真北・磁北・座標北の違いとは?偏角と子午線収差、図面の北が少しずつ違う理由【仕入れ営業目線】

測量士補

結論から先に言うと
「北」には3種類あります。地球の自転軸が指す真北、方位磁石が指す磁北、平面直角座標のX軸が向く座標北です。真北と磁北のずれが「偏角」、真北と座標北のずれが「子午線収差」にあたります。図面の北が地図の北と少し違って見えるのは、たいてい図面の間違いではなく、どの北を使っているかの違いです。測量の用語を体系的に押さえたいなら、3社の比較表で講座の違いを見ておくと進め方が決めやすくなります。

地積測量図の矢印、建築図面の配置図の矢印、住宅地図の矢印。同じ敷地なのに、重ねてみると北の向きが数度ずれている。仕入れの現場で、そんな経験をした人もいるだろう。

このずれは、たいてい誰かのミスではない。「北」という言葉が、実は少なくとも3つの別のものを指しているからだ。測量士補の勉強でも、真北・磁北・座標北、偏角、方向角と方位角といった言葉が一度に出てきて、頭の中で混ざりやすいところでもある。

この記事では、3つの北の違いを整理し、ずれを生む偏角と子午線収差の考え方を説明したうえで、図面の方位記号をどう読むか、日影や方位を見るときに何に気をつけるかまでを書く。偏角のように場所と年で動く値は、出典の年と地点を添えている。建築の日影規制など法令の要件、個別の土地の方位の確定は、ここでは扱わない。


1. 3つの北:真北・磁北・座標北

まず3つを並べておく。

呼び方 どの北か 何で決まるか
真北 地球の北(本当の北) 子午線に沿って北を向く方向。地図上の「地図の北」もこれ
磁北 方位磁石が指す北 地球の磁場。場所と年で動く
座標北 平面直角座標系のX軸の正の向き 座標系の約束ごと。系ごとに原点がある

真北は、地球上のどの地点でも「その地点の子午線に沿って北へ向かう方向」だ。国土地理院は、方位磁石の指す北と対比して「地図の北(本当の北)」という言い方をしている。

磁北は、方位磁石の針が指す向き。地球の磁場の向きで決まるので、測量や地図の約束ごととは別の世界の北になる。

座標北は、平面直角座標系を使うときだけ出てくる北だ。国土地理院が案内している定義では、X軸は座標系原点で子午線に一致する軸で、真北に向かう値を正とする。つまり座標系の原点の上では、真北と座標北はぴったり重なっている。原点から離れたところでどうなるかは、次の節以降で見ていく。なお地図の分野では、座標北を「方眼北」と呼ぶことがあるが、この呼び方は国土地理院の一次資料では確かめていない。この記事では「座標北」で通す。

座標系そのものや、X軸が北、Y軸が東という読み方は、平面直角座標系と測地系の解説で詳しく書いたので、ここでは繰り返さない。

2. 真北と磁北のずれ:偏角

偏角は「場所と年」で変わる

方位磁石の北と真北の差を、偏角という。国土地理院の説明では、磁北が真北より西にある場合を西偏、東にある場合を東偏と呼ぶ。現在の日本では、偏角0度の南鳥島を除くすべての地域が西偏だ。

大きさは場所によってかなり違う。国土地理院が公表した磁気図2020.0年値(2020年1月1日時点の値)で、札幌では磁北が地図の北より約10度西、那覇では約6度西にずれる。同じ日本でも、この年の値では札幌のほうが那覇より大きい。東京については、国土地理院が2022年2月に発表した資料に「この50年間で、東京の偏角は西へ6度20分から7度40分へと、約1度20分ずれが大きくなった」とある。

ここで大事なのは、偏角は一度決まったら動かない定数ではなく、年とともに変わる値だという点だ。同じ資料で、国土地理院は磁気図を5年ごとに公表している。偏角の数値データは、真北を基準に反時計回り(西回り)を正として載せている。

古い図面の「磁北」をそのまま使えない理由

編集部の整理として書くと、方位磁石で方位を取って作った図面は、取った年の偏角を含んでいる。いま同じ場所で磁石を当てれば、数十年前より偏角が大きくなっているので、図面の磁北と今の磁北は一致しない。図面に「磁北」と書いてあるときは、いつ作った図面かも一緒に見る必要がある。

数値を知りたいときは、国土地理院の測量計算サイトに「地磁気値」の計算メニューがある。以前あった地磁気の予測値を求めるサイトは、2024年12月27日に公開を終了したと、国土地理院のページに書かれている。年と地点を指定した値が必要になったら、いま公開されている計算メニューや磁気図で確認することになる。

3. 真北と座標北のずれ:子午線収差

子午線は北極で集まるので、原点から離れるとずれる

偏角が地球の磁場のずれなのに対し、こちらは地図の投影の都合で生じるずれだ。

座標北が真北と重なるのは、座標系原点を通る子午線の上だけである。子午線は北極点に向かって集まっていく線なので、原点から東西に離れた地点では、その地点の真北(その地点の子午線の向き)と、原点の子午線に平行なX軸の向きとが、わずかにずれる。このずれの角度を子午線収差という。国土地理院の測量計算サイトでも、緯度・経度を平面直角座標に換算する計算の中で、座標と一緒に「子午線収差角」と「縮尺係数」を求める式が示されている。

大きさの感覚を、編集部の概算で書いておく。平面直角座標系は原点から東西約130km以内で使う設計(縮尺係数0.9999の話と合わせて座標系の解説に書いた)で、本州中部の緯度なら、その端でも子午線収差は1度に届かない程度だ。同じ東京周辺の偏角が7度台であることを考えると、日常の感覚では偏角よりずっと小さい。ただし、ゼロではない。座標から方向角を出して、それを真北からの角度(方位角)として使うなら、補正が要る場合がある。なお、子午線収差の符号(東西どちらを正とするか)は、国土地理院の計算式のページには書かれていなかったため、この記事では扱わない。

3つの北の関係を一枚で

ここまでをまとめると、こうなる。

  • 真北と座標北のずれ:子午線収差(投影の都合、原点では0、離れるほど大きい)
  • 真北と磁北のずれ:偏角(地球の磁場の都合、場所と年で動く)
  • 磁北と座標北のずれ:上の2つを合わせたもの

測量の世界では、真北を基準に計算するか、座標北を基準に計算するかで、数字が少し変わる。どちらの北を使った図面なのかが分かっていないと、数度のずれを説明できない。

4. 測量士補試験との関係:方向角と方位角

試験でこの話が出てくるのは、主に「方向角」と「方位角」の区別と、平面直角座標系の軸の向きだ。

方向角は、平面直角座標系のX軸(座標北)を基準に時計回りに測った角度。トラバース測量で、前の測線の方向角から次の測線の方向角を足し引きして出していくのは、座標北の世界の計算だ。方位角は、真北を基準に測った角度で、緯度・経度から2点間の距離と方位角を出すような場面で使う。両者の差が、前の節の子午線収差になる。国土地理院の測量計算サイトも、緯度・経度から出す「距離と方位角の計算」と、平面直角座標から出す「距離と方向角の計算」を、別のメニューにしている。道具の側でも別物として扱われているわけだ。

方向角の計算そのものは、トラバース測量の計算の記事で例題つきで書いた。軸の向きについては、令和8年の地図編集の過去問解説で、X軸を真東と取り違えた記述が誤りとされた問題を扱っているし、令和7年の多角測量・GNSS測量の過去問解説では、原点より南ならXがマイナスになる読み方を使う。ただし、真北と座標北のずれ自体(子午線収差)を数値で計算させる出題があるかどうかは、この記事を書いた時点で過去問を通して確かめられていない。年度別の問題は測量士補の過去問まとめから確認してほしい。

試験対策としては、「方向角は座標北基準、方位角は真北基準、どちらも時計回り」と、各用語がどの北に紐づくかを一対一で言える状態にしておくのが、いちばん確実だと思う。



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5. 図面の方位記号の読み方

登記の図面には「方位」を書く決まりがある

不動産登記規則は、地積測量図には「方位」を記録するよう定めている(第77条第1項第2号)。土地所在図(第76条)と建物図面(第82条第2項)にも、方位を記録する規定がある。地積測量図にはほかに、座標系の番号(第7号)と筆界点の座標値(第8号)も記録する。

ここで気づいてほしいのは、条文は「方位」としか書いておらず、真北か座標北かは指定していないという点だ。したがって、地積測量図の矢印が真北なのか座標北なのかは、条文からは分からない。図面ごとの注記を読むしかない。

図面ごとの見方の整理

図面 矢印の北の考え方 見るところ
地積測量図 規則は「方位」とだけ規定。どの北かは図面次第 矢印の注記、座標系の番号、測量の年月日
建築図面(配置図など) 作成者の取り方による。この記事では確かめていない 「真北」「磁北」の注記があるか、作成日
地形図・地図 国土地理院の地形図には偏角が記載されている 図の余白の偏角の記載

地積測量図の座標が入っていれば、そこから境界線の向きを出すこともできる。平面直角座標の値が2点分あれば、国土地理院の測量計算サイト「距離と方向角の計算」で、2点間の距離と方向角が出る。国土地理院のQ&Aも、建築申請に必要な方位を求める手段の一つとして、この計算を紹介している。このとき出てくるのは座標北からの角度(方向角)だという点は押さえておきたい。座標を読む前提は地積測量図の見方に書いてあるので、そちらも併せて使ってほしい。



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6. 仕入れ営業の目線:日影や方位を見るときの注意

数度のずれは、まず「北の種類」を疑う

地積測量図と建築図面の矢印が数度ずれて見えたとき、最初に疑うのは図面のミスではなく、どちらがどの北を使っているかだ。座標北と真北なら、本州中部で1度に届かない程度の差になる(前の節の編集部概算)。磁北が混ざっていれば、東京周辺で7度台のずれが加わる。「数度ずれている」と見えたら、その大きさがどの北の組み合わせで説明できるかを考えると、整理しやすい。

実務の手順としては、次のように見ていくのがよいと思う。

  1. 図面の矢印の近くに、「真北」「磁北」「座標北」などの注記がないかを探す
  2. 注記がなければ、作成年(磁北なら偏角が年とともに変わる)と、座標系の番号を確認する
  3. 地積測量図に座標が載っているなら、2点の座標から測量計算サイトで方向角を出して、境界線が座標北に対してどちらを向いているかを確かめる
  4. 数度の差が日当たりや建築プランの判断を左右しそうなら、図面を作った人に、どの北を使ったのかを聞く

日影・方位は「どの北で検討したか」を聞く

国土地理院は、偏角の情報が、登山での道迷い防止や航路の決定のほか、日影制限のための建物の北側を決める際にも使われていると説明している。日影の検討には、北の向きが前提として入っているわけだ。

ここから先、日影規制が適用されるかどうか、敷地のどの方位でどう検討するか、どの方法で求めた真北を図面に載せてよいか、は建築の領域になる。国土地理院のQ&Aは、建築申請に必要な方位を求める方法(太陽観測、極星観測、基準点測量、磁石など)は費用が方法によって大きく違うこと、そしてどの方法が認められるかは建築申請の窓口で確認することを案内している。つまり、建築申請で認められる北の求め方は、役所の窓口の判断だ。ここは、仕入れ営業が自分で決めるところではない。

営業として使えるのは、「どの北で検討されたプランなのか」を聞くという一手だ。プランの検討資料に真北が使われているのか、図面の矢印のまま(座標北や磁北かもしれない)なのかを、建築士や設計担当に確かめる。狭小地のように、南面の日当たりが建物の価値を大きく左右する土地ほど、数度のずれが効いてくる。

住宅地図や地図アプリの方位は「目安」と割り切る

仕入れの初期段階では、住宅地図や地図アプリで「南向き」「北道路」と当たりをつけることが多い。この段階の方位は、8方位程度のざっくりした目安として使うぶんには足りる。ただし、数度が問題になる場面(日影、斜線、隣地への影)の根拠にはしない。そこまで進んだ段階では、測量図や建築士の検討資料に切り替える。

7. まとめ:押さえておきたい4点

  1. 北には真北・磁北・座標北の3種類がある。座標北は平面直角座標のX軸の向きで、座標系原点では真北と重なる
  2. 真北と磁北のずれは偏角。場所と年で変わり、日本ではほぼ全域が西偏(例:2020.0年値で札幌が約10度、那覇が約6度)
  3. 真北と座標北のずれは子午線収差。原点から離れるほど大きくなるが、偏角に比べると小さい
  4. 試験では、方向角は座標北基準、方位角は真北基準と結びつけて覚える。図面の北がずれて見えたら、まず注記と作成年を見る

方向角や座標の読み方は、計算問題と同じ土台の上にある。独学の進め方に迷うなら、価格とカリキュラムを比較するのも一つの手だ。

よくある質問(FAQ)

Q1. 真北と磁北は、日本ではどのくらい違いますか?

場所と年で変わります。国土地理院の磁気図2020.0年値では、札幌で約10度、那覇で約6度、磁北が真北より西にずれています。東京は、国土地理院の2022年2月の発表で、この50年間に6度20分から7度40分になったとされています。これは過去の値で、今後も変わります。

Q2. 座標北と真北は同じですか?

座標系の原点の上では同じです。原点から東西に離れると、子午線の向きが原点の子午線とずれるので、座標北と真北にも小さな角度のずれ(子午線収差)が出ます。

Q3. 方向角と方位角は何が違いますか?

方向角は平面直角座標系のX軸(座標北)を基準にした角度、方位角は真北を基準にした角度です。国土地理院の測量計算サイトでも、平面直角座標から出すのが方向角、緯度・経度から出すのが方位角と、メニューが分かれています。

Q4. 地積測量図の矢印は真北ですか?

不動産登記規則は、地積測量図に「方位」を記録するとしていますが、真北か座標北かは条文では指定されていません。図面の注記や、座標系の番号を見て判断します。それでも分からないときは、図面を作成した土地家屋調査士に、どの北で作ったのかを聞くのが確実です。

Q5. 日影の検討に使う北は、どうやって決まりますか?

建築申請で認められる方位の求め方は、国土地理院のQ&Aでも、建築申請の窓口で確認するよう案内されています。個別の物件の日影の検討に使う北は、建築士と、申請先の窓口の判断になります。営業は、検討資料でどの北を使ったかを確認するところまでが守備範囲です。

出典・参考(確認日:2026年10月19日)

実際に開いて内容を確認したページだけを挙げます。

  • 国土地理院「地磁気を知る」 https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/menu01_index.html (偏角の定義、東偏・西偏、南鳥島以外は西偏、磁気図2020.0年値の札幌約10度・那覇約6度、日影制限のための建物の北側の決定への利用。ページ最終更新表示は2025年5月28日)
  • 国土地理院「磁気図」 https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/menu03_magnetic_chart.html (磁気図2020.0年値、公表間隔、偏角値は反時計回り(西回り)を正)
  • 国土地理院「方位磁石の指す北は動き続けています」(報道発表 2022年2月2日) https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/press_magnetic_charts2020.html (東京の偏角が50年間で6度20分から7度40分へ、地形図への偏角の記載)
  • 国土地理院「地磁気」トップ https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/geomag_index.html (地磁気値の予測値計算サイトの公開終了:2024年12月27日)
  • 国土地理院「測量計算サイト」 https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/main.html (距離と方位角の計算、距離と方向角の計算、平面直角座標への換算、地磁気値のメニュー)
  • 国土地理院「平面直角座標への換算 計算式」 https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/algorithm/bl2xy/bl2xy.htm (子午線収差角γと縮尺係数mの計算式。符号の向きの記載は確認できなかった)
  • 国土地理院「わかりやすい平面直角座標系」 https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/jpc/jpc.htm (X軸は原点で子午線に一致し真北を正、Y軸は真東を正、縮尺係数0.9999)
  • 国土地理院「1 測量の一般的事項に関するQ&A」 https://www.gsi.go.jp/kohokocho/FAQ1.html (Q1.5 距離・方向角、Q1.10 建築申請に必要な方位の求め方、Q1.14 磁北と真北との関係)
  • 不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)第76条・第77条・第82条:e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018 (条文はe-GovのデータAPIで取得して確認)

※本稿は編集部による一般的な知識の整理です。次の点は一次資料で確かめられなかったため、本文では断定していません。「方眼北」という呼び方、子午線収差の符号と具体的な大きさ(本文の「1度に届かない程度」は編集部の概算)、日影規制の法的な要件、各図面で使われる北の取り方の実態、子午線収差・偏角そのものを直接問う過去問の有無。
※偏角の値は場所と年で変わります。本文の数値は出典に記した年・地点のものです。
※個別の土地の方位の確定、建築申請で認められる北の求め方は、建築士・申請先の窓口・土地家屋調査士の判断になります。

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