地図編集と地図投影とは?転位・総描・取捨選択、UTM図法と平面直角座標系の違い、縮尺の計算を例題で整理

測量士補

結論から先に言うと
地図編集の問題は、地図は「現実をそのまま縮めたもの」ではなく、見やすさのために取捨選択・総描・転位をした表現だと理解しているかを問う分野です。ここさえ押さえれば、令和8年のNo.22・No.23のような文章問題は、暗記より考え方で消去できます。この記事では、編集の考え方、地図投影法(UTM図法と平面直角座標系)、縮尺の計算、図式の原則を一通り整理しました。投影法のうち平面直角座標系の細かい話は、別の記事に分けてあります(第3節でリンクします)。

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測量士補試験の午後の後半、No.21〜24あたりに並ぶのが「地図編集」の問題だ。計算がほとんど出ない代わりに、文章の正誤を見分ける力と、地図記号・座標系の定義を問われる。過去問を解いていると、「覚える量は多くないのに、なぜか迷う」と感じる人が多い分野でもある。

迷う原因の多くは、地図編集の考え方を一度も言葉にしていないことにある。だからこの記事では、先に考え方を整理してから、投影法、縮尺の計算、図式へと進む。最後に、不動産の仕入れで地図を見る立場から、地図の線や記号をそのまま境界の根拠にしてはいけない理由を一般論として書いた。

本記事の情報について
条文・図式・過去問は、国土地理院が公表している資料を実際に開いて確かめたものだけを使っています(2026年10月31日確認、出典は末尾)。縮尺の例題は編集部が作ったオリジナルで、実在の地図や案件ではありません。数値はすべてPythonで計算して検算しました。令和8年の問題は、公表されている正解と一致することを確かめています。なお、UTM図法の中央経線上の縮尺係数の値は、国土地理院の資料では確認できなかったため、この記事では数値を載せていません。


1. 地図編集の分野で何が問われるか

令和8年(2026年)の測量士補試験では、No.21〜24の4問が地図まわりの出題だった。国土地理院が公表した問題を開いて確かめると、中身は次のとおり。

問 題材 問われ方 正解
No.21 電子地形図25000(藤沢市付近)の読図 図に表現された内容として明らかに間違っているものを選ぶ 4
No.22 地図投影法(平面直角座標系・UTM図法・正距図法) a〜eのうち明らかに間違っているものだけの組合せを選ぶ 2
No.23 地図編集の原則 1〜5のうち明らかに間違っているものを選ぶ 5
No.24 GIS(ベクタデータの活用) 空欄補充 1

(問題は国土地理院「令和8年測量士補試験問題」、正解は同「令和8年測量士補試験解答」による。)

どれも「明らかに間違っているもの」を選ぶ形で、計算はない。つまり、正しい記述を全部覚えていなくても、1つ「これは違う」と言い切れる軸があれば解ける。その軸になるのが、次の節で整理する編集の考え方と、投影法の定義だ。

No.24のGISは分野が隣り合っているので、ベクタとラスタ、地図情報レベルの話はGIS(地理情報システム)の解説記事に任せる。この記事ではGISの中身には踏み込まない。


2. 地図編集の考え方:取捨選択・総描・転位

地図編集とは何をする作業か

作業規程の準則(令和7年4月1日施行分までの附則を含む全文)の第331条は、「地図編集」を次のように定めている。既成の数値地形図データを基に、編集資料を参考にして、必要とする表現事項を定められた方法で編集し、新たな数値地形図データ(編集原図データ)を作る作業、という内容だ。

ここで押さえたいのは、地図編集が「現地を新しく測る作業」ではないこと。すでにある地図のデータを材料に、目的の縮尺で見やすく作り直す作業になる。だから、元になる地図(基図データ)の質が大事で、準則の第332条は基図データについて次のように定めている。

  • 内容が新しく、かつ必要な精度を持つこと
  • 編集原図データの地図情報レベルと同等か、それより小さい地図情報レベルのものであること

「地図情報レベルが小さい」とは、250・500・1000・2500…と数字が小さいほど縮尺が大きい(詳しい)地図という意味だ(準則第105条の表で、地図情報レベル500の相当縮尺が1/500、2500が1/2,500とされている)。つまり基図は、作る地図と同じか、それより詳しい地図を使う。令和8年No.23の選択肢2「編集の基となる地図の縮尺は、新たに作成する地図の縮尺と同じかより大きいものとする」は、この考え方に合う記述で、正しい。

細部をつぶして小さな地図を作ることはできても、粗い地図を拡大して詳しい地図にすることはできない、と考えると覚えやすい。

編集そのものは第341条に出てくる。編集原稿データを、付録7(公共測量標準図式)に基づいて「適切に取捨選択、総合描示等の編集を行い」編集原図データを作る、とある。取捨選択と総合描示(総描)が、地図編集の中心作業という位置づけだ。注記(文字)の位置・字大・字隔を決めるのも、この工程に含まれる。

取捨選択:何を描いて、何を描かないか

縮尺が小さくなるほど、紙面(画面)に描ける量は減る。そこで、何を残して何を省くかを決める。これが取捨選択だ。

国土地理院は、地理院地図の「利用上の注意(位置精度等について)」で、この考え方をはっきり述べている。地図は現実世界のすべての地物や地名を表示したものではなく、利用目的や縮尺に応じて、表示項目の取捨選択や地図の見やすさを考慮した表現を行っている、という説明だ。たとえば鉄道は、上り線と下り線をまとめて1本の線で表し、地下街や上下水道の施設は表示していない。

2万5千分1地形図の図式(表示基準)でも、第6条第1項に「表示事項は、地形図への表示を考慮して、適切に取捨選択する」とある。

試験でのポイントは、令和8年No.23の選択肢3にあるとおり、取捨選択は地図の目的を考えて行い、重要度の高いものは省略しないという原則だ。

総描:細かい形をまとめて描く

総描(総合描示)は、細かい対象をそのまま描かず、まとめたり簡略にしたりして描くことをいう。地形図の図式には、たとえば陸部の地形について「地形の細部については、適宜、総合又は修飾して表示することができる」(2万5千分1地形図図式 第48条)という規定がある。

なお、「総描」という語は、電子地形図20万図式(表示基準)の第7条の見出し(取捨選択・総描・転位)にも出てくる。ただ、私が開いた資料のなかで、総描の定義そのものを一文で書いたものは見つけられなかった。ここで書いた「まとめて簡略に描く」という説明は編集部の言葉で、条文の定義の引用ではない。

試験では、令和8年No.23の選択肢4にあたる内容がこれに近い。現地の形状との相似性を保ち、形状の特徴を失わないようにすれば、形状を多少修飾してよい。修飾してよいが、特徴まで失ってはいけない、というのが線引きだ。

転位:重なったものをずらして描く

縮尺が小さい地図では、道路と鉄道、建物が近接して、そのまま描くと記号どうしが重なって読めなくなる。そこで、一方を本来の位置から動かして描く。これが転位だ。

2万5千分1地形図図式の第8条は、転位を厳しく縛っている。

  • 転位してよいのは「やむを得ない場合に限り」、必要最小限
  • 転位しても、形状や関係位置が現況と著しく異なってはいけない
  • 動かす量は図上0.5mm以内。やむを得ない場合に限り図上1.2mmまで

そして転位の優先順位は、次のように書かれている。

電子基準点・三角点 > 海岸線・1条河川 > 道路 > 鉄道 > 2条河川 > 建物・構造物等の人工物 > 崖等自然物 > 植生 > 行政界・注記等の無形物

左ほど真の位置を守る対象で、右にいくほど先に動かされる対象と読める(この読み方は、電子地形図20万図式の第7条第2項が「転位は、注記、建物記号、道路・鉄道…の順に優先して行う」「測量の基準点及び海岸線、河川等の自然物については行わない」としていることとも一致する)。

つまり、有形物(河川・道路など)より先に、無形物(注記・行政界など)を動かす。これが令和8年No.23の正解、選択肢5「有形物と無形物とが近接し、どちらかを転位する場合は有形物を転位する」が間違っている理由だ。

図上0.5mmは、現地で何メートルか

転位の量が「図上」の長さで決まっている点に注意したい。縮尺1/25,000なら、図上0.5mmは0.0005 m × 25,000 = 12.5 m、図上1.2mmは30 mになる(Pythonで確認)。

縮尺が大きい図ほど、同じ図上0.5mmが現地では短くなる。1/5,000なら2.5 m、1/2,500なら1.25 mだ。この「図上で決まる量が、縮尺で現地の長さに変わる」という感覚は、次の縮尺の計算でそのまま使う。



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3. 地図投影法:UTM図法と平面直角座標系の違い

地球は平らにできない

地図投影とは、曲がった地球の表面を平面に写す方法のことだ。球(実際は楕円体)を平面に写す以上、角度・距離・面積のすべてを同時に正しく保つことはできない。だから、何を正しく残す図法なのかで性格が決まる。

令和8年No.22の選択肢eは「正距図法は、全ての地点間の距離を同一の縮尺で表示することができる」だった。これは間違いで、正解は「a、e」(選択肢2)になっている。全地点間の距離を同じ縮尺にできるなら、地球儀の代わりに1枚の平面地図で足りてしまう。この原理的な無理を思い出せるかが、消去の決め手になる。

UTM図法(ユニバーサル横メルカトル図法)

2万5千分1地形図図式の第10条は、「地形図の投影法は、ユニバーサル横メルカトル図法とする」と定めている。

令和8年No.22の選択肢では、次のことが「正しい」記述として扱われている(正解がa、eなので、b・c・dは正しい)。

  • UTM図法は、北緯84°以南、南緯80°以北の地域に適用され、経度差6°ごとの範囲が一つの平面に投影されている(選択肢c)
  • UTM図法で用いられている投影法は、横円筒図法の一種であるガウス・クリューゲル図法である(選択肢d)
  • 平面直角座標系の座標系原点は赤道上にない(選択肢b)

平面直角座標系

もう一方の平面直角座標系は、国土交通省告示(平成14年第9号)で定められている。国土地理院の掲載ページ(告示の備考欄)によれば、次のとおり。

  • X軸は、座標系原点において子午線に一致する軸とし、真北に向かう値を正とする
  • Y軸は、座標系原点においてX軸に直交する軸とし、真東に向かう値を正とする
  • 座標系のX軸上における縮尺係数は0.9999とする
  • 原点の座標値はX=0.000 m、Y=0.000 m

令和8年No.22の選択肢aは「X軸は、座標系原点において子午線に直交する軸とし、真東に向かう方向を正としている」で、XとYの説明を入れ替えた誤りだ。X軸が南北、Y軸が東西。数学の座標とは軸の向きが逆になっている、と覚えておくと取り違えにくい。

19の系の区割りや、X軸が北向きであることから生じる読み間違いは、平面直角座標系と測地系の記事で詳しく扱っている。

2つの座標系を並べる

項目 UTM図法(UTM座標系) 平面直角座標系
主な使いどころ 2万5千分1・5万分1地形図など(上の表) 公共測量の位置の表示(準則第2条)、国土基本図など
区分け 経度差6°ごとの範囲 日本を19の系に分け、各系に原点を置く
適用する地域 北緯84°以南、南緯80°以北 原点から東西約130km以内を適用範囲とする
X軸・北方向 (この記事では扱わない) X軸が真北、Y軸が真東

準則の第2条は、公共測量では、特別の事情がある場合を除き、位置を平面直角座標系に規定する世界測地系に従う直角座標と、日本水準原点を基準とする標高で表示する、としている。公共測量の成果の座標と、市販の地形図の座標が別の系統になっているのは、こうした使い分けがあるからだ。

縮尺係数とは何か

平面に投影すると、地球上の長さと平面上の長さが一致しなくなる。その比が縮尺係数だ(平面上の距離 ÷ 元の距離)。

平面直角座標系では、座標原点を通る子午線上(X軸上)の縮尺係数を0.9999にしている。国土地理院「日本の測地系」のページは、その理由を次のように説明している。原点から東西に離れるほど平面上の距離が大きくなるので、あらかじめ原点の線上を少し縮めておき、投影距離の誤差を相対的に1万分の1以内に収める。その結果、座標原点から東西約130km以内が適用範囲になっている。

この関係を、横メルカトル図法の標準的な近似式で概算してみた。原点から東西にx km離れた点の縮尺係数を k = 0.9999 ×(1 + x²÷2R²)とし、地球半径をR=6,370 kmとすると、次のようになる(Pythonで計算。この近似式と半径は編集部の概算で、国土地理院の資料から引いたものではない)。

原点からの東西距離 縮尺係数 k 地上1,000 mが平面上で
0 km 0.999900 999.900 m
30 km 0.999911 999.911 m
60 km 0.999944 999.944 m
約90 km 1.000000 1,000.000 m
130 km 1.000108 1,000.108 m

原点では1万分の1だけ縮み、約90km付近でちょうど縮尺係数が1になり、130kmでは逆に1万分の1ほど伸びる。縮み側と伸び側にそれぞれ約1万分の1ずつ振り分けて、誤差の最大値を小さく抑えているのが、縮尺係数0.9999の意味だ。

例題:平面上の距離を元の距離に直す

平面直角座標系で2点の座標から求めた平面上の距離が1,500.000 m。この2点付近の縮尺係数が0.99995のとき、元の(楕円体上の)距離はいくらか。

縮尺係数は「平面上の距離 ÷ 元の距離」なので、元の距離 = 1,500.000 ÷ 0.99995 = 1,500.075 mになる(Pythonで検算)。平面上の距離より7.5cm長い。ここで掛けるか割るかを間違えるのが、いちばん多いミスだ。「縮尺係数は1より小さいと平面が縮んでいる。縮んだ分を戻すから割る」と覚えておけば迷わない。

UTM図法のほうにも中央経線上の縮尺係数が定められているが、冒頭に書いたとおり、その値を国土地理院の資料で確認できなかったので、ここには書かない。試験対策としては、令和8年No.22で問われた「経度差6°ごと」「北緯84°以南・南緯80°以北」「ガウス・クリューゲル図法」の3点を先に押さえるほうが優先度が高い。


4. 縮尺と、図上距離・実距離の計算

基本は「縮尺の分母を掛ける」

縮尺1/25,000とは、図上の長さが実際の長さの25,000分の1ということ。図上の長さに25,000を掛ければ実距離が出る。単位をそろえる作業さえ丁寧にやれば、難しい計算ではない。

例題1(図上→実距離):縮尺1/25,000の地形図上で2点間が4.2 cm。実距離は?
4.2 cm × 25,000 = 105,000 cm = 1,050 m(Pythonで検算)

例題2(実距離→図上):実距離1.35 kmを1/25,000の地形図に描くと、図上で何cmか。
1,350 m ÷ 25,000 = 0.054 m = 5.4 cm

例題3(縮尺の逆算):図上8 cmの2点が、実際には2 kmだった。縮尺は?
2,000 m ÷ 0.08 m = 25,000、つまり1/25,000。

面積は2乗でかかる

見落としやすいのが面積だ。長さが25,000倍なら、面積は25,000の2乗倍になる。

例題4(図上面積→実面積):縮尺1/25,000の地形図上で12 cm²の範囲は、実際には何haか。
図上1 cm²は、1 cm = 250 mなので250 m × 250 m = 62,500 m²。12 cm² × 62,500 = 750,000 m² = 75 ha(Pythonで検算)。

長さの縮尺をそのまま面積に使って「12 × 25,000」としてしまうのが典型的なミスだ。答えが桁違いに大きくなるので、結果を見て「地形図1枚分より広いのでは」と気づける。

縮尺を変えたときの図上距離

縮尺が小さくなる(分母が大きくなる)と、同じ実距離は図上で短くなる。1/25,000で3.6 cmの区間を1/50,000で描くと、3.6 ÷ 2 = 1.8 cm。縮尺の分母が2倍になれば、長さは半分、面積は4分の1だ。

地図情報レベルで見た精度の目安

準則第105条の表では、地図情報レベル500の水平位置の標準偏差は0.25 m以内、2500は1.75 m以内とされている。これを図上の長さに直すと、0.25 m ÷ 500 = 0.5 mm、1.75 m ÷ 2,500 = 0.7 mmだ。縮尺が違っても、図上では0.5〜0.7mm程度のずれに収まる設計になっているとわかる(Pythonで計算した値)。

「実際のずれ」ではなく「図上の長さ」で精度や転位量が決まる、という発想は、先ほどの転位の話と同じ構造をしている。


5. 地形図の図式:記号と注記の原則

図式は、地図記号や注記の書き方を決めたルール集だ。準則第107条は、数値地形図データの図式を目的と地図情報レベルに応じて適切に定めるとし、地図情報レベル500から5000までは付録7(公共測量標準図式)を標準とする。今回、私が開けたのは2万5千分1地形図図式と電子地形図20万図式で、付録7は準則の全文PDFに含まれておらず、中身を確認できなかった。そのため、この節は2万5千分1地形図図式(令和8年3月30日改正の達を含む)の条文だけで書く。

記号の重なりと、位置の基準

  • 記号が重複する場合は、それぞれを重ねて表示する。ただし立体関係にある場合は、下方のものを間断するなどして表示する(第7条)
  • 道路・鉄道・建物が近接する場合は、記号を接するか、現況と著しく異ならない程度に離して表示する(同)
  • 基準点等の記号は、記号の重心を真位置に表示する(第13条)。電子基準点・三角点は、転位の優先順位でも最上位だった

注記の原則

  • 標高値を持たないものを除き、基準点等の記号には標高値を注記する(第14条)
  • 電子基準点・三角点・水準点・現地測量による標高点の数値は、メートル以下小数点第1位まで表示する(同)

令和8年No.23の選択肢1の「注記」は、文字または数値による表示で、地域・人工物・自然物の固有名称、特定の記号のないものの名称、標高、等高線数値などに用いる、とされていた。この記述は図式の考え方と整合していて、正しい。

等高線の原則

  • 等高線は標高の等しい点を結んだ曲線で、原則として転位しない(第49条)。ただし、道路などの地物が急傾斜になるなど、地形と地物の関係を著しく損なう場合には転位できる
  • 主曲線は平均海面から10 mごと、計曲線は50 mごとの等高線(第51条)
  • 等高線の数値は、主として計曲線・補助曲線・凹地を示す等高線に表示する(第50条)

等高線を「動かさない側」に置いているのは、地形は一度動かすと、その標高の意味が崩れてしまうからだろう。転位の優先順位で、道路や建物が動いて、地形が最後まで守られるのも同じ理由だと考えると、ルール全体がつながって見える。

読図問題の考え方

令和8年No.21は、藤沢市付近の電子地形図25000の一部を見て、5つの記述から明らかに間違っているものを探す問題だった。凡例は付かない。国土地理院の公表正解は選択肢4(「税務署は裁判所の北側に位置している」)になっている。

読図は、選択肢ごとに「図のどこを見れば確かめられるか」を決めてから探すと早い。方角は上が北、距離は図の下の縮尺バー(0・500・1,000 m)を定規代わりにする、という2つの型がある。図そのものはここに載せない(著作権への配慮)。個別の記述の確認手順は、令和8年 測量士補 過去問解説【第6弾】No.21〜24 地図編集で図を見ながら整理している。


6. 令和8年の問題を「考え方」で解く

最後に、ここまでの内容で、令和8年のNo.22・No.23を解いてみる。いずれも公表正解と一致することを確かめた。

No.22(地図投影法)正解:2(a、e)
– a:X軸を真東、軸を子午線に直交とした記述。X軸は子午線に一致して真北が正なので、誤り
– b:平面直角座標系の座標系原点は赤道上にない。正しい
– c:UTMは北緯84°以南・南緯80°以北、経度差6°ごと。正しい
– d:UTMで用いる投影法は、横円筒図法の一種であるガウス・クリューゲル図法。正しい
– e:正距図法でも、全地点間の距離を同一縮尺で表すことはできない。誤り

No.23(地図編集の原則)正解:5
– 5の「有形物を転位する」は、無形物(注記・行政界)を先に動かす原則と逆なので誤り
– 1(注記の定義)、2(基図の縮尺は作る地図と同じかより大きい)、3(取捨選択は目的を考え、重要度の高い対象を省略しない)、4(相似性を保ち特徴を失わなければ形状を多少修飾できる)は、いずれもこの記事で触れた考え方に沿っていて、正しい

どちらも、数字を暗記していなくても、「地図は動かしてよいものとダメなものを区別して作られている」「軸と図法の定義」を押さえていれば消去できる。逆に、定義を取り違えたまま「なんとなく」で選ぶと、選択肢が巧みに入れ替えられていて引っかかる。X軸とY軸の入れ替え、有形物と無形物の入れ替えなど、令和8年の誤りはどれも「入れ替え型」だった。

他の年度の問題も同じ型で出るか、年度別の分野別の辿り方は、測量士補 過去問|年度別の問題・解答と分野別の解き方まとめから入ると探しやすい。




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7. まとめ

  1. 地図編集は、既成の数値地形図データから、取捨選択・総合描示などで新しい地図を作る作業(準則第331条・第341条)。基図は、作る地図と同じかより詳しい地図を使う
  2. 転位は、やむを得ない場合の必要最小限。先に動かすのは無形物(注記・行政界)で、基準点・河川・道路は守る側。量は図上0.5mm以内(やむを得ず1.2mm)
  3. UTM図法は経度差6°ごと・北緯84°以南/南緯80°以北、平面直角座標系はX軸が北・Y軸が東で原点の縮尺係数0.9999、東西約130km以内
  4. 縮尺の計算は、長さに分母を掛け、面積は分母の2乗を掛ける。縮尺係数は「平面上の距離 ÷ 元の距離」
  5. 令和8年No.22・No.23の誤りは、どちらも「入れ替え型」。軸の定義と、動かす順番を押さえていれば消去できる

よくある質問(FAQ)

Q1. 転位と総描は、どう違いますか?

転位は、近接して読みにくくなるものを本来の位置から動かして描くことです。総描は、細かい対象をまとめたり簡略にしたりして描くことです。前者は位置の話、後者は形や量の話、と分けると整理しやすくなります。

Q2. 平面直角座標系でも、UTM図法のように経度でゾーンが分かれますか?

平面直角座標系は日本を19の系に分け、それぞれに座標系原点を置いています。考え方としては、原点から東西約130km以内を適用範囲とする区分けです。UTM図法は経度差6°ごとの範囲で分ける図法で、区分けの単位と考え方が違います。

Q3. 縮尺係数は、掛けるのですか、割るのですか?

縮尺係数は「平面上の距離 ÷ 元の距離」の比です。平面上の距離から元の距離に戻すときは割り、元の距離から平面上の距離を出すときは掛けます。

Q4. 縮尺の面積計算で、毎回ミスします。

長さの縮尺の2乗を使うと覚えるより、図上1 cm²が現地で何m²かを先に求める方法が確実です。1/25,000なら図上1 cmが250 mなので、1 cm²は62,500 m²です。

Q5. 地図記号は全部覚える必要がありますか?

令和8年No.21では凡例が付いていないため、交番・三角点・水準点・税務署・裁判所などの主要な記号は覚えておく必要があります。ただし、全種類を暗記するより、過去問で出た記号から増やしていくほうが効率的です。


出典・参考

いずれも2026年10月31日に開いて確認した。PDFは文字を取り出して読んだ。令和8年の試験問題PDFは文字が画像だったため、ページを画像にして読んだ。

  • 国土交通省告示第413号「作業規程の準則」(国土地理院掲載の全文PDF、附則に令和7年4月1日施行分までを含む版): https://www.gsi.go.jp/common/000258734.pdf
  • 使った箇所:第2条(測量の基準)、第105条(数値地形図データの位置精度及び地図情報レベル)、第107条(図式)、第3編第8章 地図編集の第331〜341条(要旨・基図データ・編集資料・編集原図データの作成)。付録7(公共測量標準図式)は全文PDFに含まれておらず、確認できていない。
  • 国土地理院「令和8年測量士補試験問題」(No.21〜23は23〜25ページ): https://www.gsi.go.jp/common/000278974.pdf
  • 国土地理院「令和8年測量士補試験解答」(No.21=4、No.22=2、No.23=5、No.24=1): https://www.gsi.go.jp/common/000278975.pdf
  • 国土地理院「平成25年2万5千分1地形図図式(表示基準)」(国地達第13号〔令和8年3月30日〕による一部改正を含む): https://www.gsi.go.jp/common/000218186.pdf
  • 使った箇所:第6条(取捨選択)、第7条(記号及び注記の表示)、第8条(表示事項の転位)、第10条(投影法)、第13・14条(基準点等)、第48〜51条(地形・等高線)。
  • 国土地理院「電子地形図20万図式(表示基準)」(国地達第14号、令和2年9月15日): https://www.gsi.go.jp/common/000227200.pdf (第7条 取捨選択・総描・転位)
  • 国土地理院「平面直角座標系(平成十四年国土交通省告示第九号)」: https://www.gsi.go.jp/LAW/heimencho.html (備考:X軸・Y軸の向き、縮尺係数0.9999、原点の座標値)
  • 国土地理院「日本の測地系」: https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html (平面直角座標系の縮尺係数0.9999、東西約130km以内。ページ表示の最終更新は2025年4月1日)
  • 国土地理院「測量計算 平面直角座標への変換」: https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/algorithm/bl2xy/bl2xy.htm (縮尺係数m0=0.9999)
  • 確かめられなかったもの:UTM図法の中央経線上の縮尺係数の値、準則付録7(公共測量標準図式)の本文、総描の定義を一文で述べた公的資料。これらは断定していない。縮尺係数の距離別の表は、編集部が近似式で概算した値で、公的資料の数値ではない。

※本記事は一般的な解説記事です。個別の土地の境界や面積の判断は、土地家屋調査士・測量士等の専門家にご確認ください。縮尺の例題は編集部が作成したもので、実在の地図や案件ではありません。

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