結論から先に言うと
公図とは、法務局に備え付けられている、土地の位置・形状・地番を示す図面のことです。ただし公図と呼ばれるものの中身は一様ではなく、精度の高い「地図」(いわゆる「14条地図」)と、あくまで参考程度の「地図に準ずる図面」の2種類が混在しています。とくに後者しかない土地では、公図と現況がずれていて当たり前という前提で調査を進める必要があり、ズレが大きい「公図混乱地域」に当たると、境界確定の難易度が一段跳ね上がります。どちらの図面なのかは、写しに記載された「分類」「種類」の欄で見分けられます。
土地の資料一式を法務局や役所で集めていると、最初にほぼ必ず出会うのが公図だ。物件概要書に「公図写し添付」と書いてあることも多く、不動産の仕事をしていれば見慣れた存在だと思う人も多いだろう。だが公図を「土地の正確な地図」だと思い込んでいると、思わぬところで足をすくわれる。というのも、公図には精度がまったく違う2つのタイプが混在していて、図面の線だけ眺めていてもどちらなのかは分かりにくいからだ。
この記事では、公図の法的な位置づけと種類、地積測量図や確定測量図・現況測量図との役割の違い、そして公図と現況が大きくずれた「公図混乱地域」の見抜き方までを整理する。ハブ記事「測量士補の知識は不動産の仕入れ営業にどう活きる?」から枝分かれしたテーマのひとつで、図面まわりのシリーズの入り口として読んでもらえる内容にしたつもりだ。
本記事の情報について
公図の法的位置づけ・地籍調査の進捗状況は不動産登記法、法務省・法務局および国土交通省の公表情報に基づいています。公図混乱地域の発生要因・見分け方は、法務省の公表資料と不動産・法律の専門メディアで一般に紹介されている内容を編集部で整理したもので、個別の土地について「混乱地域かどうか」を判定するものではありません。本記事は広告(アフィリエイト)を含みます。
1. 公図とは何か ― 実は2種類ある
公図という言葉は不動産登記法の条文上の正式名称ではない。法律上の呼び方は少し込み入っている。不動産登記法は、登記所(法務局)に「地図」を備え付けると定めている。この地図には、災害などで現地の境界が分からなくなっても図面から位置を復元できるだけの高い精度が求められる。実務では「14条地図」と呼ばれる。
ただし、この14条地図の整備は全国で完了していない。14条地図の主な供給源は市区町村などが行う地籍調査の成果(地籍図)だが、国土交通省の公表では、令和6年度末時点で全国の地籍調査の進捗率は53%、優先実施地域に限っても81%にとどまる。法務局自身の地図作成事業や土地区画整理の成果から14条地図になる地域もあるので進捗率がそのまま地図の整備率ではないが、まだ半分近くの地域で地籍調査が終わっていない、という規模感はつかめる。そこで同法は、14条地図が整備されるまでの代わりとして「地図に準ずる図面」を備え付けてよいとしている。多くの登記所で実際に使われているのがこの図面で、明治時代の地租改正のころに作られた図面(旧土地台帳附属地図)を引き継いでいるものが少なくない。
世間一般で「公図」と呼んでいるものの正体は、たいていこの「地図に準ずる図面」だ。位置関係や地番の並び、おおよその形はつかめるが、辺の長さや面積を正確に示す図面ではない。同じ「公図」という呼び名でも、精度の高い14条地図が備え付けられている地域と、明治期の図面をそのまま引き継いだ地域とでは、資料としての信頼度がまったく違う。これが公図を扱ううえで最初につまずきやすいポイントだと思う。
見分け方は意外と単純で、法務局で取得した写しや登記情報提供サービスの図面には、「分類」欄に「地図」か「地図に準ずる図面」かが、「種類」欄に「旧土地台帳附属地図」「国土調査による地籍図」といった元資料の種類が記載されている。公図を取ったら、まず線より先にこの欄を見る癖をつけておくといい。欄の読み方に迷ったら、その土地を管轄する法務局で確認できる。
2. 公図の取得方法
公図は誰でも法務局で交付を請求できる。窓口での請求、郵送での請求、「登記・供託オンライン申請システム」からのオンライン請求の3つの方法があり、手数料は1通あたり数百円程度だ。証明文が付いていない中身の確認だけでよいなら、登記情報提供サービスでPDFを取得する方法もある。
この取得方法は、実は地積測量図とほとんど同じだ。窓口・郵送・オンラインという3つの入口、そして登記情報提供サービスという確認用の手段が用意されている点まで共通している。取得手続きの細かい流れは「地積測量図とは?見方と作成年代による信頼度の違い」で詳しく説明しているので、そちらを参照してほしい。
3. 公図と地積測量図・確定測量図・現況測量図の違い
法務局に関係する図面の名前が並ぶと混乱しやすいので、位置づけを整理しておく。
公図は「地図」であり、一帯の土地の並び・地番・おおまかな形を示すものだ。これに対して地積測量図は「一筆ごとの面積の根拠」を示す図面で、分筆登記や地積更正登記の際に土地家屋調査士が作成し、法務局に備え付けられる。公図で位置関係をつかみ、地積測量図で面積の根拠を確かめるという役割分担になっている。
もうひとつ紛らわしいのが確定測量図・現況測量図だ。こちらは法務局に備え付けられる公的書類ではなく、隣地の立会いを経て境界を確定させたか(確定測量図)、立会いなしで現況を写し取っただけか(現況測量図)という、測量の進め方による分類になる。公図・地積測量図・確定測量図・現況測量図の4つがどう違うのか、初動でどこを見て見分ければよいかは「測量図の種類と違い|地積・確定・現況の3種を信頼度で比較」で横並びに整理してあるので、あわせて読むと全体像がつかみやすいはずだ。
縮尺や座標、図面の読み方といった土台は、測量士補試験の地図編集・応用測量(用地測量)の範囲とも重なる。図面・測量の知識を体系的に身につけたい人は、講座のカリキュラムを見比べておくと学び方のイメージがつかみやすい。
4. なぜ公図は現況とズレるのか
地図に準ずる図面(公図)の多くは、明治時代の地租改正のときに作られた図面が土台になっている。当時の測量は縄や竹を使った簡易な手法で、精度には限界があった。この時代の測量精度がそのまま今の登記記録に引き継がれている土地では、登記簿面積と実際に測った面積とがずれることがあり、これを「縄伸び」「縄縮み」と呼ぶ。この面積のズレについては「公簿売買とは?実測売買との違いと面積差トラブルの防ぎ方」で詳しく扱っている。
面積だけでなく、位置関係そのものが実際とかけ離れていることもある。明治初期の地租改正では、税負担を軽くするために面積を小さめに申告した土地もあったと言われていて、そうした事情が積み重なった結果、公図上の形と現況の形が大きく食い違う土地が今も残っている。都市部では戦災による記録の焼失、震災による地形の変化、区画整理の未実施なども、ズレを広げる要因になってきた。
こうしたズレのうち、公図の描き方そのものが誤っているものは、確定測量で筆界を確かめたうえで「地図訂正の申出」をして直せる場合がある。ただし、塀の位置が筆界からずれているだけのような「所有権の範囲のずれ」は地図訂正の対象にならない。この見分け方と手続きの費用・期間は地図訂正(公図の訂正申出)の記事で詳しく扱っている。
5. 公図混乱地域とは
こうしたズレが一部の土地にとどまらず、広い範囲にわたって公図と現況の対応関係が崩れてしまっている地域を、一般に「公図混乱地域」(法務省の資料では「地図混乱地域」)と呼ぶ。法務省は、こうした地域では道路・下水道といったインフラ整備や固定資産税の課税事務に支障が出るほか、担保設定などの経済活動が妨げられたり、開発の際の境界確認に膨大な時間がかかったりするおそれがあると説明している。
公図混乱地域で起きる問題は、専門メディアなどでは次の3つのパターンで説明されることが多い。ひとつは「不存在地」で、登記簿上の地番が現地のどこにも対応しない状態。ふたつめは「重複登記」で、同じ現地の場所に複数の地番が重なって登記されている状態。みっつめは「地権者不明」で、登記名義人と実際にその土地を使っている人が一致しない状態だ。どれも、公図をもとに現地を特定しようとした瞬間に「あれ、この形、現況と合わない」という違和感から発覚することが多い。
発生の背景としては、明治期の地租改正における測量誤差の蓄積に加え、戦災・震災で記録や境界標そのものが失われたこと、そして地籍調査が終わっていない地域では、こうした古い図面がそのまま更新されずに残ってしまうことが挙げられる。地籍調査は全国一律に進んでいるわけではなく、国土交通省も、人口が集中する都市部(DID)と山村部で調査が遅れていると公表している。都市部は土地が細かく分かれ、権利関係も複雑なので調査に手間がかかる。山村部とは違う理由で、都市部の公図ほど古い記録に頼ったままになりやすいということだ。法務局が都市部の地図混乱地域を対象に「法務局地図作成事業」を計画的に進めているのも、この事情による。
6. 公図混乱地域を仕入れ営業目線で見抜く
専門家のように公図混乱地域かどうかを確定的に判定するのは仕入れ営業の仕事ではない。それでも、初動の資料調査で違和感に気づけるかどうかは、その後の調査スケジュールを大きく左右する。実務で見ておきたいポイントを挙げておく。
まず、公図と住宅地図・現況の航空写真を重ねて見比べる。道路の形状や隣接地との境界線が、公図と現況でまったく違う向きを向いているようなら要注意だ。次に地番の並び方。本来なら隣り合う土地の地番は近い番号になっていることが多いが、飛び番が不自然に多い、同じ地番が離れた場所に複数出てくるといった場合は、過去に混乱が生じた形跡を疑ってよい。あわせて、写しの「分類」「種類」欄で14条地図か地図に準ずる図面かを確認し、市区町村の地籍調査の実施状況(地籍調査Webサイトや自治体の担当課で確認できる)も見ておくと、古い図面のまま残っている地域かどうかの見当がつく。
現地では、隣接地との境界標の有無と、公図上の境界線の向きが一致しているかを見る。境界標が見当たらない、あるいは公図の形とあまりに違う位置にブロック塀がある場合、境界確定の際に隣地との協議が難航する可能性を織り込んでおいたほうがいい。境界標の種類や立会いの進め方については「境界確定とは?境界標の種類と立会いを拒否された時の進め方」にまとめてある。
7. 公図混乱地域だった場合の対応と時間軸
公図混乱地域に当たっているとわかった場合、地籍調査でその地域の整備が進むのを待つという選択肢は、仕入れの検討スケジュールにはまず乗らない。地籍調査は市区町村が主体になって進める公共事業で、いつ着手されるか仕入れ営業の側でコントロールできるものではないからだ。
現実的な対応としては、隣接地の所有者と個別に立ち会って境界を確定させる確定測量を行うか、当事者の合意が得られない場合は法務局の筆界特定制度を利用するかになる。ただしどちらも、混乱の度合いが大きい土地ほど関係者が増え、時間がかかりやすい。筆界特定制度の標準処理期間は法務局ごとに定められていて、6か月の局もあれば9か月の局(東京法務局など)もある。関係者が多い事案では標準処理期間を超えることもあると案内されており、公図混乱地域が絡めばなおさらだ。制度の仕組みと費用感は境界確定とは?境界標の種類と立会いを拒否された時の進め方で詳しく扱っている。
境さんは、公図は「とりあえず取っておけばいい資料」という扱いを受けがちだが、学習してから見方が変わったという。地図に準ずる図面のままの地域では、現況とどこまで一致しているか分からない前提でスタートするしかない。公図と航空写真を重ねて道路の向きが違う、地番の並びが妙に飛んでいるといったときは、境界確定にかなり時間がかかる案件だと覚悟して条件を組んでいる。仕入れの初動でこの当たりをつけられるかどうかは大きいという。(監修者・境さんのコメント)
8. まとめ
公図とは法務局に備え付けられる、土地の位置・形状・地番を示す図面のことだが、その中身には精度の高い14条地図と、明治期の図面を引き継いだ地図に準ずる図面(狭い意味での公図)の2種類がある。全国の地籍調査進捗率はまだ53%(令和6年度末)にとどまっており、地図に準ずる図面のまま残っている土地は珍しくない。公図と現況が広い範囲でずれてしまっている公図混乱地域では、境界確定の難易度も期間も一段跳ね上がる。
仕入れ営業としては、公図と地積測量図・確定測量図の役割の違いを理解したうえで、公図と現況・地番の並びに違和感がないかを初動で確認する習慣をつけておきたい。縮尺・座標・図面の読み方といった土台は測量士補試験の学習範囲(地図編集・応用測量)とも重なり、押さえておくと資料調査のスピードが上がる。独学でも身につけられる知識だが、測量の基礎から順に学びたいなら通信講座のカリキュラムを比較してみるのも一つの手だ。
出典・参考情報(2026年9月26日確認)
- 不動産登記法(地図・地図に準ずる図面の備付け)。「地図に準ずる図面」が一般に「公図」と呼ばれ、明治期の図面が基になっている点は各法務局の案内(例:山形地方法務局の地図・地図に準ずる図面(公図)に関する案内)に基づく
- 国土交通省 報道発表資料「『土地の戸籍』に関する最新の調査実施状況を公表します ~『優先実施地域』の進捗率が81%に上昇~」(令和7年6月、令和6年度末時点で全国53%・優先実施地域81%。2026年9月30日に報道発表のページを開いて数字を確認) https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo06_hh_000001_00015.html
- 都市部(DID)・山村部で地籍調査が遅れている点、市区町村別の進捗率:地籍調査Webサイト https://www.chiseki.go.jp/situation/
- 法務省「法務局地図作成事業の推進」(地図混乱地域で生じる支障、都市部DIDの地図混乱地域を対象とした事業) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00231.html
- 公図混乱地域の典型的な問題(不存在地・重複登記・地権者不明)の分類は、不動産・法律専門メディアで一般に紹介されている内容を編集部で整理したもの
- 筆界特定の標準処理期間:東京法務局「筆界特定制度に関する“よくある質問”」ほか各法務局の案内(局により6か月・9か月など)
- 縄伸び・縄縮み(地租改正期の測量精度に由来する面積のズレ)については「公簿売買とは?実測売買との違いと面積差トラブルの防ぎ方」の出典欄も参照
- 本記事の実務論点は、不動産業界で一般的に知られている典型的なケースとして編集部が整理したものであり、特定の実在案件・企業を示すものではありません
※条文は未確認(許可待ち)。一次資料(e-Gov法令検索・東京都例規集)を開ける環境になりしだい照合する。個別の土地の判断は所在地の役所で確認すること。
※本記事は監修者(現役の不動産仕入れ営業マン、測量士補試験の受験生)の視点を交えた一般的な解説記事です。個別の土地における公図・境界の評価は、必ず土地家屋調査士・測量士等の専門家にご確認ください。








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