結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日実施の測量士試験・午前(択一式)から、No.17〜No.20の4問を解説します。4問とも「写真測量・レーザ測量」の分野で、デジタル航空カメラの重複度計算、写真地図作成の誤り組合せ、航空レーザ測量の取得点間距離の計算、UAVレーザ測量の基準値の穴埋めという構成です。測量士補の学習範囲より一段専門的な内容が続くので、この分野に苦手意識がある方は講座選びの前に比較ページで学習スタイルを確認しておくのも一つの手だと思います。
この記事について
測量士試験は午前(択一式・28問)と午後(記述式)の2部構成で、令和8年試験は測量士補試験と同じ2026年5月17日に実施されました。本記事は国土地理院公開の「測量士試験問題」「測量士試験解答」PDF(出典は末尾に明記)をもとに、午前の択一問題のうちNo.17〜No.20を編集部が要約・解説したものです。問題文の全文転載は避けているので、正確な文言・図表は必ず公式PDFでご確認ください。シリーズはNo.1から順に取り組んでいて、最初の3問は第1弾(No.1〜No.3)の記事にまとめてあります。監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者で、測量士補試験の受験者(測量士試験は未受験)という立場からコメントを添えています。
No.17 デジタル航空カメラによる重複度の計算(標高300〜700mの地域)
論点の要約:標高300mから700mまでの範囲がある土地を、デジタル航空カメラで鉛直下向きに公共測量の数値写真撮影をする計算問題です。撮影範囲全体で隣接コースとの重複度が最小35%になるように計画したとき、標高300m(撮影基準面)での重複度は最大何%になるかを求めます。条件として、画面距離10cm、撮像面での素子寸法10μm、画面の大きさ26,000画素×17,000画素(画面短辺が撮影基線と平行)、撮影基準面(標高300m)での地上画素寸法20cmが与えられています。
解答へのアプローチ:まず、基準面(標高300m)での地上画素寸法(GSD)20cmから、飛行高度Hを逆算します。GSDは「素子寸法×(H−地上の標高)÷画面距離」で求まる関係なので、
0.20m = (0.00001m ÷ 0.1m) × (H − 300m)
H − 300 = 2,000m
H = 2,300m
次に、標高が最も高い700m地点で(H−700)が最も小さくなる点に注目します。ここが1枚の写真がカバーする地上範囲がいちばん狭くなる、つまり重複度が最も厳しくなる地点です。問題文の「重複度が最小で35%」は、この700m地点で成立させる条件だと読み替えられます。
GSD(700m) = 0.0001 × (2,300 − 700) = 0.16m
カバー幅(700m) = 26,000画素 × 0.16m = 4,160m
コースに直交する方向(26,000画素側、隣接コースとの重複に関わる方向)のカバー幅が4,160mなので、重複度35%を満たすコース間隔は、
コース間隔 = 4,160m × (1 − 0.35) = 2,704m
問題文の条件どおり撮影は等高度・コース間隔一定で行うので、このコース間隔を標高300m地点にもそのまま当てはめます。標高300mでのカバー幅は与えられた地上画素寸法20cmから、
カバー幅(300m) = 26,000画素 × 0.20m = 5,200m
重複度(300m) = (5,200 − 2,704) ÷ 5,200 = 0.48 = 48%
標高が低い場所ほど写真1枚がカバーする地上範囲は広くなるため、同じコース間隔なら重複度は大きくなります。したがって正解は選択肢2(48%)です。
関連知識ポイント:この問題は「デジタル航空カメラの重複度」と「地形の起伏」を組み合わせた典型パターンです。標高差のある土地では、撮影基準面より高い場所ほど写真1枚の地上カバー範囲が狭くなり、そこが重複度の「最も厳しい地点」になるという関係を押さえておくと、似た設定の問題にも対応しやすくなります。なお、問題文には関数表の注記がありますが、この問題は比例計算だけで解け、関数表は使いません。
No.18 公共測量における写真地図作成の誤り組合せ
論点の要約:公共測量における写真地図作成について述べたa〜eの5つの記述から、「明らかに間違っているものだけの組合せ」を選ぶ問題です。高架橋部のひずみ修正、数値地形モデル(DTM)での陸水面の扱い、既存DTM活用時の点検、地上画素寸法の関係、DTMファイルの点検方法が題材になっています。
解答へのアプローチ:まずaの記述。「峡谷をまたぐ高架橋部分のひずみを、ブレークライン法で取得した橋桁直下の地形の標高を用いて正射変換すれば修正できる」という内容ですが、これは誤りです。高架橋のように地表から浮いた構造物をきちんと正射変換するには、橋そのものの表面(橋面)の標高を反映させる必要があり、橋の真下にある地面の標高を流用しても位置ずれは直りません。ブレークライン法で取得すべきなのは橋面(橋桁の上)の標高であって、橋の下の地形の標高を使っても高架橋部分のひずみは修正できない、という点が問われています。
bの記述は、「河川及び小規模な湖沼などの陸水面には、標高値にマイナス9999メートルなどの現実に存在しない値を一律に与える」という内容です。写真地図の数値地形モデルは正射変換に使うためのものなので、陸水面に現実に存在しない値を与えてしまうと、その範囲の画像を正しく正射変換できません。河川や湖沼などの陸水面には、水涯線など周辺の標高をもとに現実的な標高値を与えるのが基本的な考え方です。正解表でもbは誤りの扱いです(規程上の具体的な扱いは作業規程の準則で確認してください)。
残るc・d・eは正しい記述です。既存の数値地形モデルを流用する場合はデータ品質や経年変化の点検が必要であること(c)、地上画素寸法8cmの数値写真から、それより粗い10cmの写真地図を作成できること(d、精度を落とす方向の変換は成立します)、DTMファイルの点検はデジタルステレオ図化機などで別途計測した標高点と、DTMファイルから抽出した標高点を比較して行うこと(e)は、いずれも公共測量の実務に沿った内容です。
以上から、誤りの組合せはa・bで、正解は選択肢1です。
関連知識ポイント:写真地図作成の問題は「正射変換をどう成立させるか」という一点に集約されます。地表面と構造物表面のどちらの標高を使うべきか、水面のように標高が定まらない部分をどう扱うかという、DTMの品質管理そのものを問う出題が多いのが測量士試験らしいところです。仕入れ営業の実務でも、道路や水路をまたぐ土地の高低差は現地確認の要注意ポイントになるので、境さんのコメントも参考にしてみてください。
No.19 航空レーザ測量の飛行方向の標準的取得点間距離
論点の要約:公共測量で数値地形モデルを作成するため航空レーザ測量を行った際の、飛行方向の標準的取得点間距離を求める計算問題です。レーザ測距装置のパルスレート(1秒あたりの照射回数)は毎秒50万回、スキャンレート(1秒あたりの走査回数)は毎秒100往復、スキャン角度は±30°、対地高度2,000m、対地飛行速度は秒速80mという条件で、計測範囲は平たん、機体の傾きや回転は考慮しません。
解答へのアプローチ:飛行方向の点間隔は、航空機の対地飛行速度を「1秒あたりに地表を横切るスキャンラインの本数」で割ることで求められます。スキャンレート100往復/秒というのは、1秒間に往路と復路をセットで100回繰り返すという意味なので、実際に地表を横切るスキャンラインの本数は往路・復路を合わせて1秒あたり200本になります。
飛行方向の標準的取得点間距離 = 対地飛行速度 ÷ (スキャンレート × 2)
= 80m/s ÷ (100 × 2)回/s
= 80 ÷ 200
= 0.4m
正解は選択肢2の0.4mです。パルスレート(毎秒50万回)やスキャン角度(±30°)、対地高度(2,000m)は、この設問では使いません。これらはスキャン幅や左右方向(飛行直交方向)の点密度を求めるときに必要になる数値で、今回問われている「飛行方向」の間隔の計算には関係しないためです。
関連知識ポイント:航空レーザ測量の計算問題は、パルスレート・スキャンレート・スキャン角度・対地高度・対地飛行速度と条件がずらりと並ぶのが特徴です。No.17のような撮影計画の問題と同様、どの数値が今回の問いに必要なのかを見極める整理力が問われます。数値をとりあえず全部使おうとすると逆に遠回りになるので、まず「何を聞かれているか」を確認してから使う条件を絞り込む解き方に慣れておくとよいでしょう。
No.20 UAVレーザ測量の基準値の穴埋め
論点の要約:公共測量におけるUAVレーザ測量について述べたa〜dの文中、空欄ア〜エに入る語句の組合せを選ぶ問題です。GNSS観測データの取得間隔、GNSS受信機の周波数、レーザ光の入射角の基準、コースごとの点検・調整の比較対象がテーマになっています。
解答へのアプローチ:aの文は、GNSSアンテナ及びGNSS受信機の性能について、GNSS観測データを[ア]の間隔で取得できるものとする、という内容。UAVレーザ測量では機体の姿勢・位置を高精度に求める必要があるため、GNSS観測データは1秒以下の間隔で取得できる性能が標準とされています。
bの文は、GNSSアンテナ及びGNSS受信機が[イ]で搬送波位相を観測できることを標準とする、という内容。単一の周波数だけでは電離層遅延などの誤差を十分に補正できないため、2周波での観測が標準です。
cの文は、計測時のスキャン角度について、計測対象物へのレーザ光の入射角(地形、地物などとレーザ光がなす角)を[ウ]とするとともに、必要な計測距離を満たすように定める、という内容。レーザ光が地表に対して浅い角度(グレージング入射)で当たると反射が弱くなり計測精度が落ちるため、入射角は45°以上を確保することが標準とされています。
dの文は、最適軌跡解析の結果とレーザスキャンデータを統合解析して点群データを作成する際、全てのコースにおける隣接コースとの重複部において、コースごとの[エ]を比較して点検・調整を行う、という内容。隣接するコース同士で計測結果がずれていないかを確認する工程なので、比較するのは地表の高さそのもの、つまり標高値です。
まとめると、ア=1秒以下、イ=2周波、ウ=45°以上、エ=標高値となり、正解は選択肢3です。
関連知識ポイント:UAVレーザ測量は、航空レーザ測量よりも低空・低速で飛行できる分、GNSS観測やスキャン角度の基準値が細かく定められています。数値だけを丸暗記すると似た選択肢に引っかかりやすいので、「なぜ1秒以下の間隔が必要か」「なぜ2周波が標準か」という理由とセットで押さえておくと、初見の組合せにも対応しやすくなります。
他の問題も通しで解くなら
このシリーズの前後の回:前の回は令和8年 測量士 午前【第5弾】No.14〜16 地形測量、次の回は令和8年 測量士 午前【第7弾】No.21〜24 地図編集・GISです。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。
今回のNo.17〜No.20は、写真測量とレーザ測量という、測量士試験でも特に専門性が高い分野からの出題でした。計算問題(No.17・No.19)は条件が多く見えても使う数値は限られていることが多く、知識問題(No.18・No.20)は用語の丸暗記より「なぜその基準になっているか」を理解しているかで差がつく印象です。写真測量・レーザ測量の分野で不安が残った方は、独学で個別に潰すより、3社のカリキュラムを比較して学習の進め方を検討するのも選択肢の一つです。
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まとめ:次に何をすべきか
No.17は撮影計画の重複度計算、No.18は写真地図作成の品質管理、No.19はレーザ測量の点間隔計算、No.20はUAVレーザ測量の基準値。並べてみると、写真測量・レーザ測量という分野は「どういう条件で正しいデータが得られるか」を一貫して問うているのが分かります。測量士補の学習だけではあまり触れない領域なので、初見で戸惑うのは自然なことです。午前で間違えた分野があった方は、独学で個別に補うより、体系立てて学び直せる講座で演習量を確保したほうが効率的な場合もあります。
監修者・境さんより
No.18の「橋の下の地面の標高を使い回しても直らない」という話は、感覚として分かる気がします。仕入れの現場でも、擁壁や高低差のある土地を見るとき、地面の高さと構造物の高さを同じもののように扱ってしまうと後で数字が合わなくなる場面があるので。No.17やNo.19のような計算は、まだ自分にはすらすら解けるレベルではないですが、条件を1つずつ整理していけば筋道はたどれるなという手応えはあります。仕入れ営業の実務に測量の知識がどう活きるかは別の記事にまとめているので、興味があれば読んでみてください。
過去問演習を進める中で「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」「測量士補から測量士へのステップアップを具体的に知りたい」という方は、以下もあわせて参考にしてください。
なお、問題を単元別(計算問題/法規/写真測量・レーザ測量など)に横断して復習できるインデックスページ、および間の号数(No.4〜No.16)を扱う解説記事、午後(記述式)の解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。
出典・参考情報(2026年9月26日確認)
- 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
- 国土地理院「令和8年測量士試験問題(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278970.pdf )
- 国土地理院「令和8年測量士試験解答(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278971.pdf )
※本記事の問題要約・解説は編集部が公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現は国土地理院の公式PDFでご確認ください。計算過程の数値は関数表・条件設定により若干の誤差が生じる場合があります。






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