づけは計算問題パターン・公式一覧、演習量に不安がある方は比較ページで通信講座のカリキュラムも確認してみてください。

計算問題の演習量で迷ったら比較ページへ

本記事の情報について
本記事の例題は、測量士補試験の出題形式を参考に編集部が独自に作成したオリジナル問題です。実際の過去問ではありません。数値・計算過程はすべてPythonで検算し、本文の記述と一致させています。公式の考え方は国土地理院・日本測量協会が公表する資料に基づいています(出典は末尾に記載)。


1. トラバース測量とは:座標系と方向角のおさらい

トラバース測量(多角測量)は、既知点から次々と測点をつないでいき、各測線の距離と角度を観測しながら新しい点の座標を求めていく測量方法です。基準点測量の中でも出題頻度が高く、測量士補試験の計算問題パターン・公式一覧の「パターン1」として概要を紹介しましたが、本記事ではその中身を例題つきで一段階深く掘り下げます。

まず前提となる座標系を確認しておきます。測量の世界では、X軸を南北方向(北が正)、Y軸を東西方向(東が正)に取るのが決まりです。日常の数学で使うX-Y軸(Xが横、Yが縦)とは逆になっているので、ここで混乱する受験者は少なくありません。最初に「測量のXは縦(南北)、Yは横(東西)」と割り切って覚えてしまうのが早道です。系の考え方や測地系との関係は平面直角座標系と測地系の解説にまとめています。

方向角はX軸(座標北)から時計回りに測った角度

もう一つの前提が「方向角」です。方向角とは、平面直角座標系のX軸の正の向き(座標北)を基準(0°)として、時計回りに測った角度のことで、0°から360°未満の値を取ります。似た言葉の「方位角」は真北を基準にした角度で、両者の差を子午線収差といいます。試験ではこの区別そのものが問われることもあるので、混同しないようにしましょう。方向角がわかれば、その測線が地図上でどちらを向いているかが一意に決まります。


2. 方向角の計算ルール:前の方向角+180°±観測角

トラバース測量では、すべての測線の方向角を最初から個別に測るわけではありません。実際に現場で観測するのは、各測点で「前の測線」と「次の測線」の間にできる角度(夾角)です。この夾角と、直前の測線の方向角から、次の測線の方向角を求めていきます。基本の式は次のとおりです。

次の測線の方向角 = 前の測線の方向角 + 180° − 観測した夾角(進行方向の右側の角)

なぜ180°を足すのかというと、測点に立って「後ろを振り返った方向」(後視方向)は、前の測線の方向角からちょうど180°反対を向いているからです。そこから夾角の分だけ反時計回りに戻すと、次の測線の方向が求まります(夾角を進行方向の右側で測っている場合。左側で測った夾角なら、180°を足したあとに夾角を足します)。計算した結果が0°未満になったら360°を足し、360°以上になったら360°を引いて、必ず0°〜360°未満の範囲に収めます。

言葉だけだと分かりにくいので、3つのパターンで確認してみましょう。

(a) そのまま計算できる場合
前の方向角が100°00’00″、観測した夾角が150°30’20″のとき、

100°00'00" + 180° − 150°30'20" = 129°29'40"

そのまま範囲内に収まるので、この129°29’40″が次の測線の方向角です。

(b) 360°を超える場合
前の方向角が250°00’00″、観測した夾角が60°20’00″のとき、

250°00'00" + 180° − 60°20'00" = 369°40'00"

360°を超えているので360°を引き、次の測線の方向角は9°40’00″になります。

(c) 負の値になる場合
前の方向角が30°00’00″、観測した夾角が250°00’00″(180°を超える優角の側で観測したケース)のとき、

30°00'00" + 180° − 250°00'00" = −40°00'00"

マイナスになったら360°を足し、次の測線の方向角は320°00’00″です。

この(a)〜(c)の3パターンさえ体に染み込ませておけば、測点の数がいくつに増えても機械的に処理できます。


3. 緯距・経距の求め方

方向角と距離が分かれば、その測線を南北成分(緯距)・東西成分(経距)に分解できます。式は次のとおりです。

緯距 = 距離 × cos(方向角)
経距 = 距離 × sin(方向角)

これは方向角と距離で表された斜めの線分を、直角座標に分解しているだけの話です。方向角が0°(真北)に近ければ緯距が大きく経距は小さく、90°(真東)に近づくほど逆になります。新しい点の座標は、直前の点の座標に緯距・経距をそのまま足していけば求まります。

新点のX座標 = 既知点のX座標 + 緯距
新点のY座標 = 既知点のY座標 + 経距

記号と式の立て方は計算問題パターン・公式一覧の「パターン1」と揃えているので、あわせて読むと理解が早いはずです。


4. 例題1:方向角から緯距・経距までひと通り計算する

実際に、先ほどの(a)のケースを最後まで計算してみます。

問題:測線ABの方向角が100°00’00″、B点で観測した夾角(右回り)が150°30’20″、測線BCの距離が45.680mのとき、測線BCの方向角と緯距・経距を求めよ。

計算

方向角BC = 100°00’00” + 180° − 150°30’20” = 129°29’40”

緯距BC = 45.680 × cos(129°29'40") = −29.053 m
経距BC = 45.680 × sin(129°29'40") = 35.251 m

緯距がマイナスというのは、B点からC点に向かって南側に29.053m進んだことを意味します。経距がプラスなので東側には35.251m進んでいます。方向角が90°〜180°の範囲(南東方向)にある測線は、この「緯距マイナス・経距プラス」という符号のパターンになる、と覚えておくと検算のときに符号ミスへ気づきやすくなります。


5. 例題2:閉合トラバースを一気に解く

ここからが本題です。出発点に戻ってくる「閉合トラバース」を例に、観測データの整理から座標の確定まで、実際の解答手順をすべて追ってみます。

問題設定:四角形の閉合トラバースA→B→C→D→Aで、既知点Aの座標を(X=1000.000, Y=1000.000)、測線ABの方向角を45°10’00″とする。各点で観測した夾角(内角、右回り)と、各測線の距離は次の表のとおり。

測点 観測した夾角 測線 距離(m)
B 90°00’10” AB 122.50
C 89°59’50” BC 96.30
D 90°00’00” CD 122.38
A 89°59’40” DA 96.15

例題の閉合トラバースA→B→C→D→A。各測線の距離と補正後の方向角

5-1. 角の閉合差を確認し、観測角を補正する

四角形の内角の合計は、幾何学的に必ず360°になります。まず観測した4つの夾角を合計してみましょう。

90°00'10" + 89°59'50" + 90°00'00" + 89°59'40" = 359°59'40"

理論値の360°00’00″に対して20秒不足しています。このズレを「角の閉合差」と呼びます。器械や読み取りの精度上、この程度の誤差は必ず生じるもので、ゼロにはなりません。処理としては、不足分の20秒を観測した角の数(4か所)で均等に割り、1か所あたり+5秒ずつ配分して補正します。

測点 観測角 補正量 補正後の角
B 90°00’10” +5″ 90°00’15”
C 89°59’50” +5″ 89°59’55”
D 90°00’00” +5″ 90°00’05”
A 89°59’40” +5″ 89°59’45”

補正後の合計は90°00’15″+89°59’55″+90°00’05″+89°59’45″=360°00’00″となり、理論値とぴったり一致します。以降の計算は、この補正後の角を使って進めます。

5-2. 補正後の角から各測線の方向角を求める

第2章のルールをそのまま当てはめていきます。

方向角BC = 45°10'00" + 180° − 90°00'15" = 135°09'45"
方向角CD = 135°09'45" + 180° − 89°59'55" = 225°09'50"
方向角DA = 225°09'50" + 180° − 90°00'05" = 315°09'45"

最後にA点まで戻ってきたときの方向角を検算してみます。

方向角AB(検算) = 315°09'45" + 180° − 89°59'45" = 405°10'00"

360°を超えているので360°を引き、405°10’00” − 360° = 45°10’00″。これは最初に与えられた測線ABの方向角と完全に一致します。角の計算そのものに転記ミスや計算ミスがなかったことが、この一致によって確認できるわけです。

5-3. 緯距・経距を計算し、閉合誤差を求める

方向角が出そろったので、各測線の緯距・経距を計算します。

測線 距離(m) 方向角 緯距(m) 経距(m)
AB 122.50 45°10’00” +86.368 +86.872
BC 96.30 135°09’45” −68.287 +67.901
CD 122.38 225°09’50” −86.288 −86.783
DA 96.15 315°09’45” +68.181 −67.795
合計 437.33 ー −0.026 +0.195

理論上、閉合トラバースは出発点に戻ってくるので、緯距の合計・経距の合計はどちらもゼロになるはずです。しかし実際には距離観測にもわずかな誤差が乗るため、合計はゼロにぴたりとは一致せず、ここでは緯距が−0.026m、経距が+0.195mだけズレました。このズレを2辺とする直角三角形の斜辺の長さが、閉合誤差です。

閉合誤差 E = √{(Σ緯距)² + (Σ経距)²} = √{(−0.026)² + (0.195)²} = 0.197 m

閉合誤差は、Σ緯距−0.026mとΣ経距+0.195mを2辺とする直角三角形の斜辺で約0.197m

さらに、この閉合誤差を全測線の距離の合計(周長)で割った値が閉合比です。

閉合比 = 周長 ÷ 閉合誤差 = 437.33 ÷ 0.19677 ≒ 2,223(E を丸める前の値で割っています)

閉合比は「1:2,223」のように、分母を求める形で表現するのが一般的です。分母の数字が大きいほど、測量の精度が高いことを意味します。許容される閉合比の基準値は、測量の等級によって作業規程の準則で定められています。試験問題では許容値があらかじめ与えられていることが多いので、たとえばこの例題で許容閉合比が1:2,000と指定されていたとすれば、計算結果の1:2,223は許容値を上回っており、精度の基準を満たしていると判断できます。

5-4. コンパス法則で誤差を配分する

閉合誤差が許容範囲に収まっていることを確認したら、次はこの誤差を各測線に配分して、緯距・経距の合計をきっちりゼロにそろえます。配分の方法として測量士補試験でよく扱われるのが「コンパス法則」で、各測線の距離に比例させて誤差を配分する考え方です。

測線の緯距補正量 = −(Σ緯距) × (その測線の距離 ÷ 周長)
測線の経距補正量 = −(Σ経距) × (その測線の距離 ÷ 周長)

距離が長い測線ほど誤差が乗りやすいはずだ、という発想に基づく配分方法です。実際に計算すると、次のようになります。

測線 距離(m) 緯距補正量 経距補正量 補正後の緯距 補正後の経距
AB 122.50 +0.007 −0.055 +86.375 +86.817
BC 96.30 +0.006 −0.043 −68.281 +67.858
CD 122.38 +0.007 −0.054 −86.281 −86.837
DA 96.15 +0.006 −0.043 +68.187 −67.838

補正後の緯距・経距をそれぞれ合計すると、どちらもぴったりゼロになります。なお、補正量を小数第3位で丸めると合計が1mmずれることがあるので、その場合は丸めの影響が一番大きい測線で1mm調整して、補正量の合計を誤差と一致させます(この例ではCDの経距補正量を−0.055ではなく−0.054にしています)。この補正後の数値を使って、次の座標計算に進みます。

5-5. 各点の座標を確定する

補正後の緯距・経距を、A点の座標(1000.000, 1000.000)に順番に足し込んでいきます。

B = A + (AB補正後の緯距・経距) = (1000.000+86.375, 1000.000+86.817) = (1086.375, 1086.817)
C = B + (BC補正後の緯距・経距) = (1086.375−68.281, 1086.817+67.858) = (1018.094, 1154.675)
D = C + (CD補正後の緯距・経距) = (1018.094−86.281, 1154.675−86.837) = (931.813, 1067.838)
A(検算) = D + (DA補正後の緯距・経距) = (931.813+68.187, 1067.838−67.838) = (1000.000, 1000.000)

最後にA点まで戻ってきたときの座標が、出発点の(1000.000, 1000.000)にきっちり一致しました。これがコンパス法則で誤差配分をする最大の目的です。観測にはどうしても小さな誤差が乗りますが、配分によって帳尻を合わせ、閉合トラバース全体として矛盾のない座標セットに仕上げる、という流れになります。



測量士補試験の計算問題パターン・公式一覧【保存版】
測量士補試験の計算問題パターン・公式一覧【保存版】

6. 電卓が使えない試験で、この計算をどう解くか

ここまでの計算、√を含む閉合誤差の算出や三角関数の値の読み取りなど、正直なところ手計算だとかなりの負担です。しかし測量士補試験では電卓の持ち込みが一切認められておらず、sin・cos・tanの値は巻末の関数表から読み取り、開平計算(ルートの計算)も筆算で行う必要があります。トラバース計算はこの制約と真正面からぶつかる分野だと言っていいでしょう。

対策として有効なのは、まず関数表の見方に早いうちから慣れておくことです。角度から関数値を引く、あるいは関数値から角度を逆引きする、という往復の操作をスムーズにできるかどうかで、本番の解答スピードはかなり変わってきます。加えて、開平計算のやり方(概算の当たりをつけてから筆算で追い込む方法)も、一度身につけてしまえば時間の短縮につながります。この試験の電卓事情や、演習向けの関数電卓の選び方は、測量士補のおすすめテキスト・過去問集の記事でも扱っているので参考にしてください。演習の終盤は電卓なしに切り替えて仕上げる、という考え方はそちらの記事にも書いたとおりです。

実際に過去問でどんな形でトラバース計算が出題されるかは、令和8年 測量士補試験 過去問解説のシリーズでも順次扱っていく予定です。公式を覚えるだけでなく、本番形式の問題でどこに時間がかかるかを体感しておくと、当日の時間配分がぐっと立てやすくなります。独学でひととおり基礎を固めたい方は独学での勉強法とスケジュールの記事もあわせてどうぞ。



令和8年 測量士補試験 過去問解説【第1弾】No.1〜No.3
令和8年 測量士補試験 過去問解説【第1弾】No.1〜No.3

本番形式でトラバース計算の演習量を増やしたい場合は、過去問をまとめて解ける過去問集を1冊用意しておくと、電卓なしの手計算の練習にもそのまま使えます。

※ここから先の商品リンクは広告(アフィリエイトリンク)です。価格・在庫はリンク先でご確認ください。

測量士補 過去問280 令和9年度版
測量士補 過去問280 令和9年度版建築資料研究社/日建学院Amazonで見る楽天市場で見る

自力で計算過程を組み立てる練習を重ねても、どうしても分野ごとの理解にムラが出るのは自然なことです。トラバース計算だけ何度やっても符号を間違える、時間内に解ききれない、という壁にぶつかったときは、講義で解き方の型を見てから演習するやり方も選択肢になります。カリキュラムの内容は比較ページで確認してみてください。

計算問題の講義があるか比較ページでチェックする


7. 監修者・境さんのコメント

境さんは、閉合誤差や閉合比という言葉は、このジャンルの勉強を始めるまで聞いたことがなかったという。ただ、緯距・経距という考え方は、地積測量図の座標値を見るときの感覚に近い。これまで測量図の数字を「座標が並んでいる」としか見ていなかったが、この計算を追うと、座標の一つひとつが測線の積み重ねでできていると分かってきた。とはいえ、コンパス法則の配分計算まで手で追うのは骨が折れ、試験本番でこの精度を毎回出せる自信はまだない。ここは演習量を積むしかないと考えている。


8. まとめ

トラバース測量の計算は、方向角を順番に求め、緯距・経距に分解し、座標として積み上げ、最後に閉合誤差を評価して配分する、という一連の流れです。個々の公式は単純でも、360°の調整・符号の扱い・角の閉合差の補正という3つの「地味な手間」でつまずく受験者が多い分野でもあります。本記事の例題を自分の手でもう一度計算し直してみると、どこで詰まりやすいかが見えてくるはずです。

計算問題全体の見取り図は計算問題パターン・公式一覧に戻って確認できます。トラバース計算で特に苦手意識が強い、独学だと答え合わせの精度が不安、という場合は、講座のカリキュラムを比較してみるのも一つの手です。

3社の計算対策を比較ページで見比べる


出典・参考情報(2026年9月26日確認)

本記事の例題は編集部が独自に作成したオリジナル問題であり、実際の過去問ではありません。数値と計算過程はすべてPythonで検算し、本文の記述と一致させています。方向角・緯距経距・閉合誤差・コンパス法則の考え方は、以下の公的機関・専門団体の資料が示す一般的な測量計算の枠組みに基づいています。

  • 国土地理院「作業規程の準則」(https://www.gsi.go.jp/gijyutukanri/gijyutukanri41018.html )
  • 日本測量協会「計算式集 付録6-作業規程の準則-」(https://www.jsurvey.jp/huroku6.pdf )

※閉合比の許容値は、基準点測量の等級(1級〜4級など)や測量方式によって作業規程の準則で個別に定められています。本記事の例題における「許容閉合比1:2,000」は説明のために仮に置いた数値であり、実際の等級ごとの基準値ではありません。本番の問題を解く際は、必ず問題文に示された条件・数値を優先してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました