GNSS測量とは?GPSとの違い・RTKなど方式の種類と誤差要因をやさしく解説

測量士補

結論から先に言うと
GNSS測量とは、人工衛星の電波を受信して、地上の点の位置を求める測量のことです。GNSSは衛星測位システムの総称で、GPSはその中のアメリカのシステムひとつにすぎません。測量では、観測のしかた(スタティック、キネマティック、RTKなど)を目的に合わせて選びます。測量士補試験でも毎年のように出る分野なので、方式の違いと誤差の要因をセットで押さえておくと得点源になります。講座選びで迷ったら3社の比較ページから確認してみてください。

「GPS測量」と呼ぶ人もいれば、「GNSS測量」と書いてある資料もある。同じものなのか、違うのか。測量士補の勉強を始めると、最初のほうでこの疑問にぶつかる。

結論を先に言えば、現在の測量では衛星を使う測位全般を指して「GNSS」と呼ぶのが普通だ。この記事では、GPSとの違い、測量で使われる観測方式、電子基準点とのつながり、誤差が出る原因、トータルステーション(TS)との使い分け、そして試験でどう問われるかを順に整理する。精度の数値や規定の細かい値は、年度や作業規程の改正で変わりうるので、ここでは載せない。必要なときは国土地理院の公開資料で確認してほしい。



令和8年 測量士補 過去問解説【第3弾】No.8〜12 GNSS測量・水準測量
令和8年 測量士補 過去問解説【第3弾】No.8〜12 GNSS測量・水準測量

1. GNSSとGPSの違い:総称と個別のシステム

GNSSは「Global Navigation Satellite System」の頭文字で、人工衛星を使った測位システムの総称だ。日本語では全球測位衛星システムと訳される。

その中身として、アメリカのGPS、ロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国のBeiDou、そして日本のみちびき(準天頂衛星システム)などがある。GPSはこの中のひとつ。つまり、GNSS⊃GPSという関係になる。昔の測量はGPSしかほぼ選択肢がなかったので「GPS測量」と呼ばれていたが、いまは複数のシステムの衛星を組み合わせて使うのが当たり前になり、呼び名もGNSSに変わった。

スマホの地図アプリが「GPS」と呼ばれがちなのも、同じ事情だ。実際には複数の衛星システムを使っていても、一般には昔の名前が残っている。測量の試験では「GNSS」と書くのが正式な言い方なので、GPSと書いてある選択肢が出てきたら、「GPS衛星だけを使う場合」の話なのか、衛星全般の話なのかを読み分ける必要がある。

受信機1台での測位と、2台以上での測位

測位の方式は、大きく2つに分かれる。受信機1台で現在地を出す「単独測位」と、2台以上の受信機で同じ衛星を同時に観測して、2点の位置関係を求める「相対測位」だ。カーナビやスマホは前者、測量で使うのは基本的に後者。両方の受信機に共通して含まれる誤差が打ち消されるため、測量に必要な精度が出る。この仕組みは、用語としては測量用語集のGNSS測量の項目でも触れている。

2. 測量で使う主な観測方式

測量のGNSS観測には、いくつかの方式がある。名前が似ているので試験で混ざりやすいが、「じっとして長く観測するか」「動きながら観測するか」「結果をその場で出すか、あとで計算するか」の3つの軸で整理すると、頭に入りやすい。

スタティック法・短縮スタティック法

スタティック法は、観測点に受信機を据えたまま、ある程度の時間をかけて観測する方法だ。データを持ち帰ってから計算(基線解析)して位置関係を求める。じっくり時間をかける分、基準点測量のような精度が必要な作業で使われる。

短縮スタティック法は、その名のとおり観測時間を短くした方式。観測する時間は短いが、そのぶん使える条件(衛星の数や観測点間の距離など)に制限がある。どちらも「後処理」で解析するのが特徴で、現場でその場の結果が出るわけではない。

キネマティック法・RTK法

キネマティック法は、1点で長く観測せず、受信機を移動させながら次々に点を観測していく方式。短時間で多くの点を取れるのが利点だ。

RTK(リアルタイム・キネマティック)法は、基準となる受信機(基準局)から補正情報を無線などで受け取り、観測しながらその場で位置を計算して結果を出す方法だ。後処理を待たなくていいので、杭打ちや出来形の確認のような「今ここで位置を知りたい」作業に向く。測量の仕事で「RTK」と言ったら、基本的にこれを指す。

ネットワーク型RTK法

通常のRTKは、自分で基準局を現場に据える必要がある。これに対してネットワーク型RTK法は、全国に配置された電子基準点などの観測データから作った補正情報を、通信で受け取って使う方式だ。基準局を自分で立てなくても、受信機1台でRTK観測ができる。現場の段取りが軽くなる反面、通信が届くことや、使えるサービスの契約が前提になる。サービスの内容や公共測量での使える範囲は変わることがあるため、最新の情報は国土地理院や、依頼先の測量会社に確認するのが確実だ。

3. 電子基準点とGNSS測量の関係

電子基準点は、国土地理院が全国に配置している、GNSS衛星の電波を常時受信し続ける基準点だ。集まった観測データは国土地理院で解析され、各点の位置の変化を日々監視するのに使われている。

測量との関係で大事なのは、次の2点だ。ひとつは、電子基準点の観測データが、ネットワーク型RTKの補正情報のもとになっていること。もうひとつは、基準点測量で電子基準点を既知点として使えることだ。ただし、公共測量で使う場合には所定の手続きが必要になる。「データが公開されていること」と「公共測量に使ってよいこと」は別の話なので、点の数や設置の詳細、手続きの中身は、国土地理院の公開ページで確認してほしい。

4. 誤差が出る原因:上空視界とマルチパスは外せない

GNSS測量は、衛星の電波がきれいに届いて初めて成り立つ。電波に影響する要因をいくつか知っておくと、試験の選択肢のすり替えにも気づきやすい。

まず、観測点の上空の視界。建物や樹木、崖などで空が広く遮られると、受信できる衛星の数が減ったり、配置が偏ったりして、位置の質が落ちる。「上空の視界が確保できなくても支障はない」という記述が出たら、明らかな誤りだ。

次にマルチパス。衛星から直接届く電波とは別に、建物の壁やガラス面、地面などで反射した電波を受信してしまい、距離の測定がずれる現象を指す。ビル街や壁際で起きやすい。

さらに、衛星と受信機の間にある大気の影響がある。上空の電離層と、低いところの対流圏だ。どちらも電波を遅らせるが、性質が違う。電離層による遅れは電波の周波数で大きさが変わるため、2つの周波数で観測すれば軽減できる。対流圏の遅れはそうはいかない。両方とも「大気による遅延」という点が同じなので、試験では混ぜて出題される。この区別は過去問で何度も問われているテーマで、令和7年の過去問解説(No.5〜9)のように年度をまたいで取り上げているので、解きながら確認すると理解が定着する。

加えて、アンテナの位相特性(アンテナごとの電波の受けかたのクセ)による誤差もある。同じ機種のアンテナの向きをそろえて据えると影響を減らせる、というのがよく出る論点だ。

ここまでの共通点は、「現場でコントロールできる要因」と「できない要因」が混ざっていることだ。視界の確保やアンテナの据え方は人がどうにかできるが、大気の遅延は観測方法(周波数の数など)で抑える。試験では、この区別がそのまま選択肢の正誤になる。

5. トータルステーション(TS)との使い分け

GNSS受信機とトータルステーションは、どちらが優れているというより、得意な場面が違う。

GNSSの強みは、2点が互いに見通せなくても測れること。広い範囲で離れた点を結べるので、基準点測量や、見通しのきかない場所での位置出しに向く。弱みは、上空が開けていないと使いにくいこと。高い建物に囲まれた市街地や、深い林の中では、衛星が見えず苦戦する。

TSは逆に、上空が塞がれた場所でも、見通せる範囲なら距離と角度で位置が出せる。狭い敷地の測量や、構造物のすぐそばの測量にはこちらが向く。ただし点と点の間に視通が必要で、遠くの点に基準を持っていくのには手間がかかる。

実際の現場では、基準点のあたりはGNSSで、細かい部分はTSで、のように組み合わせることが多い。受験生としては、「GNSSは視通不要・上空視界が必要」「TSは上空不要・視通が必要」という対比で整理しておくと、問題に強くなる。ここにドローンを加えた3者の使い分けは、ドローン測量(UAV測量)の解説で整理している。



測量士補試験の計算問題パターン・公式一覧【保存版】
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6. 測量士補試験でGNSSが出る分野

測量士補試験では、GNSS測量は「基準点測量」まわりの分野で出る。出題のパターンはおおむね2つだ。

ひとつは知識問題で、GNSS測量機を使った基準点測量の取り扱い(使える衛星の考え方、観測の条件、アンテナの据え付け、上空視界など)について、正しい記述・誤った記述を選ぶ。もうひとつは計算問題で、基線ベクトルの成分(ΔX、ΔY、ΔZ)から、2点間の距離を求める。三平方の定理の3次元版を使うだけなので、型を覚えれば確実に取れる。解き方の型は、上の「あわせて読みたい」で紹介した計算問題の記事にまとめてある。

さらに、GNSSを使って標高を求める問題(GNSS標高測量)が出ることもある。楕円体高、ジオイド高、標高の3つの関係がポイントになる。

どの年度にどんな問題が出ているかは、測量士補の過去問まとめから年度別に辿れる。解いた問題について、「方式の違い」「誤差要因」「計算」のどれで間違えたかをメモしておくと、復習がぐっと楽になる。

境さんのコメント
境さんによると、仕入れの現場で、測量会社の話にGNSSという言葉が出てくる場面はあまり多くない。ただ、現地の状況を見て「ここは空が開けているからGNSSでいけそうだ」「このあたりは建物が多いからTSだ」と判断を聞くと、現場ごとに道具を使い分けているのだと分かるという。
学習を進めて、この使い分けの理由を自分の言葉で説明できるようになってきた。見積もりや段取りの話を聞くとき、何がネックなのかが見えるようになったのは、仕事の面でも収穫だと見ている。

7. 仕入れ営業にとってのGNSS測量

仕入れ営業が自分でGNSS受信機を触ることはまずない。それでも、測量会社との打ち合わせで「GNSSで基準点を引き込みます」「この現場はTSが中心です」といった説明が出たときに、何をしているのか分かっているのとそうでないのとでは、段取りの読みが変わる。上空が開けているか、周囲に高い建物があるか、といった現場条件が、観測方法や手間に響くからだ。

測量の知識が仕入れ判断にどう活きるのかは、測量士補の知識は不動産の仕入れ営業にどう活きる?に全体像をまとめている。

体系的に学んで、GNSSから計算問題までを効率よく押さえたいなら、価格とカリキュラムを比較したページが判断材料になる。

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よくある質問

Q. GNSS測量とGPS測量は同じですか?
A. 実務ではほぼ同じ意味で使われますが、厳密には違います。GNSSは衛星測位システム全体の総称で、GPSはその中のアメリカのシステムです。現在の測量は複数のシステムの衛星を使うので、GNSS測量と呼ぶのが正式です。

Q. RTK測量とスタティック測量の違いは何ですか?
A. 結果が出るタイミングが違います。スタティックは観測データを持ち帰ってから解析する後処理型、RTKは観測しながらその場で位置を出すリアルタイム型です。細かい使い分けや条件は作業規程で決まっているため、国土地理院の公開資料で確認してください。

Q. 電子基準点は誰でも使えますか?
A. 観測データは公開されていますが、公共測量で使う場合は所定の手続きが必要です。使い方や手続きは国土地理院で確認できます。

Q. 山の中や市街地でもGNSS測量はできますか?
A. 上空の視界が遮られるほど難しくなります。そのような場所ではTSを併用することが一般的です。個別の現場でどの方法が向くかは、測量会社や土地家屋調査士に確認してください。

Q. 試験で計算問題が出ますか?
A. 基線ベクトルの成分から2点間の距離を求める問題が、近年の試験で出題されています。年度ごとの出題内容は、過去問で確認するのが確実です。

まとめ

  • GNSSは衛星測位システムの総称で、GPSはその一部。測量ではGNSSと呼ぶ
  • 方式は「長く観測」「動きながら観測」「その場で結果を出す」の軸で整理できる(スタティック、キネマティック、RTK、ネットワーク型RTK)
  • 電子基準点の観測データはネットワーク型RTKなどの土台になっている。使い方は国土地理院で確認
  • 誤差の要因は、上空視界、マルチパス、電離層・対流圏、アンテナ位相特性。試験では原因と対策をセットで問われる
  • GNSSは視通不要だが上空視界が必要、TSは視通が必要だが上空不要、という対比で使い分ける

出典・参考

  • 国土地理院の公開資料(GNSS測量・電子基準点・作業規程の準則): 国土地理院のウェブサイトで確認できます。本記事では、国土地理院の個別ページの内容を直接確かめられていないため、精度・点数・観測条件などの具体的な数値は載せていません。
  • 編集部の過去問解説(令和8年・令和7年の測量士補試験)の記述をもとに、出題傾向を整理しました。
  • 作業規程の準則・測量法などの条文は未確認(許可待ち)。

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