結論から先に言うと
地形測量は、土地の高低や地物を測って地図(地形図)にする作業で、その高低を表すのが等高線です。覚えるのは等高線が3種類あること(主曲線・計曲線・補助曲線)と、等高線の間隔は縮尺で決まっていることの2点。計算は、等高線の間の点の高さを距離の比で求める「比例配分」が中心です。この記事では編集部が作った例題4問と、令和8年の過去問No.15を、Pythonで検算した数値で解きます。
地形測量は、試験科目のなかで「地味だけれど毎年出る」分野だ。令和8年の測量士補試験でも、No.13〜15の3問がこの分野で出題されている。用語を知っていれば取れる問題が多く、計算も四則演算と比の計算だけで済む。
この記事では、まず地形測量の位置づけを整理し、等高線の種類と間隔、読み方を押さえる。そのあとで高さと傾斜を求める計算を例題で解く。同じ「例題で解く」型の記事としてトラバース測量の計算の記事があるので、計算の練習量を増やしたい人はそちらも並べて使ってほしい。
本記事の情報について
例題1〜4は編集部が作ったオリジナルで、実在の土地や案件ではありません。数値はすべてPythonで計算して検算しています。例題5の令和8年No.15は、国土地理院が公表している問題と、公表された正解(3)を確かめたうえで解説しています。出典は末尾にまとめました。
1. 地形測量の位置づけ
測量の作業は、大きく「骨組みをつくる」測量と「その上に中身を載せる」測量に分かれる。基準点測量や水準測量が骨組みで、地形測量は、その骨組みを使って地形や地物(建物・道路など)の位置と高さを測り、地図の形にまとめる作業にあたる。
測る方法はいくつかある。現場でトータルステーション(TS)やGNSS測量機を使って直接測る方法、航空写真から図化する写真測量、レーザで点群を取る三次元点群測量などだ。国土地理院の「作業規程の準則」(国土交通省告示第413号)は、この地形測量および写真測量を第3編、三次元点群測量を第4編に分けて定めている。第3編の細部測量では、地形・地物の測定精度は地図情報レベルに0.3mmを乗じた値、標高の測定精度は主曲線間隔の4分の1以内とされている(第120条第2項)。
試験の出題では、数値地形図データや細部測量の用語、TSによる誤差、そして等高線の表現が並ぶのが定番だ。個別の年度の解説は令和8年測量士補 過去問解説【第4弾】No.13〜15 地形測量にまとめてあるので、この記事では「等高線とその計算」に絞る。
2. 等高線の種類と間隔
3種類の等高線
等高線は、標高の等しい点を結んだ線のこと。地形図に描かれる等高線は、役割によって次の3種類に分かれる。国土地理院の「2万5千分1地形図図式(表示基準)」第51条は、2万5千分1地形図の等高線を次のように定めている。
| 種類 | 2万5千分1地形図での間隔 | 描き方・役割 |
|---|---|---|
| 主曲線 | 標高10mごと | 基本になる細い線 |
| 計曲線 | 50mごと(主曲線のうち5本目) | 太線にして、数えやすくする |
| 補助曲線 | 主曲線の間を5mまたは2.5mごと | 緩やかな斜面など、主曲線だけでは表せない所に補う |
補助曲線は、平らに近い土地や複雑な地形で、主曲線の間にだけ入れる線だ。図式は、補助曲線には等高線の数値を表示するとし、5mごとの補助曲線の数値は適宜省略するとしている。
縮尺(地図情報レベル)ごとの間隔
公共測量で作る数値地形図は、紙の縮尺ではなく「地図情報レベル」で区別する。準則の第575条第2項には、航空レーザ測量で等高線データをつくるときの標準が、次の表で示されている。
| 地図情報レベル | 主曲線 | 計曲線 |
|---|---|---|
| 500 | 1m | 5m |
| 1000 | 1m | 5m |
| 2500 | 2m | 10m |
| 5000 | 5m | 25m |
読み取れる規則は単純で、計曲線の間隔は主曲線の5倍。縮尺が小さくなるほど(2500→5000)、主曲線の間隔は大きくなる。地図が粗くなる分、等高線も粗く引くわけだ。この表は三次元点群測量の条文にあるもので、細部測量など第3編の等高線の値は付録7(公共測量標準図式)に定められている。付録7の本文は今回開いて確認できていないので、ここでは第3編の個別の数値は書かない。
なお、地形図上の等高線は、紙の地図なら10mや2mの間隔といっても、その線上のどこでも「ぴったりその標高」と言えるだけの精度で測っているわけではない。準則の第105条には、等高線の標準偏差が地図情報レベル2500で1.0m以内、5000で2.5m以内と定められている。等高線から読み取った標高は、あくまで目安の値として扱うのが前提になる。
3. 等高線の読み方
間隔が狭い所は急、広い所は緩い
等高線は標高差が一定の間隔で引かれているので、図の上で線が詰まっているほど急斜面、離れているほど緩斜面になる。同じ高さの差を、短い水平距離で登るか長い水平距離で登るかの違いだ。
尾根と谷
尾根と谷は、等高線の「曲がり方」で見分ける。
- 尾根:等高線が、標高の低い方に向かって張り出す形(U字・V字の先が低い側を向く)
- 谷:等高線が、標高の高い方に食い込む形(先が高い側を向く)
尾根は水が左右に分かれていく線、谷は水が集まってくる線と覚えておくと、見分けやすい。標高の数値が読めなくても、「先がどっちを向いているか」で判断できる。
閉じた等高線は山頂とは限らない
輪のように閉じた等高線の内側は、山頂のこともあれば、周りより低い凹地のこともある。凹地には凹地記号を付けて区別する(準則の第569条第5項などにも「凹地記号」の語が出てくる)。これは次の第5節の過去問にもつながる話だ。
4. 例題で解く:高さ・傾斜の計算
等高線の計算は、隣り合う等高線のあいだでは、標高が距離に比例して変わると考える「比例配分(内挿)」が基本だ。実際の斜面は途中で傾きが変わるかもしれないが、等高線の間隔くらいの短い範囲なら、直線とみなして計算する。
例題1:等高線の間にある点の標高を求める
地図情報レベル2500の地形図で、標高30mの主曲線と標高32mの主曲線のあいだに点Pがある。Pを通って2本の等高線に直角に引いた線の上で、30m線からPまでが図上12mm、Pから32m線までが図上8mmだった。Pの標高を求めよ。
2本の等高線の間の図上距離は 12+8=20mm。そのうち30m線から12mm進んだ位置なので、比で考える。
H = 30 + 2 × 12/20 = 31.2 m
32m線の側から逆にたどっても、32 − 2 × 8/20 = 31.2m で一致する。内挿の問題では、「どちらの等高線から測ったか」で式の向きを間違えないことが、いちばんの注意点になる。
例題2:等高線の間隔から傾斜を求める
縮尺1/2500の地形図で、隣り合う主曲線(標高差2m)の図上距離が8mmだった。この斜面の勾配と傾斜角を求めよ。
図上8mmは、実際の水平距離で 8mm × 2500 = 20,000mm = 20m。
勾配 = 高低差 ÷ 水平距離 = 2 ÷ 20 = 0.1(10%、1/10)。傾斜角 = arctan(0.1) = 約5.71°。
計算が苦手な人は、「図上の長さ × 縮尺の分母 = 実際の長さ」を最初に書き、そのあとで高低差を割る、の順に分けておくと間違えにくい。たとえば1/25000なら、図上40mmは 40mm × 25,000 = 1,000,000mm、つまり1kmにあたる。
例題3:傾斜を決めて、等高線の間隔を逆算する
勾配20%(傾斜角で約11.3°)の斜面を、縮尺1/2500の地形図で描くとき、標高差2mの主曲線は図上で何mm間隔になるか。1/25000の地形図で標高差10mの主曲線では、どうなるか。
勾配20%なら、水平距離 = 高低差 ÷ 0.2。
- 1/2500:2m ÷ 0.2 = 10m(実際の距離)→ 10m ÷ 2500 = 0.004m = 図上4mm
- 1/25000:10m ÷ 0.2 = 50m → 50m ÷ 25,000 = 0.002m = 図上2mm
同じ斜面でも、縮尺が小さい地図ほど等高線の間隔は図上で狭くなる。さらに、傾斜が急になるほど間隔はもっと詰まって、線が読み取りにくくなる。急な斜面で等高線が潰れて見える理由が、この計算で確かめられる。
例題4:2点間の平均勾配
縮尺1/2500の地形図で、点Aの標高が31.2m、点Bの標高が36.0m、図上のAB間が32mmである。AB間の平均勾配と傾斜角を求めよ。
実際の水平距離は 32mm × 2500 = 80m。高低差は 36.0 − 31.2 = 4.8m。
勾配 = 4.8 ÷ 80 = 0.06(6%)、傾斜角 = arctan(0.06) = 約3.43°。
ここで出した数値は、AとBの間をまっすぐ直線で結んだときの「平均」の勾配にすぎない。途中に尾根や谷があれば、実際の起伏は変わる。そうした断面を詳しく見るのが縦断測量・横断測量の役目で、縦断測量・横断測量の記事に整理してある。
5. 試験での出方:令和8年No.15
測量士補の地形測量では、等高線の計算より、等高線の性質・種類を問う正誤問題の方が目立つ。令和8年(2026年)の問題から、No.15を例に見てみよう。
〔No.15〕次の1〜5の文は、公共測量における地形測量のうち、等高線による地形の表現方法について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。
- 1本の等高線は、途中で2本以上に分岐することはない。
- 傾斜の急な箇所は、傾斜の緩やかな箇所に比べて、地形図上における等高線の間隔が相対的に狭くなる。
- 閉合する等高線の内部には必ず山頂がある。
- 補助曲線は、主曲線だけでは適切に表せない緩やかな地形などを表現するために用いられる。
- 計曲線とは、0mの主曲線及びこれより起算して5本目ごとの主曲線をいう。
国土地理院が公表した解答では、正解は3。
選択肢を、ここまでの内容と照らして確かめていく。1は、等高線が途中で枝分かれしないという基本ルール。2は第3節の「急ほど間隔が狭い」そのもの。4は第2節の補助曲線の説明と一致し、5は計曲線が主曲線の5本目ごとという関係と合っている。残る3だけが、閉じた等高線の内側を「必ず山頂」と言い切っている。凹地もあり得るので、これが誤りだ。
「必ず」「すべて」といった断定の言葉が付いた選択肢は、例外がないかを疑う。これは地形測量に限らない、正誤問題の定石になる。
令和8年の地形測量3問のうち計算が出たのはNo.14(TSの誤差)で、等高線そのものの計算は出ていない。ただ、年度によって問われ方が変わる分野なので、内挿の考え方は押さえておきたい。
6. まとめ
- 地形測量は、地形・地物の位置と高さを測って地図にする作業。等高線はその高さの表現になる
- 等高線は主曲線・計曲線・補助曲線の3種類。計曲線は主曲線の5本目ごとで、地図情報レベル2500なら主曲線2m・計曲線10m
- 線が詰まっていれば急斜面、離れていれば緩斜面。尾根と谷は、等高線の曲がり方の向きで見分ける
- 高さや勾配の計算は、比例配分と「図上の長さ × 縮尺の分母」の2つで足りる
- 閉じた等高線は山頂とは限らない。令和8年No.15は、この点を突いた問題だった
計算に慣れるには、例題1〜4の数値を変えて、自分で3〜4問作って解くのが早い。過去問の分野別の辿り方は、測量士補 過去問|年度別の問題・解答と分野別の解き方まとめが使いやすい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 主曲線・計曲線・補助曲線は、結局どう違いますか?
主曲線は基本になる細い等高線で、計曲線はそのうち5本目ごとに太くした線です。補助曲線は、主曲線の間に補う線で、緩やかな斜面や複雑な地形で使います。
Q2. 等高線の間隔は、縮尺で決まっているのですか?
はい。2万5千分1地形図は主曲線10m(地形図図式第51条)です。公共測量の地図情報レベルでは、2500で主曲線2m、5000で5mという標準があります(第575条第2項、三次元点群測量の場合)。
Q3. 勾配と傾斜角はどう違いますか?
勾配は高低差を水平距離で割った比で、10%や1/10と書きます。傾斜角はその角度で、勾配10%なら約5.71°です。
Q4. 例題の内挿は、どんな斜面でも使えますか?
等高線2本のあいだが一定の傾きだとみなして計算する方法なので、途中で傾斜が変わる所では実際の標高と差が出ます。試験では「内挿で求める」と指示があるのが通常で、その前提で解いてください。
Q5. 等高線から読み取った標高は、そのまま使えますか?
目安の値として使います。準則の第105条には、等高線の標準偏差の標準が地図情報レベルごとに定められており、読み取った値にはその範囲の誤差があり得ます。
出典・参考
いずれも2026年10月31日に開いて確認した(WebFetchで取得)。
- 国土交通省告示第413号「作業規程の準則」(国土地理院掲載の全文PDF): https://www.gsi.go.jp/common/000258734.pdf
- 使った箇所は、第3編 第105条(数値地形図データの精度・等高線の標準偏差)、第120条第2項(地形、地物等の測定精度)、第4編 第575条第2項(等高線データの作成・地図情報レベル別の主曲線と計曲線の間隔)。付録7(公共測量標準図式)の本文は確認できていない。
- 国土地理院「令和8年測量士補試験問題」(No.15は17ページ): https://www.gsi.go.jp/common/000278974.pdf
- 国土地理院「令和8年測量士補試験解答」(No.15の正解は3): https://www.gsi.go.jp/common/000278975.pdf
- 国土地理院「平成25年2万5千分1地形図図式(表示基準)」(国地達第13号〔令和8年3月30日〕による一部改正を含む)第51条 104・105・107: https://www.gsi.go.jp/common/000218186.pdf (PDFの本文を取り出して確認)
- 確かめられなかったもの: 準則 付録7(公共測量標準図式)の等高線間隔の表、尾根・谷の見分け方を定めた公的資料(一般的な説明として書いた)。これらは断定していない。
※本記事は一般的な解説記事です。個別の土地の高低差や造成の判断は、測量士・土地家屋調査士などの専門家にご確認ください。例題1〜4の数値は編集部が作成したもので、実在の土地や案件ではありません。




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