結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日実施の測量士試験・午前(択一式)のNo.4〜No.6を、国土地理院公表の公式問題・正解をもとに解説します。今回のテーマは公共測量の現場対応、座標の回転変換、測量法が定める測量の基準の3本立て。法規と計算が交互に出てくるのが測量士試験の午前らしいところです。解いてみて弱い分野が見えてきたら、独学で埋めるか講座で体系的に固めるか、講座選びで迷ったときの比較ページも参考にしてください。
この記事について
前回のNo.1〜No.3の解説に続く第2弾です。国土地理院が公開している「測量士試験問題」「測量士試験解答」PDF(出典は末尾に明記)をもとに、午前の択一問題のうちNo.4〜No.6を編集部が要約・解説しました。著作権に配慮して問題文の全文転載は避けているので、正確な文言は公式PDFで確認してください。監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者で、日常的に測量図面や境界立会いの現場に接しています(測量士補試験の受験者で、測量士試験は未受験です)。今回もその立場からコメントをもらいました。
No.4 公共測量における測量作業機関の現場対応
論点の要約:公共測量における測量作業機関の対応について述べたa〜eの5つの記述のうち、明らかに間違っているものだけの組合せを選ぶ問題です。運転前後のアルコールチェック、私有地の樹木伐採、UAVレーザ測量中の墜落事故報告、基準点測量における私有地立入り、大雨特別警報下での作業継続の可否と、現場対応の実務がまとめて問われています。
解答へのアプローチ:誤りはbとeの2つです。bは、私有地の樹木がGNSS観測の支障になったものの土地の占有者と連絡がつかず、作業員がその場の判断で伐採し後日連絡した、という記述。他人の土地にある樹木を無断で伐採する判断を、現場の作業員限りで下してよいわけではありません。連絡がつかないなら、伐採ではなく観測位置の変更や日程調整を検討するのが筋です。eは、屋外での測量作業中に大雨特別警報が発表されたが、ハザードマップ上は浸水想定区域外だと確認できていたので作業を継続した、という記述。特別警報は浸水だけでなく土砂災害や視界不良など複合的な危険を示すものなので、浸水想定区域外という一点だけを根拠に作業続行を判断するのは安全管理として不十分です。
残る3つ、aの運転前後のアルコールチェック、cのUAV墜落を航空法に基づき国土交通大臣へ速やかに報告した対応、dの私有地立入りに際して事前通知と身分証明書の携帯を指示した対応は、いずれも正しい記述です。特にdは測量法が定める土地の立入り手続き(事前通知・身分証明書の携帯)に沿った内容で、測量士補試験でもおなじみの論点になります。
関連知識ポイント:測量士補試験では土地の立入り手続きそのものが単独で問われますが、測量士試験ではそこにアルコールチェックやUAV事故対応、気象警報時の判断といった安全管理の実務が組み合わさってきます。法令知識だけでなく、現場で「誰の許可を得るべきか」「何を優先すべきか」を判断できるかを問う出題です。私有地への立入りという論点は、境界確定の立会い時に測量業者が土地所有者へどう説明するかという話にも通じます。境界確定の立会いを拒否された場合の進め方でも近い論点を扱っているので、あわせて見てみてください。
No.5 座標の回転変換(点Pを原点中心に30°回転)
論点の要約:二次元座標系で、ある点(x, y)を原点を中心に反時計回りに角度θだけ回転させたときの点(x’, y’)を求める式(回転行列)が与えられ、点P(1.08, 0.91)を原点Oを中心に反時計回りに30°回転させた点P'(x’_p, y’_p)の座標値に最も近い組合せを選ぶ計算問題です。関数の値が必要な場合は巻末の関数表を使うよう指示されています。
解答へのアプローチ:問題文で与えられた回転の式は次のとおりです。
x’ = x cosθ − y sinθ
y’ = x sinθ + y cosθ
巻末の関数表からsin30° = 0.50000、cos30° = 0.86603を読み取り、x = 1.08、y = 0.91、θ = 30°を代入します。
x’_p = 1.08 × 0.86603 − 0.91 × 0.50000 = 0.93531 − 0.45500 = 0.48031 ≒ 0.48
y’_p = 1.08 × 0.50000 + 0.91 × 0.86603 = 0.54000 + 0.78809 = 1.32809 ≒ 1.33
したがってP'(x’_p, y’_p) ≒ (0.48, 1.33)となり、選択肢3が正解です。図5を見ても、点Pを反時計回りに回転させるとy軸寄りに動くのでx座標は小さく、y座標は大きくなる方向に変化するはずで、計算結果の向きとも一致します。なお選択肢5の(1.39, 0.25)は、sinθの符号を逆にして時計回りに30°回転させた場合の値(x’ = 1.08 × 0.86603 + 0.91 × 0.50000 ≒ 1.39、y’ = −1.08 × 0.50000 + 0.91 × 0.86603 ≒ 0.25)と一致します。回転の向き(符号)を取り違えると別の選択肢に着地する作りになっているので、式5の−sinθの位置を必ず確認してください。
関連知識ポイント:回転行列を使った座標変換は、測量士補試験でも複素数や三角関数を使った座標計算として出題されますが、測量士試験では行列表現のまま角度と三角関数の値を当てはめる力が求められます。落とし穴は符号の取り違えとsin・cosの入れ替えで、慌てて暗算せず、式をそのまま書き下してから数値を代入する癖をつけておくと事故が減ります。座標の回転や変換は、次に扱う予定のトラバース測量の計算とも地続きの計算パターンなので、あわせて練習しておくと応用が利きます。
No.6 測量法における測量の基準
論点の要約:測量法(昭和24年法律第188号)が定める測量の基準について述べた1〜5の記述から、明らかに間違っているものを1つ選ぶ問題です。世界測地系における回転楕円体と地球の自転軸の関係、距離・面積の表示方法、位置の表示方法、基準点の標高成果の改定、ジオイドの定義が題材になっています。
解答へのアプローチ:誤りは選択肢5の「ジオイドは、重力の大きさが常に等しい面である」という記述です。ジオイドは重力ポテンシャル(位置エネルギー)が常に等しい面、つまり等ポテンシャル面であって、重力の大きさそのものが等しい面ではありません。実際には同じジオイド面上でも、緯度や地下の密度構造によって重力の大きさ(重力加速度の値)は場所ごとに異なります。「大きさが等しい」と「ポテンシャルが等しい」を混同させる、測地学の基礎理論らしい出題です。
他の4つの記述はいずれも正しい内容です。世界測地系で採用される回転楕円体の短軸が地球の自転軸と一致していること、距離・面積を測量法が規定する回転楕円体の表面上の値で表示すること、位置を原則として地理学的経緯度と平均海面からの高さで表示しつつ場合により直角座標・極座標・地心直交座標でも表示できること、国土地理院が基準点の標高成果を改定したことは、いずれも測量法および実際の運用に沿った記述です。前回のNo.1〜No.3で扱った測地系・ITRFの話とも地続きの単元で、測量士補の学習範囲を一歩超えた理論の正確さが問われます。
関連知識ポイント:ジオイドの定義は、測量士補試験でも「ジオイドは平均海面に近似した仮想的な面」という説明でよく登場しますが、測量士試験では「等ポテンシャル面である」という定義の核心部分まで正確に押さえておく必要があります。重力の大きさ(強さ)と重力ポテンシャル(位置エネルギー)は別の物理量だという理解が、この手のひっかけを防ぐ一番の対策です。
他の年度も通しで解くなら
このシリーズの前後の回:次の回は令和8年 測量士 午前【第3弾】No.7〜10 多角測量・GNSS測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。
測量士試験は記述式(午後)まで含めた模範解答が手元にあると、独学でも自己採点がしやすくなります。
※ここから先の商品リンクは広告(アフィリエイトリンク)です。価格・在庫はリンク先でご確認ください。
過去問を何年分解くかで迷っている方は、過去問演習の年数の目安をまとめた記事も参考にしてください(測量士補向けの記事ですが、周回の考え方は測量士にも応用できます)。
まとめ:次に何をすべきか
今回のNo.4〜No.6は、公共測量の現場対応、座標の回転変換の計算、測量法が定める測量の基準という3つの角度からの出題でした。知識問題も暗記だけで終わらず、「なぜそう定義されているのか」まで理解していないと引っかかる作りになっているのが、あらためて測量士試験らしいところだと感じます。No.5のような計算問題でつまずいた方は、公式を覚えるだけでなく、途中式を省略せず手を動かす練習を積んでおくと本番でのミスが減ります。
法規・計算・測地の基礎理論と、午前だけでも扱う範囲は広く、3社のカリキュラムと価格を比較したページで自分に合う学び方を確認しておくのも一つの手です。
監修者・境さんより
「No.4のbの話、私有地の木を無断で切って後で連絡する、というのは仕入れ営業の感覚だと結構ゾッとする話です。境界立会いの現場でも、隣地の所有者に無断で何かを動かすと、その後の関係が一気にこじれることがあります。連絡がつかないなら一旦引く、というのが実務でも基本線だと思うので、この問題の答えには納得感がありました。No.5の回転計算は、正直手を動かさないと符号でミスる自信があります……。No.6のジオイドの話は、測量士補の教材でも『重力が等しい面』とざっくり覚えていたので、ポテンシャルと大きさの違いまで詰めて考えたことはありませんでした。今回勉強になりました。」
過去問を解いて自分の弱点分野が見えてきたら、独学で個別に潰すか、体系立てて学べる講座で埋めるかを選ぶタイミングです。判断に迷ったら、通信講座3社の違いをまとめたページから検討してみてください。
なお、問題を単元別(法規/計算問題/測地・座標系/作業規程)に横断して復習できるインデックスページ、および問題ごとに1本ずつ独立させた過去問解説記事(No.7以降)、午後(記述式)の解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。
出典・参考情報(2026年9月26日確認)
- 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
- 国土地理院「令和8年測量士試験問題(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278970.pdf )
- 国土地理院「令和8年測量士試験解答(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278971.pdf )
※本記事の問題要約・解説は編集部が公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現は国土地理院の公式PDFでご確認ください。







コメント