令和8年 測量士 午前 過去問解説【第3弾】No.7〜10 多角測量・GNSS測量

測量士

結論から先に言うと
令和8年(2026年)5月17日実施の測量士試験・午前(択一式)のNo.7〜No.10を、国土地理院が公表した公式の問題・正解をもとに解説します。今回のテーマは多角測量(トータルステーションを用いた基準点測量)とGNSS測量で、公式や規定値を丸暗記するだけでは崩れやすい単元です。午前の計算・法規で不安が残る分野があるなら、独学を続けるか講座で体系立てて詰めるか、比較ページで3社の中身を見比べてから決めるのも一つの手だと思います。

この記事について

測量士試験は午前(択一式・28問)と午後(記述式・必須1題+選択2題)の2部構成で、令和8年試験は測量士補試験と同日の2026年5月17日に実施されました。本記事は国土地理院公開の「測量士試験問題」「測量士試験解答」PDF(出典は末尾に明記)をもとに、午前の択一問題のうちNo.7〜No.10を編集部が要約・解説したものです。シリーズ第1弾(No.1〜No.3)は令和8年 測量士試験 午前 過去問解説【第1弾】に、第2弾(No.4〜No.6)は令和8年 測量士 午前 過去問解説【第2弾】にまとめてあるので、法規・座標変換から順番に確認したい方はそちらもどうぞ。著作権に配慮し問題文の全文転載は避けているので、正確な文言は公式PDFでご確認ください。監修者・境さんは不動産仕入れ営業の実務者で、測量士補試験の受験者です(測量士試験は未受験)。今回は実務でどう関わってくるかという目線でコメントしています。


No.7 TS観測値から基準面上の距離を求める式

論点の要約:公共測量における1級基準点測量で、トータルステーションを使って点Aと点Bの間の斜距離D、高低角αA(点Aから点Bを見た角度、αA>0)・αB(点Bから点Aを見た角度、αB<0)を観測しました。器械高・目標高(点AではiA=fA、点BではiB=fB)、地球の平均曲率半径R、点A・点Bのジオイド高の平均値Nも与えられたとき、点A・点B間の基準面上の距離を表す最も適当な数式を選ぶ計算問題です。

解答へのアプローチ:選択肢は「角度部分がcos((αA+αB)/2)かcos((αA-αB)/2)か」「高さの補正部分の分子が(HA+iA)と(HB+iB)の和か差か」という2つの分岐の組み合わせで作られています。まず角度部分から見ていくと、表7の注記のとおりαAは仰角でプラス、αBは俯角としてマイナスの値で与えられているので、(αA-αB)を計算すると実質的には2つの角度の大きさを足し合わせたことになります。これを2で割った(αA-αB)/2は、点A・点Bの双方から観測した高低角の大きさを平均する「相互観測(正反観測)」の考え方そのもので、両端の値を平均することで球差・気差(地球の曲率と大気の屈折)の影響を打ち消せます。したがって角度部分は(αA+αB)/2ではなく(αA-αB)/2でなければならず、この時点で選択肢1・2は外れます。

次に高さの補正部分です。R/(R+…+N)という形は、測線の高さで得た水平距離を基準面(回転楕円体面)上の距離に縮める、いわば縮尺係数にあたります。ここでジオイド高Nを加えているのは、標高に対してジオイド高を足して楕円体高に換算するためです。分母の波括弧に入れるべきなのは、点Aの器械高を含めた高さ(HA+iA)と点Bの目標高を含めた高さ(HB+iB)、つまり測線両端の高さの「平均」なので、2つの値は足してから2で割る必要があります。差を取ると両端の高さの差の半分になってしまい測線の平均の高さを表さないため、選択肢4は不適当です。選択肢5も、角度の積の平方根や高さの積の平方根をとっていて、平均の考え方になっていないので外れます。以上から、角度部分が(αA-αB)/2、高さ部分の分子が和になっている選択肢3が正解です。

点Aの仰角αAと点Bの俯角αBを(αA−αB)/2で平均して水平距離にし、R/(R+平均の高さ+N)を掛けて基準面上の距離に縮める流れ

関連知識ポイント:測量士補試験でも器械高・目標高を使った比高計算は出題されますが、地球の曲率とジオイド高まで組み込んで「基準面上の距離」に変換する発想は測量士試験らしい踏み込みです。多角測量(トラバース測量)の基礎的な計算の考え方を先に押さえておきたい方は、トラバース測量の計算を例題で解説した記事で方向角や緯距・経距の求め方を確認しておくと、こうした応用問題にも入りやすくなります。


No.8 TS基準点測量の規定値(穴埋め)

論点の要約:公共測量におけるトータルステーションを用いた基準点測量について、偏心点を設置する場合の偏心距離の基準、水平角観測の対回内観測方向数、厳密水平網平均計算による新点水平位置の標準偏差の許容範囲、厳密高低網平均計算による新点標高の標準偏差の許容範囲、という4つの空欄(ア〜エ)に入る語句・数値の組合せを選ぶ問題です。

解答へのアプローチ:正解は選択肢5で、ア=6(測点間距離の6分の1以下)、イ=5方向、ウ=100mm、エ=200mmの組合せです。いずれも作業規程の準則(運用基準)で定められている値として押さえておきましょう。選択肢はどれも似た数値を組み替えているだけなので、1つずつ丸暗記するより関係性で覚えたほうが崩れにくいと思います。特に紛らわしいのはイで、「6方向」を含む選択肢が3つ用意されていますが、正解は5方向以下です。ウとエについては、新点標高の許容範囲(200mm)のほうが新点水平位置の許容範囲(100mm)より大きいという大小関係を押さえておくと、ウ・エが逆転している選択肢3や、同じ値になっている選択肢2・4を外しやすくなります。

関連知識ポイント:偏心点・対回・許容範囲といった規定値は、測量士補の学習範囲でも一部触れますが、測量士試験では複数の規定値を同時に問う形で出題されるのが特徴です。ここで問われている「新点の位置や標高がどこまでズレていいか」という感覚は、基準点測量の成果がどれくらい信用できるかを判断する土台になります。


No.9 GNSS基準点測量に関する誤りの組合せ

論点の要約:公共測量におけるGNSS測量機を用いた基準点測量について述べたa〜eの5つの記述から、「明らかに間違っているものだけを全て含む組合せ」を選ぶ問題です。準天頂衛星の扱い、スタティック法で必要な衛星数、対流圏の電波遅延、軌道情報(暦)、PCV補正がテーマになっています。

解答へのアプローチ:誤りはbとc(正解3)です。c「対流圏における電波の伝搬遅延に起因する誤差は、2周波の観測により軽減することができる」は典型的なひっかけで、2周波観測によって軽減できるのは電離層遅延であり、対流圏遅延は周波数に依存しない(非分散性の)誤差なので2周波観測では軽減できません。bは「観測距離が10km以上のスタティック法で、GPS衛星及び準天頂衛星に加えGLONASS衛星も用いる場合は5衛星以上使用する」という記述です。GLONASS衛星はGPSと時刻系などが異なり、基線解析で衛星システム間の差を表す未知パラメータが増えるため、併用する場合は同じ観測距離のGPS・準天頂衛星のみの場合より多くの衛星数が求められます。作業規程の準則では、観測距離10km以上でGLONASSを併用する場合は6衛星以上が標準とされており、「5衛星以上」は基準を満たさないため誤りです(正解表でもbは誤りの扱いです)。一方、aの「準天頂衛星はGPS衛星と同等の衛星として扱うことができる」、dの「軌道情報は放送暦を標準とする」、eの「PCV補正を適用することにより異機種間観測での精度が向上する」は、いずれも正しい記述です。

衛星から受信機までの電波経路図:電離層遅延は周波数で遅れ方が変わり2周波観測で軽減できるが、対流圏遅延は周波数によらず軽減できない

関連知識ポイント:電離層遅延と対流圏遅延の違いは、GNSS測量の理屈を問う定番の切り口です。「2周波観測=万能の誤差消去装置」ではなく、周波数に依存する誤差にしか効かないという条件を正確に覚えておく必要があります。


No.10 楕円体高とジオイドの傾斜から新点の標高を求める

論点の要約:GNSS測量機を用いた基準点測量で、既知点Aから新点Bまでの基準面上の距離6,000.00m、新点Bの楕円体高105.98mという観測結果を得ました。既知点Aの標高は135.66m、楕円体高は176.75mで、ジオイドは既知点Aから新点Bの方向へ基準面上の距離1,000.00mあたり-0.02mの一様な傾斜をしているものとして、新点Bの標高を求める計算問題です(基準面補正量は考慮しない)。

解答へのアプローチ:まず、標高(H)・楕円体高(h)・ジオイド高(N)の関係はh=H+Nなので、N=h-Hで求められます。既知点AはH=135.66m、h=176.75mなので、点Aのジオイド高N_A=176.75-135.66=41.09mです。ジオイドは点Aから点Bの方向に1,000.00mあたり-0.02mの傾斜をしているので、距離6,000.00m分では-0.02×6=-0.12mの変化になります。したがって点Bのジオイド高N_B=41.09-0.12=40.97mです。点Bの楕円体高h_B=105.98mから、標高H_B=h_B-N_B=105.98-40.97=65.01mとなり、選択肢4が正解です。ジオイドの傾斜の符号を逆に扱うとN_B=41.21mとなり64.77m(選択肢1)に着地してしまうので、「AからBへ向かって下がる」向きを取り違えないよう注意してください。

既知点A(標高135.66m・楕円体高176.75m)から6,000m先の新点B(楕円体高105.98m)へジオイドが傾斜し、Bのジオイド高40.97m・標高65.01mを求める断面図

関連知識ポイント:GNSS測量機で直接得られるのは楕円体高であり、私たちが普段使う「標高」に変換するには必ずジオイド高を差し引く必要があります。ジオイドが一様に傾斜しているという前提を式に落とし込めるかどうかが、この問題のポイントです。水準測量による標高の求め方の基礎を先に整理しておきたい場合は、水準測量の計算方法を例題で解説した記事もあわせて参考にしてください。



トラバース測量の計算を例題で解説|方向角・緯距経距・閉合比の求め方
トラバース測量の計算を例題で解説|方向角・緯距経距・閉合比の求め方

他の年度も通しで解くなら

このシリーズの前後の回:次の回は令和8年 測量士 午前【第4弾】No.11〜13 水準測量です。同じ年度を順番に解いていくと、出題の流れがつかみやすくなります。

測量士試験は記述式(午後)まで含めた模範解答が手元にあると、独学でも自己採点がしやすくなります。

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まとめ:次に何をすべきか

No.7〜No.10は、TSによる1級基準点測量の距離換算、規定値の穴埋め、GNSS測量の誤り探し、楕円体高からの標高算出と、多角測量とGNSS測量を横断する4問でした。単純な暗記では対応しきれず、相互観測で誤差を打ち消す考え方や、標高・楕円体高・ジオイド高の関係式を自分で組み立てる力が必要になるのが、この単元の特徴だと感じます。午前で間違えた分野があった方は、独学で個別につぶすより、体系立てて学び直せる講座を検討したほうが効率的な場合もあります。

講座ごとの価格とカリキュラムを比較する

監修者・境さんより
「No.8の許容範囲の話は、正直まだ数値を覚えるだけで精一杯なんですが、境界確定測量や現況測量の成果を見るときに『この基準点網はどれくらいの精度で作られているのか』を考える土台になる感覚があります。No.9のGNSSの話も、最近は現場でGNSS測量機を使う調査士さんや測量会社さんが増えている印象があるので、放送暦とか衛星数とか、聞いたことはあっても中身を知らなかった言葉が繋がってきたのは収穫でした。」



令和8年 測量士試験 午前 過去問解説【第1弾】No.1〜No.3
令和8年 測量士試験 午前 過去問解説【第1弾】No.1〜No.3

測量士試験の学習を進める中で「独学と講座、どちらが自分に合うか判断できない」「測量士補の知識が実務にどう繋がるのか知りたい」という方は、以下もあわせて参考にしてください。

なお、問題を単元別(計算問題/法規/測地・座標系/作業規程)に横断して復習できるインデックスページ、およびNo.11以降を扱う次回以降の解説記事、午後(記述式)の解説記事は、当メディアで順次公開準備を進めています。公開後、本記事および各記事の末尾から回遊できるようリンクを追加する予定です。


出典・参考情報(2026年9月26日確認)

  • 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html )
  • 国土地理院「令和8年測量士試験問題(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278970.pdf )
  • 国土地理院「令和8年測量士試験解答(午前)」PDF(https://www.gsi.go.jp/common/000278971.pdf )
  • 国土地理院「令和8年測量士・測量士補試験の実施状況等について」(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/goukaku_2026.html )

※本記事の問題要約・解説は編集部が公式PDFをもとに作成したものです。問題文の正確な表現は国土地理院の公式PDFでご確認ください。

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