結論から先に言うと
合筆登記は、登記簿上で別々になっている複数の筆(土地の単位)を、1つの筆にまとめる登記です。何でも合筆できるわけではなく、不動産登記法41条が「できない合筆」を6つ挙げています。地目や所有者が違う土地、抵当権などの登記が食い違う土地は、そのままでは合筆できません。仕入れで隣り合う土地を一体で扱いたいときは、先に登記簿で6つの条件にひっかからないかを見るのが近道です。
隣り合う2筆を一緒に買う。売主が持っていた細かい土地を、建築プランに合わせて1筆にしたい。仕入れの現場では、そんな話が出ることがある。筆を一つにまとめる手続きが合筆だが、分筆に比べると、仕入れ営業の間でも説明される機会が少ない。
この記事は、e-Gov法令検索で編集部が実際に開いた条文(不動産登記法・同施行令・同規則・登録免許税法)だけを根拠に書いている。費用や期間の相場は、一次資料で確かめられないので書かない。個別の土地の判断は、法務局や土地家屋調査士に確認してほしい。
1. 合筆登記とは?分筆登記との違い
土地は、登記の上では「筆(ひつ)」という単位で数える。一つの筆ごとに地番がつき、登記記録も一つずつ作られる。合筆は、この複数の筆を一つにまとめる登記だ。反対に、一つの筆を複数に分けるのが分筆登記になる。
どちらも不動産登記法39条に並んで出てくる。申請できる人の決まりは分筆と合筆で共通だが、中身はだいぶ違う。
| 合筆登記 | 分筆登記 | |
|---|---|---|
| やること | 複数の筆を1筆にまとめる | 1筆を複数の筆に分ける |
| 申請できる人 | 表題部所有者または所有権の登記名義人(法39条1項) | 同左(法39条1項) |
| 「できない場合」の定め | 法41条に6つ | (この記事では確かめていない) |
| 地積測量図 | 施行令の別表で、合筆の登記の添付情報には挙がっていない | 施行令の別表で、分筆後の土地の地積測量図が挙がっている |
分筆の詳しい流れ、費用の決まり方、境界の確認との関係は分筆登記とは?にまとめている。ここでは合筆に絞る。
2. 合筆できない場合 — 不動産登記法41条の6つ
合筆の最大のポイントは、ここだ。不動産登記法41条は、次の合筆の登記は「することができない」と定めている(条文を直接確認した)。
- 相互に接続していない土地
- 地目または地番区域が相互に異なる土地
- 表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる土地
- 表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地
- 所有権の登記がない土地と、所有権の登記がある土地
- 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(例外あり)
一つずつ、仕入れの目で読むとこうなる。
接続していない土地・地目や地番区域が違う土地(1号・2号)
離れた土地同士は合筆できない。間に道路や他人の土地があれば、1号にひっかかる。また、地目が違えば合筆できない。たとえば片方が宅地、片方が畑のままなら、先に地目を揃える必要がある。地目の変更は地目変更とは?で整理している。地番区域(字など)が違う場合も同じく不可だ。
所有者が違う、持分が違う(3号・4号)
名義人が違う土地は合筆できない。名義人が同じでも、共有の場合に持分の割合が筆ごとに違えば、これも不可になる。売主と買主が別の名義のうちは合筆できず、先に所有権移転を済ませて、名義を揃える順番になる。
所有権の登記の有無(5号)
所有権の登記がない土地(表題部だけの土地)と、所有権の登記がある土地の組み合わせも認められない。
所有権以外の権利の登記がある土地(6号)
抵当権、地役権、賃借権など、所有権以外の権利に関する登記がある土地は、原則として合筆できない。ただし、条文の括弧書きで「合筆後の土地の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるもの」は除かれている。その法務省令が、不動産登記規則105条だ(条文を確認した)。
- 承役地についてする地役権の登記
- 担保権の登記で、登記の目的、申請の受付の年月日および受付番号、登記原因およびその日付が同一のもの
- 信託の登記で、法97条1項各号の登記事項が同一のもの
- 鉱害賠償登録に関する登記で、登録番号が同一のもの
担保権は「抵当権が付いていたら全部だめ」ではない。2筆に同じ内容の担保権(同じ受付日・受付番号など)が付いているときは例外として認められる。共同担保として設定されている土地なら、これに当たる場合がある。逆に、片方の筆にだけ抵当権が残っていれば、合筆はできない。
3. 誰が申請できるのか
不動産登記法39条1項は、分筆または合筆の登記は「表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない」と定めている。つまり、申請できるのは登記簿上の所有者だ。買う予定の人や、契約前の仕入れ担当者が自分で申請することはできない。
少し意外なのは、同じ39条の3項。登記官は、申請がなくても、地図(14条1項の地図)を作るために必要と認めたときは、所有者に異議がなければ職権で分筆や合筆の登記をすることができる。また2項では、一筆の土地の一部が別の地目になった、または地番区域をまたぐようになったときは、登記官が職権で分筆の登記をしなければならない、とされている。
誰に代理を頼めるか、土地家屋調査士の業務の範囲は、土地家屋調査士法を今回は開いていないので書かない。仕事の違いは、下のカードの記事で整理している。
4. 申請に必要なもの — 条文で確かめられた範囲
申請書に何を書き、何を添えるかは、不動産登記令の別表に項目別に並んでいる。合筆の登記の項(別表の九)を開いて確かめたのは、次の点だ。
- 申請情報として、合筆後の土地の所在する市区町村・字、地目、地積
- 地役権の登記がある承役地で、地役権の設定範囲が合筆後の土地の一部になるときは、その範囲(申請情報)、地役権者が作成した情報などと地役権図面(添付情報)
もう一つ、施行令8条は、所有権の登記がある土地の合筆の登記を、登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない登記の一つにしている。そのうえで、合筆に係る土地のうちいずれか一筆の土地の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足りる、としている。
固定資産税の評価証明書、印鑑証明書といった書類の細かい扱いは、今回確かめた条文の範囲では分からない。申請書の様式や、実際に法務局がどこまで求めるかは、管轄の法務局に確認してほしい。
5. 測量は要るのか、要らないのか
ここは仕入れ営業が一番知りたいところだと思う。確かめられたことだけ書く。
合筆の登記について、施行令の別表の添付情報に、地積測量図は挙がっていない。分筆の登記の項には「分筆後の土地の地積測量図」が挙がっているのと対照的だ。つまり条文のうえでは、合筆のために新しく測量して図面を作ることが必須とは書かれていない。
ただし、これは「合筆が測量と無関係」という意味ではない。次の点は別の論点として残る。
- 登記簿の面積(地積)と実際の面積がずれていないか
- 筆と筆の境界が、現地でどこにあるか
- 合筆の後に、改めて分けて売るつもりがあるか
地積が現況と違う疑いがあるなら、地積の更正という別の手続きが絡む。現地の境界がはっきりしないなら、境界確定とは?で書いたような確認が先になる。合筆登記そのものの要否と、測量が要る場面は、分けて考えたい。
6. 登録免許税 — 条文に書かれていること
登録免許税法は、別表第一に掲げる登記に税を課すと定めている(2条)。その別表第一の一(不動産の登記)の(十三)に、「所有権の登記のある不動産の表示の変更の登記」が並んでいる。そのロが、「土地の合筆又は建物の合併による登記事項の変更の登記」だ。課税標準は「合筆又は合併後の不動産の個数」、税率は一個につき千円とされている。
読み方としては、合筆後は一筆になるので、通常は1個として計算することになる。ただ、減免の特例や、法務局が実際に求める手続きの細部は今回確かめていない。申請する時点の税額は、管轄の法務局か国税庁の案内で確認してほしい。調査士に頼む場合の報酬は別枠で、事務所ごとに違う。費用の全体像は土地家屋調査士・測量の費用は何で決まる?で種類別に整理した。
7. 仕入れ営業が合筆を検討する場面と注意
ここからは、土地を買う側の見方を、一般論として書く。特定の案件の話ではない。
合筆が検討されやすい場面
- 隣り合う複数筆を一体の敷地として建築したい。一つの建物の敷地が複数筆にまたがると、登記や融資の場面で説明が増えることがある
- 売却時に、細かく分かれた筆を整理して、見た目の分かりやすい一筆にして出したい
- 長年の相続や売買で分かれたまま残った筆を整理したい
見るべき順番
先に登記簿を見て、2節の6つのどれかにひっかからないかを確認する。仕入れでよくつまずくのは、次の3つだ。
- 名義が揃っていない。売主が一方の筆の名義人でない、共有の持分が違う
- 地目が違う。現況は一つの敷地でも、登記は宅地と雑種地などに分かれている
- 権利の登記が食い違う。片方の筆にだけ抵当権が残っている
3つ目は、決済の段取りにも響く。抵当権を抹消してから合筆するのか、同内容の担保として例外に当てはまるのか。順番を間違えると、引渡しの日に間に合わない。契約書では、誰が合筆の登記を負担するのか、いつまでに済ませるのかを、早めに決めておきたい。
合筆の前に、境界と地積を見る
筆を一つにしてしまえば、登記簿の上で境界線は一本消える。現地の境界標や、隣地との関係は変わらない。合筆後に再び分けて売る可能性があるなら、元の筆界が現地でどこだったのか、図面や境界標で確認できる状態にしておくほうが安全だ。こうした判断は、測量と登記の基礎知識があるほど見えやすくなる。全体像は「測量士補の知識は不動産の仕入れ営業にどう活きる?」の記事にまとめている。
8. よくある質問
Q. 合筆に申請の期限はありますか?
今回確認した範囲では、期限を定めた条文は見つからなかった。地目や地積の変更(法37条)などには、変更の日から1か月以内という期限が条文にある。一方、合筆について確かめたのは39条と41条で、そこは「誰が申請できるか」と「できない場合」の定めだった。期限の有無を断定せず、法務局で確認してほしい。
Q. 買主が合筆を申請できますか?
39条1項により、申請できるのは表題部所有者または所有権の登記名義人だ。売買が済んで名義が変わった後なら、新しい名義人が申請できる。契約前の段階では、買主は申請できない。
Q. 宅地と畑のように地目が違う土地は合筆できますか?
そのままでは合筆できない(法41条2号)。先に地目を揃える必要がある。畑を宅地にするには農地法の手続きが絡むことがあるので、地目変更の記事の整理を参考にしてほしい。
Q. 抵当権が付いている土地は合筆できませんか?
所有権以外の権利の登記がある土地は原則として合筆できないが、規則105条の例外がある。担保権の場合、登記の目的、受付日と受付番号、登記原因とその日付が同一であれば例外に当たる。
まとめ
- 合筆は、複数の筆を1筆にまとめる登記。分筆の反対だが、申請できる人は共通(法39条1項)
- できない合筆は、法41条の6つ。接続なし、地目・地番区域の違い、名義人の違い、持分の違い、所有権登記の有無の違い、所有権以外の権利の登記
- 6号には、規則105条の例外がある。同一内容の担保権などは認められる
- 施行令の別表では、合筆の添付情報に地積測量図は挙がっていない。ただし地積や境界の確認は別の論点
- 登録免許税は、登録免許税法の別表第一により、合筆後の不動産の個数1個につき千円と定められている
- 仕入れでは、名義・地目・権利の登記の3点を登記簿で先に見る
出典・参考情報
いずれもe-Gov法令検索の法令データを2026年10月31日に取得して、条文を直接確認した。
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)39条・41条・36条・37条・42条(https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123)
- 不動産登記令(平成16年政令第379号)8条・別表(https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379)
- 不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)105条・106条・107条(https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018)
- 登録免許税法(昭和42年法律第35号)2条・9条・別表第一(https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035)
- 法務局のページ(houmukyoku.moj.go.jp)は、編集部の環境では開けなかったため根拠にしていない。申請書の様式、窓口の運用、期間は確かめていない。
- 費用・期間の相場は、一次資料で確かめられないため書いていない。
※本記事は一般的な解説記事です。個別の土地の登記・法律上の判断は、法務局や土地家屋調査士など専門家にご確認ください。




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