結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日実施の測量士補試験から、No.8〜No.12を解説します。No.8・No.9はGNSS測量、No.10〜No.12は水準測量の分野です。どちらも「言葉の定義をすり替える」「一部だけ見れば基準内に見える数値を並べる」という、この2分野ならではのひっかけ方が出ています。GNSS測量・水準測量あたりで得点が伸び悩んでいる方は、3社の講座を価格・カリキュラムで比べたページも判断材料にしてみてください。
この記事について
本シリーズの最初の記事、No.1〜No.3の解説から続く測量士補試験の解説シリーズです。国土地理院が公表した「測量士補試験問題」「測量士補試験解答」の各PDF(出典は末尾に明記)をもとに、編集部が論点を要約し、解き方のポイントを整理しました。問題文の全文転載は避けているので、正確な文言・図表は公式PDFで確認してください。監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者としての視点に加え、自身も測量士補試験に挑む受験者という立場からコメントを添えています。
今回のNo.8・No.9はGNSS測量機を使った基準点測量、No.10〜No.12は水準測量(レベルを使った高低差の測定)がテーマです。GNSS測量と水準測量は、測量士補試験の中でも「規定の数値」が細かく設定されている分野で、丸暗記よりも「なぜその数値になっているのか」を理解しておくほうが初見の問題に強くなります。
No.8 GNSS測量機を用いた基準点測量(誤りの組合せ)
論点の要約:公共測量におけるGNSS測量機を用いた基準点測量について述べたa〜eの5つの記述のうち、「明らかに間違っているものだけの組合せ」を選ぶ問題です。準天頂衛星の扱い、2周波観測の効果、スタティック法の必要衛星数、アンテナの整置方法、観測点上空の視界の要否が題材になっています。
解答へのアプローチ:正解はb・eの組合せでした。
bは「2周波で基線解析を行うことにより、対流圏の影響による誤差を軽減することができる」という記述。2周波観測で軽減できるのは電離層の影響であって、対流圏の影響ではありません。電離層による遅延は電波の周波数によって大きさが変わるため、2つの周波数を比較することで影響を分離・軽減できますが、対流圏遅延は周波数にほとんど依存しないため、2周波にしても対流圏の影響そのものは軽減できません。「電離層」を「対流圏」にすり替えた、この分野の定番のひっかけです。
eは「障害物などにより観測点上空の視界が確保できなくても、GNSS測量において観測に支障はない」という記述。GNSS測量は衛星からの電波を受信して位置を決める仕組みなので、上空の視界が遮られれば電波が届きにくくなったり、建物や樹木で反射した電波(マルチパス)を拾って誤差が大きくなったりします。視界の確保はGNSS観測の前提条件であり、「支障はない」は明らかに誤りです。
残るa・c・dはいずれも正しい記述でした。aの準天頂衛星(みちびき等)はGPS衛星と同等の衛星として扱えるという点、cのスタティック法で観測距離10km以上・GPS衛星のみを使う場合は5衛星以上が必要という点、dの同一機種のアンテナで向きをそろえて整置するとアンテナ位相特性(PCV)の影響を軽減できるという点は、いずれも公共測量におけるGNSS測量の基本的な取り扱いです。
関連知識ポイント:GNSS測量の誤差要因を問う問題は、「電離層」「対流圏」「マルチパス」「アンテナ位相特性」といった要因ごとに、原因と軽減策をセットで覚えておくと選択肢のすり替えに気づきやすくなります。特に電離層と対流圏はどちらも「大気による遅延」という共通点があるため混同しやすい組み合わせです。
No.9 基線ベクトル成分からA〜C間の斜距離を求める計算
論点の要約:GNSS測量機による基線解析で、基準点Aから基準点B、および基準点CからBまでの基線ベクトル成分(ΔX, ΔY, ΔZ)が得られています。表9のとおり、A→Bは(+300.000m, +100.000m, −100.000m)、C→Bは(+200.000m, +300.000m, +400.000m)。ここから基準点Aから基準点Cまでの斜距離を求める計算問題です。
解答へのアプローチ:直接分かっているのはA→BとC→Bの基線ベクトルなので、まずA→Cのベクトル成分を組み立てる必要があります。C→Bが分かっていれば、その逆向きのB→Cは符号を反転させるだけで求まります。
B→C = −(C→B)= (−200.000, −300.000, −400.000)
A→Cは「A→B」と「B→C」を足し合わせたベクトルなので、
ΔX(A→C) = 300.000 + (−200.000) = 100.000 m
ΔY(A→C) = 100.000 + (−300.000) = −200.000 m
ΔZ(A→C) = −100.000 + (−400.000) = −500.000 m
A→Cの基線ベクトル成分は(+100.000m, −200.000m, −500.000m)です。あとは三平方の定理(3次元版)で斜距離を求めます。
斜距離 = √(ΔX² + ΔY² + ΔZ²)
= √(100² + 200² + 500²)
= √(10,000 + 40,000 + 250,000)
= √300,000
√300,000をそのまま暗算するのは大変なので、巻末の関数表を使える形に分解します。300,000 = 30 × 10,000なので、
√300,000 = √(30 × 10,000) = 100 × √30
関数表の平方根の欄で√30の値を見ると5.47723。これを100倍すれば547.723mとなり、選択肢3(547.723m)と一致します。
関連知識ポイント:3次元の基線ベクトルから距離を求める問題は、①未知のベクトルを既知のベクトルの足し算・引き算で組み立てる、②三平方の定理を3成分に拡張する、③関数表の平方根欄を使えるよう数値をきれいな形(今回なら「〇〇×10,000」)に分解する、という3段階が型になっています。似たパターンの計算問題は計算問題のパターンと公式を1本にまとめた記事でも整理しているので、関数表の使い方に慣れていない方は目を通しておくと安心です。
No.10 2級水準測量の視準距離超過への対処
論点の要約:公共測量で2級水準測量を実施中、視準距離を確認したところレベルから前視標尺までが61m、後視標尺までが63mだった。後視標尺は水準点標石に立てられていて動かせないという条件のもとで、観測者がとるべき適切な処置を選ぶ問題です。
解答へのアプローチ:2級水準測量の視準距離は60m以下と定められているため、61m・63mのどちらも規定を超えている状態です。後視標尺は動かせない前提なので、解決の方向性は「レベルの位置を調整する」「動かせる前視標尺の位置を調整する」の組み合わせしかありません。
正解は、レベルを後視方向に4m移動して整置し、前視標尺をレベルの方向に6m近づけて整置する、という選択肢でした。実際に動かして確認してみます。
レベルを後視方向に4m移動した場合
後視距離:63m − 4m = 59m(60m以下でクリア)
前視距離:61m + 4m = 65m(レベルが前視から遠ざかるため一時的に悪化)
前視標尺をレベル方向に6m近づけた場合
前視距離:65m − 6m = 59m(60m以下でクリア)
最終的に後視・前視ともに59mとなり、どちらも60m以下の規定を満たします。ほかの選択肢を同じように計算すると、1(そのまま)は61m・63m、2(後視方向に1m)は後視62m・前視62m、3(前視方向に2m、前視標尺を6m遠ざける)は後視65m・前視65m、4(後視方向に2m、前視標尺を2m近づける)は後視61m・前視61mとなり、いずれも60mを超えたままです。規定をクリアできるのは選択肢5だけでした。しかも後視・前視の距離がぴったり揃う点も見逃せません。前後の視準距離をできるだけ等しくすることは、地球の曲率や大気の屈折による誤差を打ち消すための基本原則でもあるので、単に「60m以下にする」だけでなく「前後を揃える」という発想まで持てると、この手の処置問題に強くなります。
関連知識ポイント:視準距離の規定は等級によって数値が変わる(1級はより厳しく、3級・4級はより緩やか)ので、「2級=60m」という数字だけを覚えるより、「上位等級ほど視準距離が短く設定される」という方向性とセットで押さえておくと、他の等級を聞かれても慌てずに済みます。
No.11 GNSS標高測量の定義・固定点の取り扱い(穴埋め)
論点の要約:公共測量におけるGNSS標高測量について述べた文章の空欄ア〜オに入る語句の組合せを選ぶ穴埋め問題です。GNSS標高測量の定義、基線解析の固定点で使う高さの種類、ジオイド・モデルの扱い、離島における補正の扱いが題材でした。
解答へのアプローチ:正解は「ア=水準点、イ=3級、ウ=楕円体高、エ=ジオイド高、オ=基準面補正パラメータ」の組合せです。
文章の前半は「GNSS標高測量とは、既知点に基づき、GNSS測量機を用いて、新設する(ア)の標高を定める作業をいい、(イ)水準測量に区分される」という定義。GNSS標高測量で新しく標高を決めるのは水準点(ア)で、この作業は3級水準測量に区分される(イ)と規定されています。
後半は基線解析の固定点まわりの規定です。「固定点の(ウ)は、成果表の標高及び(エ)から求めた値とする」の部分は、楕円体高=標高+ジオイド高というおなじみの関係がそのまま出題されていて、ウ=楕円体高、エ=ジオイド高。ジオイド高(エ)は国土地理院が提供する最新のジオイド・モデルから求める値が原則ですが、国土地理院の長が承認した測量の原点に基づく離島では、ジオイド・モデルの値に(オ=基準面補正パラメータ)から求めた値を加える、という例外規定がセットで問われています。
関連知識ポイント:楕円体高・ジオイド高・標高の関係は、No.4(測量の基準)で出てきた組合せと同じ構造です。今回はそこに「GNSS標高測量は3級水準測量相当」「離島では基準面補正パラメータを加える」という、GNSS標高測量ならではの規定が上乗せされている形。高さの3用語の関係を一度図でイメージできるようにしておけば、法規・GNSS測量のどちらの分野で問われても対応しやすくなります。
No.12 1級水準測量の往復較差から再測すべき区間を判定する計算
論点の要約:水準点Aから固定点(1)・(2)・(3)を経由して水準点Bに至る路線で1級水準測量を行い、4つの観測区間それぞれで往路・復路の観測高低差と観測距離(400m・600m・500m・700m)を得ました。往復観測値の較差の許容範囲は「2.5mm√S(Sは観測距離、片道・km単位)」という条件のもと、再測すべき観測区間として最も適切なものを選ぶ問題です。選択肢には4つの区間のほか「5. 再測の必要はない」も用意されています。
解答へのアプローチ:往路と復路の観測高低差は符号が逆向きなので、足し合わせた値が往復の較差(誤差がなければゼロ)になります。まずは区間ごとに較差と許容範囲を比べてみます。
区間 距離 較差 許容範囲 2.5mm√S
A〜(1) 0.4km +4.7851 + (−4.7845) = +0.6mm 2.5×√0.4 ≒ 1.58mm
(1)〜(2) 0.6km −1.2125 + (+1.2139) = +1.4mm 2.5×√0.6 ≒ 1.94mm
(2)〜(3) 0.5km +3.4157 + (−3.4140) = +1.7mm 2.5×√0.5 ≒ 1.77mm
(3)〜B 0.7km +0.7118 + (−0.7114) = +0.4mm 2.5×√0.7 ≒ 2.09mm
区間ごとに見ると、4区間すべてが許容範囲内に収まっています。ここで「5. 再測の必要はない」を選んでしまうのがこの問題のひっかけです。
作業規程の準則では、再測の判定は「水準点及び固定点によって区分された区間」の往復観測値の較差で行うとされています。固定点で区切った観測区間だけでなく、水準点Aから水準点Bまでの区間全体でも較差と許容範囲を比べる必要があります。較差は区間ごとの値の合計、許容範囲は全体の距離で計算します。
全体の距離 S = 0.4 + 0.6 + 0.5 + 0.7 = 2.2km
全体の較差 = 0.6 + 1.4 + 1.7 + 0.4 = +4.1mm
許容範囲 = 2.5 × √2.2 ≒ 3.71mm
路線全体では較差4.1mmが許容範囲3.71mmを超えているため、どこかの区間を再測しなければなりません。どの区間を再測するかは、各区間の較差が許容範囲に対してどれだけの割合を占めているかで判断します。
A〜(1) 0.6 ÷ 1.58 ≒ 0.38
(1)〜(2) 1.4 ÷ 1.94 ≒ 0.72
(2)〜(3) 1.7 ÷ 1.77 ≒ 0.96
(3)〜B 0.4 ÷ 2.09 ≒ 0.19
較差の絶対値だけを見ると(2)〜(3)の1.7mmが最大ですが、区間ごとに距離(許容範囲)が異なるので、割合で比べるのが確実です。許容範囲の96%に達している(2)〜(3)が最も誤差を含んでいる可能性が高く、再測すべき観測区間として最も適切なのは(2)〜(3)(正解3)となります。
関連知識ポイント:この手の問題は、①往路と復路を足して区間ごとの較差を出す、②区間ごとの観測距離から許容範囲を計算して比べる、③区間がすべて範囲内でも、水準点間の路線全体の較差と許容範囲を比べる、④全体が超えていれば許容範囲に対する割合が最大の区間を再測する、という流れが型です。往路・復路の数値を見て「符号が逆で似た値だから大丈夫そう」と目分量で判断せず、必ず数値で較差を出すことが事故防止になります。水準測量の計算をもう少し体系的に練習したい方は、水準測量の計算方法を例題で解説した記事で昇降式・器高式の計算まで含めて整理しています。
他の年度・分野も通しで解くなら
このシリーズの前後の回:前の回は令和8年 測量士補【第2弾】No.4〜No.7 測量の基準・多角測量、次の回は令和8年 測量士補【第4弾】No.13〜15 地形測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。
今回はGNSS測量2問・水準測量3問という構成でした。GNSS測量と水準測量はどちらも「規定の数値」がはっきり決まっている分野なので、条文や規程の丸暗記が有効に働きやすい一方、今回のNo.8・No.12のように「似た言葉のすり替え」「区間ごとには範囲内なのに全体では許容範囲を超える数値」で正確さを試してくる出題が定番です。測量士補試験は法規・多角測量・GNSS測量・水準測量・地形測量・写真測量・地図編集・応用測量という決まった分野構成で28問が出されるので、1年分を細かく解くのと並行して、分野ごとに複数年度を横断して解くと頻出パターンが見えてきます。何年分をどう周回すべきかは、過去問の年数・周回の組み方を整理した記事にまとめています。
過去問を年度ごとに解き進めるなら、解説付きの過去問集が1冊あると、公式PDFだけでは分からない「なぜその選択肢が誤りなのか」を確認しやすくなります。
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GNSS測量と水準測量は、誤差の種類と消し方、許容範囲の計算がセットで問われる分野です。過去問を解いても理屈が腹落ちしないときは、解説講義で原理から入れ直すほうが近道になることがあります。編集部が比べた中では、過去7年分の過去問集と計算問題対策がそろっているアガルートが最初の候補になります。
まとめ:次に何をすべきか
今回のNo.8はGNSS測量の誤差要因、No.9はベクトル計算、No.10は視準距離超過への処置、No.11はGNSS標高測量の穴埋め、No.12は水準測量の再測判定でした。部分だけでなく全体でも基準を満たしているかを確認できるかが、この2分野の得点を分けるポイントです。過去問を解いていて「許容範囲の計算が毎回怪しい」「規定の数値を覚えきれない」と感じる方は、独学だけで詰めるより、価格とカリキュラムを比較してみるのも一つの手だと思います。
監修者・境さんより
No.12の水準測量の再測判定は、数字を並べて眺めているだけだと見落としそうになる問題でした。4つの区間はどれも許容範囲内なのに、路線全体で合計すると許容範囲を超えてしまう――こういう「一つひとつは大丈夫そうに見えるけど、積み上げると合わない」という判断は、土地の仕入れでも似たような場面があります。境界の測量図を何枚も見比べていると、1枚ずつは問題なさそうでも、並べて合計すると面積や辺長の辻褄が合わない資料が混じっていることがあり、そこに気づけるかどうかは結局、面倒でも一つずつ数字で確認する癖がついているかどうかだと感じています。仕入れ営業の実務にどうつながるかは、仕入れ営業シリーズのハブ記事でまとめて書いています。
過去問演習を進める中で「そもそも自分の弱点分野が分からない」「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」という方は、以下もあわせて参考にしてください。
- 測量士補とは?受験資格・試験概要 完全ガイドを見る
- 測量士補の難易度・合格率8年推移を確認する
- シリーズ最初のNo.1〜No.3の解説を読む
- 講座選びで迷ったら比較ページを覗いてみる
なお、問題を単元別(計算問題/法規/作業規程)に横断して復習できるインデックスページ、および令和8年のNo.13以降を扱う解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。
出典・参考情報(2026年9月26日確認)
- 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
- 国土地理院「令和8年測量士補試験問題」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278974.pdf )
- 国土地理院「令和8年測量士補試験解答」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278975.pdf )
※本記事の問題要約・解説は編集部が上記の公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現・図表は国土地理院の公式PDFを必ずご確認ください。計算過程の数値は関数表・電卓の精度により若干の誤差が生じる場合があります。








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