河川測量とは?距離標・水準基標・定期縦断横断・深浅測量の流れと測量士補試験での出方

測量士補

結論から先に言うと
河川測量は、河川や海岸の調査と、河川の維持管理に使う測量のこと。測量士補試験では応用測量の分野で出て、距離標は200mおき・水準基標は5〜20kmおきといった数字と、各作業が何の図を作るのかを問う形が続いています。この記事では、準則の河川測量の章を開いて確かめた工程と数字を、編集部が作った計算例と一緒に並べました。路線(道路)の縦断・横断との違いは縦断測量・横断測量の記事で先に押さえておくと、混ざりません。

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測量士補のテキストで路線測量の次に河川測量の章が来ると、また「縦断」「横断」が出てきて、おや、と思う人は多いだろう。道路でやった作業と名前が似ているのに、基準になる点が違う。道路は中心杭、川は距離標。ここを切り分けられるかどうかが、この分野の最初の関門になる。

この記事では、河川測量が応用測量のどこに位置するかを確かめたうえで、準則に並んでいる作業を順番にたどる。そのあと、横断面の面積と水位からの深さを計算する例題を解き、試験の出方を整理して、最後に河川に近い土地を見るときの一般的な見方を添える。

本記事の情報について
条番号・工程名・数字は、国土地理院が掲載している「作業規程の準則」の全文PDFと、令和7年・令和8年の測量士補試験の問題・正解PDFを開いて確かめたものだけを書いています。計算例は編集部が作ったもので、実在の河川や案件ではありません。数値はすべてPythonで検算しました。


1. 河川測量は応用測量のどこにあるのか

準則の定義と細分

準則の第660条は、河川測量を「河川、海岸等の調査及び河川の維持管理等に用いる測量」と定めている。応用測量の編の中では、路線測量、用地測量と並ぶ一章だ。河川や水路を新しく作ったり改修したりする測量は、河川測量ではなく前の章(路線測量)の規定を準用する、とも書かれている。つまり、河川測量が主に扱うのは「すでにある川を測って、図面と数字で管理していく」ほうだ。

第661条で、河川測量は次の8つに細分されている。

  1. 作業計画
  2. 距離標設置測量
  3. 水準基標測量
  4. 定期縦断測量
  5. 定期横断測量
  6. 深浅測量
  7. 法線測量
  8. 海浜測量及び汀線測量

試験で名前が出やすいのは、2〜6番の5つ。この記事の中心もここに置く。

公共測量の話であることを確認しておく

準則は公共測量の作業の基準だ(公共測量の位置づけは公共測量の記事に書いた)。試験の問題文にも「公共測量における河川測量について」と書かれている。民間の工事で川を測る場合の細かなやり方まで、準則が決めているわけではない。


2. 河川測量の作業の流れ

河川測量は、距離標を置き、その高さの基準になる水準基標を決め、定期的に縦と横を測る、という順で組み立てられている。ここからは各作業を、条文に沿って見ていく。

距離標設置測量(第663・664条)

「距離標設置測量」とは、河心線の接線に対して直角方向の両岸の堤防法肩や法面などに、距離標を設置する作業だ。川を横切る向きに、左右の岸へ1組ずつ印を打っていくイメージになる。

設置のしかたは次のとおり。

  • 距離標は、あらかじめ地形図上で位置を選び、その座標値をもとに、近くの3級基準点等から放射法などで設置する
  • 設置間隔は、河口または幹川への合流点に設けた起点から、河心に沿って200メートルを標準とする
  • 距離標の位置を示すため、点の記を作る

「河心に沿って」とあるのがポイント。川は曲がっているので、岸の直線距離ではなく、川の真ん中を流れに沿って測った長さで数える。基準点との関係は、基準点測量の記事にある3級基準点の説明とつなげて読むとよい。

水準基標測量(第665・666条)

「水準基標測量」とは、定期縦断測量の基準となる水準基標の標高を定める作業。方法は2級水準測量で行う。水準基標は水位標に近い位置に設置し、設置間隔は5キロメートルから20キロメートルまでを標準とする。

距離標が200m、水準基標が5〜20km。この2つの数字は桁が違うので、試験では「2km」「200km」などにすり替えて出されることがある。距離標が細かい目盛り、水準基標が大きな基準の杭、と役割の違いで覚えると取り違えにくい。

定期縦断測量(第667・668条)

「定期縦断測量」とは、定期的に距離標等の縦断測量を行い、縦断面図データファイルを作る作業だ。測るのは、左右両岸の距離標の標高、堤防の変化点の地盤、主要な構造物について、距離標からの距離と標高。

観測は、原則として水準基標から出発して別の水準基標に結合させる。平地は3級水準測量、山地は4級水準測量。道路の縦断測量(第649条)では平地が4級水準測量、山地が簡易水準測量だったので、河川の定期縦断は等級が一つ高いことになる。ここは混ざりやすい。

縦断面図データファイルには、測点・単距離・追加距離のほか、計画河床高、計画高水位、計画堤防高、左岸堤防高、右岸堤防高、水準基標、水位標などのデータを入れる(第668条第5項)。図紙に出すときの縮尺は、横が1,000分の1から100,000分の1、縦が100分の1から200分の1を標準とする(同条第6項)。

定期横断測量(第669・670条)

「定期横断測量」は、定期的に、左右の距離標を結ぶ視通線上で横断測量を行い、横断面図データファイルを作る作業だ。地形の変化点などについて、距離標からの距離と標高を測る。

川の横断は、水際杭を境に陸部と水部に分ける。陸部は道路の横断測量(第2章第7節)の規定を準用し、水部は次に述べる深浅測量の規定を準用する。陸部の測量範囲の標準は堤内20〜50m(第670条第3項)。川の内側(水の側)だけでなく、堤防の向こうの、人が住んでいる側も一部測るということになる。

横断面図データの縮尺は、横が100分の1から1,000分の1、縦が100分の1から200分の1が標準(同条第6項)。縦断のほうが横の縮尺の幅が広いので、ここも数字が違う。

深浅測量(第671・672条)

「深浅測量」とは、河川、貯水池、湖沼、海岸で、水底の地形を明らかにするために、水深・測深位置(船位)・水位(潮位)を測り、横断面図データファイルを作る作業。定期横断測量の水部は、これで測る。

  • 水深の測定は音響測深機で行う。水深が浅いときは、ロッドまたはレッドによる直接測定とする
  • 測深位置の測定は、ワイヤーロープ、TS等、GNSS測量機のいずれか。ワイヤーロープの場合の測点間隔は5m
  • 音響測深機は、毎日1回以上、その日測る水域かその付近で深度校正をする
  • 水深測定は、原則として指定の位置で往復測定を行い、平均値を採る
  • 水位または潮位は、水位標、検潮所、仮水位標などによる観測か、直接測定で測る

試験では、「深浅測量は縦断面図を作る」という誤りが出る。作るのは横断面図データファイルだ。

法線測量・海浜測量・汀線測量

残りの3つも名前だけ確認しておく。法線測量(第673条)は、計画資料に基づいて、築造物の新設や改修を行う場所の現地の法線上に杭を設置し、線形図データファイルを作る作業。海浜測量と汀線測量(第675条)は海岸側の測量で、この記事では詳しく扱わない。

作業の関係を一枚で

作業 何をする 主な成果 覚える数字
距離標設置測量 両岸に距離標を置く 距離標の位置(点の記) 河心に沿って200m標準
水準基標測量 水準基標の標高を決める 水準基標の標高 2級水準測量・5〜20km
定期縦断測量 距離標等の高さを測る 縦断面図データ 平地3級・山地4級
定期横断測量 左右距離標の視通線上を測る 横断面図データ 陸部は堤内20〜50m
深浅測量 水底の形を測る 横断面図データ 往復測定・毎日校正


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3. 計算例:距離標の本数・横断面積・水深(編集部オリジナル)

ここからは編集部で作った数字で計算する。実在の河川ではない。

例題1:距離標の本数と追加距離

起点から河心に沿って12,400mの区間に、200mおきに距離標を置く。起点を0mとして両端を含めると、12,400÷200=62区間なので、距離標の位置は63か所になる(0m、200m、…、12,400m)。たとえば起点から37区間目の端の距離標は、37×200=7,400mの位置になる。

数え間違いは「区間の数」と「点の数」を混ぜるところで起きる。点は区間より1つ多い。

例題2:横断面積を台形で求める

ある距離標の位置で、左岸側から右岸側へ向かって、次のように距離と標高を測ったとする。水位は標高12.40mとする。

左岸からの距離 標高 水深(12.40−標高)
0m 15.00m 水の上
5m 13.50m 水の上
10m 12.40m 0.00m(水際)
15m 11.20m 1.20m
20m 10.40m 2.00m
30m 10.00m 2.40m
40m 10.80m 1.60m
50m 11.90m 0.50m
55m 12.40m 0.00m(水際)
60m 13.80m 水の上

水の部分(10〜55m)の面積を、隣り合う2点の水深の平均×点間距離(台形)で足していく。

  • 10〜15m:(0+1.20)÷2×5=3.00
  • 15〜20m:(1.20+2.00)÷2×5=8.00
  • 20〜30m:(2.00+2.40)÷2×10=22.00
  • 30〜40m:(2.40+1.60)÷2×10=20.00
  • 40〜50m:(1.60+0.50)÷2×10=10.50
  • 50〜55m:(0.50+0)÷2×5=1.25

合計は64.75㎡。水面幅は45mなので、平均水深は64.75÷45≒1.44m、最大水深は2.40mだ。測点の取り方が粗いほど台形で近似した面積は実際とずれる。これが、定期横断測量で「地形の変化点」を拾うことになっている理由でもある。

例題3:水位から河床の標高を出す

深浅測量では、水面から水底までの深さを測る。標高そのものを測っているわけではないので、河床の標高=そのときの水位の標高−水深で求める。

水位が標高12.40m、音響測深機で読んだ水深が3.10mなら、河床は12.40−3.10=9.30m。同じ地点の測深中に水位が12.52mへ上がっていたなら、12.52−3.10=9.42m。水位の観測を忘れたり、測り始めの値のままにしたりすると、12cmずれる。深浅測量が水位(潮位)の測定をセットにしているのは、この引き算のためだ。

例題4:距離標間の河床の勾配

200m間隔の距離標で河床の標高が8.20m、8.00m、7.84m、7.62mだったとする。区間ごとの高低差は0.20m、0.16m、0.22m。勾配は0.20÷200=1/1,000、0.16÷200=1/1,250、0.22÷200≒1/909。3区間全体では0.58m÷600m≒1/1,034になる。

例題5:縮尺の見た目

縦断面図を横1/10,000、縦1/200で描いたとする。横と縦の縮尺比は10,000÷200=50倍。200mの距離標の間隔は、図の上では2cm。2.4mの高さ差は12mmで出る。縦を50倍に引き伸ばした図なので、実際の傾きよりずっときつく見える。道路の縦断図と同じ注意点だ(この話は道路側の記事に詳しい)。

水準測量の計算そのもの(昇降式・器高式など)は、下のカードの記事に分けた。ここでは、川の測量で何を引き算しているかだけを見ている。



水準測量の計算方法を例題で解説|昇降式・器高式・誤差の配分まで
水準測量の計算方法を例題で解説|昇降式・器高式・誤差の配分まで

4. 測量士補試験での出方

編集部が国土地理院の問題PDFを開いて確かめたのは、令和7年と令和8年のNo.28の2問だ。どちらも応用測量の分野の最後の問題で、河川測量の正誤判定。

令和8年No.28(正解は3):a〜eの文のうち、明らかに間違っているものだけの組合せを選ぶ形式だった。a(水準基標測量は、定期縦断測量の基準となる水準基標の標高を定める作業)、d(深浅測量で水深が浅い場合はロッド又はレッドで直接測定)、e(定期横断測量の測量範囲は堤内地も一部含む)は準則どおり。間違いはb(距離標の設置間隔を原則2kmとする)とc(深浅測量で縦断面図データファイルを作成する)で、選択肢3のb、cが正解になる。

令和7年No.28(正解は4):1〜5のうち明らかに間違っているものを1つ選ぶ形式。距離標の位置選定と3級基準点からの放射法、200mの設置間隔、定期縦断測量の測定内容、法線測量の説明はどれも準則どおり。間違いは、縦断面図データを出力するときの横の縮尺を「100分の1から500分の1まで」とした選択肢4。準則の標準は横が1,000分の1から100,000分の1だ。

2年とも、条文の数字・成果物を1つ入れ替える形だった。計算問題ではなく、準則の文言を覚えているかどうかを問う知識問題として出ている。解説は令和8年 第7弾(No.25〜28)と令和7年 第7弾(No.25〜28)にある。ほかの年度の出題内容は、この記事では確かめていないので、傾向を断定しない。

覚えるべきことを絞ると、次の4つになる。

  1. 距離標は河心に沿って200mが標準
  2. 水準基標は水位標に近い位置で、間隔は5〜20km、2級水準測量
  3. 定期縦断は水準基標から水準基標へ。平地3級・山地4級
  4. 深浅測量・定期横断が作るのは横断面図データ。縦断面図データは定期縦断

5. まとめ

  • 河川測量は、河川・海岸の調査と河川の維持管理に使う測量(第660条)。細分は8つ(第661条)
  • 距離標は河心に沿って200m標準、水準基標は5〜20km標準で2級水準測量
  • 定期縦断は水準基標から水準基標へ、平地3級・山地4級。縮尺は横1,000〜100,000分の1、縦100〜200分の1
  • 定期横断の陸部は堤内20〜50m。水部は深浅測量の規定を準用。深浅測量が作るのは横断面図データ
  • 計算は、台形で面積、水位−水深で河床の標高。水位の観測がセット
  • 令和7・8年のNo.28は、条文の数字・成果物の入れ替えを見抜く知識問題だった

この分野は、数字が少なく、範囲も狭い。計算を後回しにして、先にここで確実に1問取りたい。


よくある質問(FAQ)

Q1. 距離標は何メートルおきに置きますか?

準則では、河口または幹川への合流点に設けた起点から、河心に沿って200mを標準としています(第664条第2項)。試験では「2km」などへのすり替えが出ました。

Q2. 縦断測量と河川の定期縦断測量は同じものですか?

どちらも高さを測る点は同じですが、道路は中心杭の高さ、河川は左右両岸の距離標の高さと堤防の変化点を測ります。基準も、道路は仮BM、河川は水準基標です。

Q3. 深浅測量では何の図を作りますか?

横断面図データファイルです。縦断面図ではありません。令和8年のNo.28は、この入れ替えが出題されました。

Q4. 河川に近い土地は、買ってはいけませんか?

この記事から言えることではありません。標高や地図の表示からは傾向までしか分からず、浸水するかどうかは、自治体が公表しているハザードマップなどの資料と、個別の土地の状況で判断することになります。

Q5. 河川の縦断図や横断図は閲覧できますか?

どの図面が保管され、閲覧や写しの交付ができるかは、河川を管理している機関ごとに違います。窓口へは、場所と欲しい図面の種類、閲覧か写しかを伝えると話が早くなります。


出典・参考

いずれも2026年10月31日に開いて確認した。

  • 国土交通省告示第413号「作業規程の準則」(国土地理院掲載の全文PDF): https://www.gsi.go.jp/common/000258734.pdf
  • 確認した箇所は、第5編 応用測量 第3章 河川測量の第660〜679条(要旨、細分、距離標設置測量、水準基標測量、定期縦断測量、定期横断測量、深浅測量、法線測量、海浜測量及び汀線測量、成果等)と、第645条(仮BM設置測量)
  • 国土地理院「令和8年測量士補試験問題」(No.28): https://www.gsi.go.jp/common/000278974.pdf
  • 国土地理院「令和8年測量士補試験解答」(No.28 の正解は3): https://www.gsi.go.jp/common/000278975.pdf
  • 国土地理院「令和7年測量士補試験問題」その2(No.28): https://www.gsi.go.jp/common/000270178.pdf
  • 国土地理院「令和7年測量士補試験の正解」(No.28 の正解は4): https://www.gsi.go.jp/common/000270180.pdf
  • 確かめられなかったもの: 令和7・8年以外の年度の河川測量の出題内容、各河川管理者の図面の閲覧・交付の運用、ハザードマップの想定条件の詳細。これらは本文で断定していない。

※本記事は一般的な解説記事です。個別の土地の浸水リスクや建築の可否は、自治体・河川管理者の公表資料と、建築士等の専門家にご確認ください。計算例は編集部が作成したもので、実在の河川・案件ではありません。

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